あらすじ
「もしも、子供がいなかったら、夫がいなかったら。私はもっと快活に笑えていただろうか。もっと自由だったのだろうか。」(本文より)東京から夫の故郷に移り住むことになった梨々子。田舎行きに戸惑い、夫とすれ違い、恋に胸を騒がせ、変わってゆく子供たちの成長に驚き――30歳から40歳、「何者でもない」等身大の女性の10年間を、2年刻みの定点観測のように丁寧に描き出す。注目の著者がすべての女性に贈る、愛おしい「普通の私」の物語。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
夫がうつ病になり、都会から田舎へと転居を余儀なくされた一家の話。都会に実体のない憧れを持っていた妻は田舎暮らしを重ねるにつれ、人生というものへの捉え方が変わっていく。
家族が居ても、友人が居ても、「私はひとりだ」と自覚してからの妻の言動には、果てしない強さを感じた。
悩み、傷つき、抱えた者にしか辿りつかない境地があるのだろうと読んでいて思った。
短期的には悲観すべき事象でも、10年スパンでみたりすると、案外悪くもなかった決断だったのかもしれないと思えたりすることがあるのかもしれない。
Posted by ブクログ
2024年25冊目
宮下奈都さん/田舎の紳士服店のモデルの妻
容姿端麗な夫と2人の子どもと暮らす、主人公の梨々子。しかし夫がうつ病になり、故郷の田舎へ引っ越すことに。
慣れない土地での暮らしや子どもたちの問題と向き合いながら、進化していく梨々子がカッコいい
自分自身を見つめる
この本も面白かったです。
梨々子の色んな葛藤や、夫やこどもまわりとの
人間関係の過程、頷ける部分も沢山ありました。
宮下先生の作品は、いつもブレブレの私の姿勢を直してくれています。
温かさやぬくもりがいつも込められていて、毎作品胸が熱くなります
Posted by ブクログ
「生きるのに意味などない。さびしいわけでもむなしいわけでもなく、ぱーんとそれが、わかる。竜胆梨々子が生きるのは、ほんの何人かの、梨々子がいなくなったら悲しむ人のためだけだ。」
「持ち時間が尽きるまで手ぶらでせっせと暇をつぶして過ごすのだ。」
梨々子が最後にたどり着く境地に、普通の主婦として共感。それだけでいい、と思うと、人生が気楽になる気がする。
普通に過ごす毎日に、ふいに「他に何もいらないと思える充実感」に包まれる、そんな幸せに辿り着けるなら、確かに人生他に何がいるだろう。
でも子育ての難しさは考えさせられた。子供が運動会の徒競走で1人だけ走らなかったり、学校で1番好きな時間は下校だと言ったり、給食を全く食べなかったりしたら、なんて言ったらいいか全然わからない。
夫と気持ちが通じ合わないのもつらいことだし、でも完璧に以心伝心の夫婦なんて存在しないし、と考えていくと、普通の楽な主婦なんてこの世にいない、当たり前のように難しいことを乗り越えて、みんな偉いとも思った。
Posted by ブクログ
“宮下さん”ってだけで、購入。宮下さんの言葉のチョイスが好きだ。温かみと鋭い視点で、言葉にならなかったことが言葉として触れることができる。
最近なかなか読書できなかったが、読み始めたら隙間時間を使って読めた。読みたい欲で時間が作れたんだと思う。
これから、“母”になる人に読んでもらいたいな~。
“女”はどうしても出産を経て、“母”という役割を与えられる。仕事というと部長とか課長とか急になる感じだなぁ~と思う。急に責任のある役職にあてられたのに引継ぎがない。あっても役に立たない。なのに、上司はいないし、自分で試行錯誤を繰り返すしかない。最大のパートナーだと思っていた夫は、“父”になるまで時間がかかる。“母”という変化は、まったなしで、日々役割をこなしていかなければいけない、そんな人もいるだろう。というか、自分もそうだった。だから、この梨々子の気持ちがよくわかる!何者なのか、自分を見失いそうになる。日本人特有なんだろうな~。
P192
私は大丈夫、どこへ行ってもやっていける。案外こういう小さな言葉が支えになってくれることもあると思う。
実際、亡くなった梨々子の父が言ったかもしれないが、捏造かもしれない言葉だけど、こういうことってあるよね、と激しく同感!
