宮下奈都のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「たった、それだけ」ってことはない 「羊と鋼の森」が好きで手に取った宮下さんの本です。本を読んでいる自分を客観的に見る機会を与えてもらいました。作品によって楽しんでいたり、懐かしんでいたり、考え込んだり、場面によっても変わりますが、私は基本的には自分の過去と照らし合わせて懐かしんでいるように思いました。私は二度と同じ人生は繰り返したくありませんが、自分のことは好きです。たった、それだけ。
贈賄の罪に苛まれる様子や、逃避行の様子が描かれているのかと思いましたが、容疑者の周辺の人生にスポットを当てていたのが印象的でした。
「たった、それだけ」、「たった、それだけのこと」、「たった、それだけなの?」どう捉えるのが正解なのでしょうか。悪いことは思いだしたくない、良いことは汚したくない、いづれにせよ時間というものに覆い尽くされていくのではないかとおもいます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ宮下奈都さんが好き、本屋大賞受賞、タイトルがかわいい落ち着いているなど、読む前からかなり期待が高かった。しかし、なかなか物語の中に、入り込めなかった。幼い頃にピアノを習っていたし、学生の頃にギターにも興味が湧いて手に取った過去があった。でも今はパッタリ。イヤフォンで音楽すら聴いていない。もしかすると、現在の自分の音楽との距離感と、音楽という題材に対し、「理解できるかな」というどこか疑念のようなものを抱きながら読み始めてしまったのかもしれない。
しかし、そこはやはり宮下奈都さんだ。「いいな」と思ったところ、勇気をもらったところをここに記す。
・板鳥「焦ってはいけません。こつこつ、こつこつです。ーこの仕事に、正しいかどうかという基準はありません。正しいという言葉には気をつけたほうがいい。ーこつこつと、守っては、ヒット・エンド・ランです。ーホームランを狙ってはだめなんです。」
・柳「だいじょうぶだって。堂々としていればいいんだ。っていうか、堂々としていたほうがいいんだ。不安そうな調律師なんて誰も信じないからさ。」
・長く部屋に忘れられたピアノがあり、ひどい環境下に打ち捨てられたピアノがあり、それでもこの仕事に希望があるのは、これからのための仕事だからだ。僕たち調律師が依頼されるときはいつも、ピアノはこれから弾かれようとしている。どんなにひどい状況でも、これからまた弾かれようとしているのだ。僕にできることは何だ。ーこのピアノをできる限りいい状態に戻すことだけだ。
・彼にピアノを教えたのがどんな人なのか、わかる気がした。そして彼が、どんなふうにそれを享受してきたのか。音楽は人生を楽しむためのものだ。はっきりと思った。決して誰かと競うようなものじゃない。競ったとしても、勝負はあらかじめ決まっている。楽しんだものの勝ちだ。
ホールでたくさんの人と聴く音楽と、できるだけ近くで演奏者の息づかいを感じながら聴く音楽は、比べるようなものではない。どちらがいいか、どちらがすぐれているか、という問題ではないのだ。どちらにも音楽のよろこびが宿っていて、手ざわりみたいなものが違う。朝日が昇ってくるときの世界の輝きと、夕日が沈むときの輝きに、優劣はつけられない。朝日も夕日も同じ太陽であるのに美しさの形が違う、ということではないだろうか。
比べることはできない。比べる意味もない。多くの人にとっては価値のないものでも、誰かひとりにとってはかけがえのないものになる。