ジョージ・オーウェルのレビュー一覧
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『屋根裏部屋の一つには、仮装舞踏会で履くようなアメリカ向けのけばけばしい靴を作っている、ブルガリア人の学生がいた。この学生は六時から十二時までベッドの上にすわりこんで十二足の靴をつくり、三十五フラン稼いだ。そして、あとの時間はソルボンヌの講義に出るのだった』
ジョージ・オーウェルといえば「1984」で、全体主義を揶揄するディストピア小説ということになるのだろうけれど、近未来として描かれたその年は既に過去の時となり、危惧されていた第三次世界大戦も起こらず、現実の世の中はオーウェルが極端に描いて見せた世界とは異なっている。しかしそこに描かれた人々の暮らしは、実のところ絵空事ではなく、少しだけ見方 -
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『1984年』、『動物農場』と、政治思想を前面に押し出した作品を書いた著者が、どのような旅の記録をまとめるのかと身構えつつ読んでみたけれど、これは面白い……。
いえ、面白いと言ってはいけないのかも。
パリとロンドンでの浮浪者生活を描いたものなのだから。
パリでは道端で人が死んでも驚かないほど無気力な窮乏生活を送り、皿洗いの仕事を得る。
食堂の裏側のおぞましいほどに不潔で、ちょっとおかしな話を読み、外食はしたくないと思わせられた。
英国では仕事が得られず各種の収容所を巡る。
その実体験を通じて、浮浪者は特別な存在でないと論じる箇所は説得力があった。
他のルポルタージュも読んでみたい。 -
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オーウェルといえば1984や動物農場などの作品のイメージが強いけれど、このエッセイを読んで彼に対する印象が大きく変わった。特に1章の食事や日常生活に関する内容がとても面白い。電車の中で笑いをこらえてしまうようなところさえあった。筆者が言うには、おいしい紅茶を入れるには11点もの譲れない条件があるらしいし、理想のパブの条件をすべて満たすパブは実在しないらしい。
私がこの本をこれだけ面白く読めたのは、日本語訳がまた実に良いものだったからというのもあると思う。たいていの翻訳ものは、読んでいて何を言っているかわからなかったり、ジョークが通じなくなっていたり、「本当に原文でこんなこと言ってるのか?」と -
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ネタバレ邪魔な人間を追い出し、動物たちだけの理想の暮らし!……かと思いきや。どんどん雲行きが怪しくなり、物語が進むにつれ気分は沈んでいった。ぶたが「ふたつあし」になり、人間とトランプに興じる最後のシーンは心底ゾッとした。イカサマが露見している以上、ぶたと人間の関係悪化もそう遠くない未来の話だろう。その時にはもう一度反乱が起こるのだろうか? 今度は誰を指導者にして?
動物の間にどうしても知性の差がある以上、誰かが指揮を執る必要があったとは思うが、公共的なリーダーというものが本当に存在し得るのかは疑問だ。結局はその善性に賭けるしか無い。だからきっと、ひつじのように利用されないように、大事なのは自分で考え -
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人間を追い出して動物たちで自治を始めた「動物農場」だが、自治が進んだ先には…というおとぎばなしを通して、ソビエトの共産主義体制をやゆした話。
話はおとぎばなしなので、小学校高学年〜中学生くらいから理解できる内容です。(たぶん)
ただ、過去の歴史や現実の社会情勢を知ったうえでこの話を読めば、書かれた内容の辛辣さを含めて本当の意味で本書を楽しむことができると思います。
話の中に、邪魔者を追い落とす方法、情報統制の仕方、被支配階級に思考させないためのテクニックなどがうまく混ぜ込まれていて、
隣国に北朝鮮中国を持つ我々が読むと「あーなるほど、そういう話聞く -
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『Hommage to Catalonia』の訳本は複数社から出版されているが、一部が省かれた版も多数存在するので、原語の内容を溢さず読みたい人には、本書をお勧めする。
未だかつて、こんなにじっくりたっぷり読み込んだ本は無い…。大学のゼミで取り上げる題材だったから、という理由なのだけれど、そもそもは原語で読んでいて、途中あまりに複雑で心折れそうになり、論文書くうえでは母語で読まないことには先に進めず、何度も読み返しては線を引いて付箋貼っての繰り返し。
オーウェルの生い立ちや思想とか理想というものは彼の著作を読むほどによく理解出来ると思うが、この作品は、ある意味、彼の人生のクライマックスのよ -
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あまり期待せずに読み始めたら面白くて止まらなくなった。オーウェルの観察眼と表現力が光る。翻訳も素晴らしい。
パリ編もロンドン編もおもしろいが、特筆すべきだと感じたのはP232〜234で、オーウェルが自ら経験した窮乏生活から学んだ「物乞いの社会的地位」について述べている部分が感慨深い。
それに続く、ロンドンのスラングと罵詈雑言について、また「零落した人間」についてなど、終盤にさしかかったところからの記述が深い。
そして、ここで出てくる『暇つぶしの才覚』という表現がタイムリーだった。この本を読んだのがちょうどコロナ騒ぎの真っ只中で、自粛生活がつらい、暇でしょうがない、などという世間の話題をよ -
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オーウェルの突撃ルポ、デビュー作。1927年から3年間、パリ貧民街とロンドンのホームレス界にどっぷり浸かって取材。やはり性来の裕福さがポジティブな行動と考え方を生んでいる感はあり、よくある王子さまが身分を隠して庶民の中で生活をして学んだり、社長の息子が平社員として素性を隠して研修するという、ベタな物語を実際に行ったルポルタージュ。面白がってはあかんのかもしれませんが、単純に面白いです。だいたいにしてオーウェルがええとこの子なだけに、目が曇ってなくて、好奇心と探究心があるというか、面白がっているところが文章にも現れていて、読んでいるほうもワクワクします。
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ディストピア作品の傑作 ありえたかもしれない監視社会。
近年、アメリカのトランプ大統領による政治を踏まえ再注目されている本作。しかし書かれたのは50年以上前の1949年である。本作の魅力と人の停滞を痛感する。
我々の基準で言えば有り得ない世界であるが、歴史上はこのイデオロギーに近い人達もいたわけで。どこかで間違えたらあったかも、そしてあるかもしれない。世の中の在り方について考え直すための傑作。
歴史上、このような社会の創設は失敗しているが、現在の進歩した科学技術を用いれば、より容易に成立してしまうのではないかと恐ろしくなる。そうならないためにも、皆が政治社会の在り方を他人任せにせず、関心を持 -
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あまりに飄々としていてユーモラスなんで、
フィクションかと思えてくるんですけどルポタージュなんですよね。
いや、それくらい楽しい本ではあるんです。
フランスでの変人に囲まれた貧乏暮らしにしても、
ロンドンでの浮浪者暮らしにしても、
20世紀のヨーロッパの裏側が見える感じがいいですね。
それにしたって陰鬱な雰囲気ではなく、
どこか異世界の物語を読んでいるように感じられます。
軽妙なタッチで書かれているので読んでるときは気づきませんでしたが、
これが実体験だというのは、なかなか凄いことだと思いますよ。
こういう人になりたいもんだと思います。