沢村鐵のレビュー一覧
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沢村鐵『処刑国会』双葉文庫。
沢村鐵の小説の中では一番面白かった。
今の日本の政界は本当に狂っている。それにも関わらず、日本人は何も行動を起こさないという不可思議。与党は旧統一教会というカルト教団と癒着し、集票と裏金作りに勤しみ、宗教団体を背景とする政党と連立政権を組むという異常な状況だ。さらには原発利権や東京五輪、コロナ禍などを巡る搾取の構造。非正規雇用を増やし、異常な物価高を引き起こし、今さら少子化を叫ぶ、馬鹿げた政府の対応。このままだと日本人は間違いなく政治家に殺されるだろう。
そんな政治への不信感と怒りが沸々と伝わってくるような過激なエンタメ小説であった。
通常国会の開催初日 -
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ふだん警察小説など読まない私がこのシリーズを手に取ったのは友人が面白いと薦めてくれたからだが、見事にはまった。
文章にリズムがあり、キャラクターの書き分けが的確にできていることから、相当に力のある書き手だという印象を受ける。岩沢、上郷、区界の描出が特に際立っている。
これほど登場人物が多く複数のストーリーが同時並行するのに、混乱することはなかった。ちょうど完結のタイミングで、ラストまで一気読みできたのも良かったのだろうが。
ありがちな娯楽小説になっていないことが何より好感が持てる。ただの売れ線狙いではこんな構成や終わり方を選ばないだろう。警察の闇にとどまらず、もっと大きな闇を捕らえようとしてお -
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シリーズ最終巻。やはり、この最終巻に主人公・一柳美結の活躍の場が用意されていた。Cが警察と手を組み、全世界の敵・田中晃次と対決する。そして、最大の謎が…
シリーズ全巻を通して読むと、如何に綿密に構成された壮大な物語なのかが分かる。登場人物の抱える過去、秘密が少しづつ明らかになるにつれ、物語の中の世界が広がるという面白い構成である。登場人物の誰が悪で、誰が正義なのかも混沌としており、読み進むと読者の予想は大きく裏切られる。これだけのボリュームの書き下ろしシリーズとなると、巻を重ねる度につまらなくなる作品が多いのだが、この作品は面白さが増すという稀有な例だろう。 -
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テロリスト集団が国会を占拠し、与党の疑惑議員を証言台に立たせ国民裁判を始めるという前代未聞の事件が勃発。
謎のリーダー「コッカイくん」が暴く疑惑は、現実の事件をなぞるものばかりー国有地払い下げ、改竄されられた公務員の自殺、”学術会議”に推薦されたメンバーの非承認、カルト教団との癒着問題、信者二世による癒着の要にいた元首相狙撃と国葬問題、さらには裏金問題等々、文庫書き下ろしならではの同時代性が。
最新のポリグラフを駆使し、疑惑が暴かれる議員にネット投票で判決が下され、別室で処刑が執行される。
科される刑は、焚刑、舌を抜く、議員辞職、無罪放免、戦々恐々とする議員たち。
この非常事態に、公安と自衛隊 -
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麻見和史、沢村鐵、藤崎翔、吉川英梨『刑事の灯』双葉文庫。
シリーズ第3弾。新進気鋭4人の作家による4編の短編を収録した警察小説アンソロジー。些か奇をてらった感の強い短編ばかりが並び、ストレートな警察小説が読みたかったというのが、正直な感想。
麻見和史『星の傷痕』、沢村鐵『道案内 警視庁捜査一課・小野瀬遙の黄昏事件簿』、藤崎翔『読心刑事・神尾瑠美』、吉川英梨『ファーストレディの黒子』を収録。
麻見和史『星の傷痕』。転落死した男の身体に残された星形の傷を手掛かりに、ネガティブ思考の黒星とポジティブ思考の白石の2人の刑事が事件を捜査する。
沢村鐵『道案内 警視庁捜査一課・小野瀬遙の黄昏事件簿 -
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ミステリだけど、青春物語…という、裏表紙のあらすじ文やや巻末解説者の言葉に納得。
終始雨に包まれたような、薄暗い世界観の中で紡がれる物語。あいだあいだに挟まれる、仲間たちとの交流に心を洗われつつ、きっと重く哀しく切ないものになるのだろうとしか思えないラストシーンへ向かっていく…。そんな読書時間を過ごした。
ミステリらしくちょっと驚くような謎の開示となる展開も見せつつ、やはり上記にも記したように、少年たちの成長の物語でも、確かにある。
★4つ、8ポイント。
2018.12.13.新。
※自分の読解力の無さが悔やまれるのみなのだが…終盤での路子の台詞、埠頭での対決シーンの終わり、藤原が驚愕