宮下奈都さんのちょこちょこでてくる言葉、文章に、よくこんな風に表現できるな~と感心しながら読んだ。やっぱり宮下さん好きだわ~。
Posted by ブクログ
読んでよかった。いつか梨々子のこの10年をもう一度振り返って自分の人生を肯定したくなる時が来るんだと思う。でも苦しかった、残り50ページくらいまで。
梨々子の気持ちの描写が丁寧な分、やむをえず巻き込まれて誘われた土地で感じる戸惑いや嫌悪感も、都内のママ友への嫉妬や焦燥感も、全部全部形がはっきりとわかるほどに伝わってきて読んでいてかなり苦しい部分もあった。でも、それを苦しいと感じている自分がいることに気づくことができてよかった。まだまだ自分は幼くて他人に知られたくない部分がたくさんあって、わかってはいても目を背けていた事実がこの本を読んで顕になった。しんどいけど改めて自分を見つめ直せる機会をもらった感じ。
折り合いをつけて田舎を穏やかに受け入れていく主人公の姿を途中までは諦めだと思ってしまった。でも、実際そんな浅はかなことじゃなくて、どこで暮らすか何してるかなんて本当に瑣末なことなんだと最後の50ページ強でしっかり梨々子が体現してくれてるように感じた。将来まだまだ不安定で時折そこはかとなく怖くなるけど、この本に教えてもらったことを大切にしていきたい。
Posted by ブクログ
登場人物の感情を表現する言葉の使い方が秀逸。主人公の梨々子が、深い沼に引き込まれる様なドロっとした悩みに陥った時、読者の自分も似た様な感覚になってしまっていた。普通とは?平凡とは?幸せとは?…コレ!という答えは無く、それぞれの人生で、それぞれ角度が違えど幸せなんだと思わせてくれるハッピーエンドとなる締めくくりだった。
Posted by ブクログ
自分も育休中で、子どもを育て始めたばかりです。今は子どもと向き合い、過ごすだけの毎日。仕事もせず、どこにも行かず、自分は一体何なのだろうと思っていました。
けれども、この本の中に答えのひとつが書いてあり、気持ちが少し軽くなり、自分のことも認めてもらえたようで気持ちも温かくなりました。
P.225 この町がどこにでもあるように、私もどこにでもいる。私にも替えが利く。もしも替えが利かないとしたら、あの子たちの母として、達郎の妻としての竜胆梨々子だけだ。
Posted by ブクログ
いい過程の書き方だなー。
読む前は、たまたま良い出会いをした、自分のものごとの捉え方が変わった、みたいな、いやいや、それはまあ結局フィクションだからと言われればそうだけど、といったなんとなく良い話でまとめる作品だったりするのかな、と思っていたのですが、嬉しいことにそうではない作品だと感じました。
考えすぎないようにする強さも、そうでない強さもどちらも持ち合わせたいものです。
Posted by ブクログ
自分が精神疾患持ち(パニ障)なので親近感を覚えて手に取った。何も励ましてはもらえないけど、それでもいいと思えた気がする。思い描くのは理想の私、こうじゃなかった私。でも私は今ここにいる。思い描いていた姿とは違うし、幸せかと言われたら言い淀むかもしれない。でも絶対に、不幸せではない。それだけは絶対にない。そんなことを思い出させてくれる本だった。
Posted by ブクログ
竜胆梨々子は夫のうつ病を機に夫の実家のある田舎に引っ越します。
30歳から10年間の梨々子が描かれています。
慣れない田舎暮らしで戸惑ったり夫にがっかりしたり子どもたちのことで悩んだりしますが梨々子は諦めたり受け入れたりしながら変化していきます。
派手な展開はないけれど梨々子の感情が丁寧に描かれていて良かったです。
Posted by ブクログ
タイトル買い。なんとなくタイトルから想像していた内容と一致していた。
東京生まれの彼女の視点の移り変わりが鮮やかで、梨々子さんは自分の芯を保つためにとても考えながら日々過ごしている情景がわかりやすく理解しやすかった。
段々強くなる、ならざるを得ない女性。小さなことであれ自分を、自分の生き方を、選択したものを肯定していくこと。それを「幸せ」「大丈夫」と言い聞かせることができるのが母という存在なのかな。と感じた。
Posted by ブクログ
中途半端な田舎町暮らし中の私がいうのもなんだけど このまんまの日常に 包まれている。梨々子さんの揺らぐ気持ち 手に取るようにわかる。思い通りにならないことばかりだけど お茶をのむテーブルはある。ささいなことを肯定して納得して やりすごして 月日は重なっていくものだ。結局 自分は何者でもないんだけど どっこい生きている!それで十分だ。町の人が優しくて 羨ましい。読後、窓の外が 優しく見えた。
Posted by ブクログ
読む前はタイトルを見て、どんな作品かいまいち想像できなかったけど、読み終わってからはすごくしっくりくるタイトル。「イナツマ」ね。解説は辻村深月さんでびっくり。好きな作家さんの共演……!
主人公の梨々子は、子供2人と素敵な夫と暮らす、東京のキラキラ奥さんだったが、夫のうつ病をきっかけに田舎へ移住する。
「田舎」「何もない」など、物語の半分以上は雨が降りそうなどんよりした曇り空。
でも、最後には雲の隙間から光がさす。梨々子が「田舎の紳士服店のモデルの妻」と胸を張って名乗れるくらいにはどっしりして、どっこい生きている。
梨々子はなかなかおもしろい「普通」の女だ。
Posted by ブクログ
東京から北陸の何もないところへ移住した家族、妻目線の10年間の話
こどもたちへの期待や普通、
夫との関係、
私自身の悩みも重なって共感できた
長男がピアノが好きになってそのまま頑張ってくれたら嬉しい!!
運動会やボランティアを通じての人々の交流も温かい
Posted by ブクログ
主人公の性格が好印象で、リズム良くどんどん読み進められた。最後いい終わり方でホッとした。途中冷めたような気づきある視点がいい。作者さんの他の本も読んでみたいと思うきっかけになった。
Posted by ブクログ
小説にするには、少し地味な設定(タイトルからしてそうだが)だけど、主人公(タイトルに出てくる「妻」)の心理描写を丁寧に行う事ですごく読み応えがある内容になっている。日常、ふっと浮かんでくるちょっとした毒のような事も、隠さずに掬い取る。そこから見えてくるのは、1人の人間がどういう思いで生きていくのか、というストーリー。これで良かったのか。ここで良かったのか。そう自問自答しながら、それでも生きていく人間の、生き様。自分も、もう少し心の声に耳を傾けてみようと思った。
Posted by ブクログ
10年は振り返ると短い
過ごしているときは長い
私はいつも振り返ってばかりで時々前を向く
私も一人だ
読んでも元気にはなれないけど何となく落ち着く本
Posted by ブクログ
本作、ジャケット等見ずにタイトルだけで買いました。
なお私、タイトルを誤解しておりました。
モデルをやっている妻、ということではなく、男性服のモデルをやっている旦那さんの奥さん、の話、ということでした。
・・・
夫のうつ病がきっかけで、東京から福井の夫の実家へ移り住んだ梨々子。都会での華やかな生活から一転、慣れない田舎での暮らし、つかめない夫の心、子育ての不安など、さまざまな葛藤を抱えながら、妻として母として、そして「何者でもない自分」としての日々を生きる10年間を描く物語。
・・・
読んでいて色んな意味で辛く感じました。
一つは、なんで梨々子はこんなにいちいち皆と同じ価値観に縛られるのかという驚き。もう一つは、さりとて自分もその価値観から完全に脱しているわけではないなあという発見。
世の中の一般的な価値観にがんじがらめになり(会社、出世、駐在、この中学受験、キラキラ生活)、夫の鬱とともに家族で田舎に引っ込んでからの、自己の気持ちの整理を描く本作、完全に同じではないのですが、分かるところもちょくちょくあり、最終的には梨々子は頑張ったなあと思いました。
・・・
あと、この夫さんの造形、そして彼に対する梨々子の反応は結構ぐっときました。
私も散々家内を振り回してしまいました。だけどうちの家内も梨々子のように、私のことを(一生)理解できない生き物と思い、自ら孤独の中に生きていると感じているのか?
うちはもう少し仲は良いとは思いますし、家内とは100%分かり合えないと悟っていますが、それでも絶対的な信頼感みたいなのがあり、私は孤独は感じていないです(10-15年くらい前はもっと自信がありません。。。)
ただ、私がどう感じていても、うちの家内が孤独を感じていたとするとこれは悲劇です。
すれ違いが妻を追い込まないように、腹を割った話し合いが必要だなあと感じました。特に旦那の効く耳が必要。私はかつては夫さんのような男であったと感じ、読中に自らの過去を反省しました。
・・・
ということで宮下氏の作品、久しぶりに読みました。
辻村深月さんの解説が梨々子の心象について説明しており秀逸。ぐっときます。
なお梨々子にはこの前読んだ『生きるように働く』をすすめたくなりました。世の中のメインから外れてもいいじゃん。
Posted by ブクログ
NHKの朝ドラ「あんぱん」で主人公演じる今田美桜の「精一杯頑張ったつもりやったけれど、何者にもなれんかった」のセリフが頭に残った。それを考えさせられるような作品である。30歳の女性が夫と二人の子供と家族と田舎に引っ越してからの10年の変化を追った小説だが、著者らしく内面の葛藤や変化を見事に浮彫にしている。
Posted by ブクログ
タイトルの読点を打ち間違えていたことに、
読み始めて少しして気がついた。
紳士服店のモデルが女性であるはずはないわね。
読点は紳士服店の、の下ではなく、
モデルの、の下でした。
勘違いに一人赤面。
学校でいちばん好きな時間 げこう
うちの子、めっちゃ言いそう。
学校は好きじゃないけど毎日行ってるんだから頑張ってるじゃん。そりゃ学校が好きな方が楽だろうけど、好きじゃない人に好きになれ、とかストーカーとさして変わらない。
10年後の自分なんか想像出来ない。
何なら一日終わった時の自分がどうなってるかも分からない。気分良く起きたって子供の不機嫌に当てられたり、仕事でヘマをやったり、最悪な気分で逃げる様に寝てしまう羽目になったりする。最悪な気分で一日が始まっても、どうにかなってたりすることもあるし。
一週間を総括してみよう、とか、毎月今月のベスト3をブックリストにしてみよう、とから思った事もあったけど、決意なんてサラサラと溶けていく。
気がついたらここにいる。
それで悪くないんじゃないかと思ってる。
俵万智さんの短歌をちょっと思い出した。
「揺れながら前へ進まず子育ては おまえがくれた木馬の時間」
Posted by ブクログ
私は、わりと長いタイトルの本が気になる。それが、この本を手に取った理由。
理想的な人との結婚、出産からの夫のうつ発覚、辞職、田舎での新しい生活。思ってもみなかったことを受け入れて、頑張る梨々子。なんとか馴染もうと頑張るけれども、夫とは気持ちがすれ違う。子どもの成長で気になることがあっても、相談できる人がいない。隣人は愛想笑いもしない。以前のママ友からは自慢のメールが届く。そんななかで頑張る梨々子の心情が、2年ごとのできごととともに綴られていた。
梨々子は、時がたつにつれ、場所にも慣れ、人にも慣れ、見方が変わって受け入れられることが増えていく。普通ってなに?と思う気持ちは、私もいつも思うことだ。そんななかで、自分のことを思いどおりにされたくないのと同様、夫も子ども達もそうなんだということに気づいた。「私はひとりだ。夫もひとりだ。でも一瞬ぱちっとつながった。これでじゅうぶんだと思っている。」こんなふうに思えるようになった梨々子の考え方、いいなと思った。
ただ、途中で芸能人と親しくなるのは、ご愛敬かな。
人生は、本当にどうなるか誰にもわからない。そしてなんの保証もない。でもそれは仕方がないことで、なんとかやっていこうと誰もが頑張って生活していると思う。始めは苦手だと思う人と、話すうちに打ち解けたり、いつのまにか助けられたり。人のことを一瞬で判断するのは、もったいないことをしているのかもしれない。
夫の田舎の洋品店のモデルは、10年で卒業。物語もひとくぎり。欲を言えば、夫はどういう思いでこの10年を過ごしていたのかを、もっと知りたかった。
Posted by ブクログ
東京から何もない夫の故郷に引っ越してきた妻の10年間の物語。宮下奈都さんの作品は、人の感情が本当に繊細に表現されている。
“回り道の一歩一歩が私の人生”
特別を期待する気持ちも、理想と折り合いをつける気持ちもわかる。
Posted by ブクログ
装丁買い。
梨々子同様に私自身も、妻として、母として、娘として、一人の人間として、属し、弾かれ、言語化できなさや辻褄の合わなさの中を生きている。その一切合切が詰まっているがゆえに、苦しくもあり救いもあり。
梨々子の10年日記のように、側に置いて、年に一度読み返したい一冊。きっと目に留まる心情は違うはず。それくらい、私(たち)の人生は揺らぐのだから。
Posted by ブクログ
独特のテンポと空気感、意外な物語の展開で、他にはない魅力を感じました。
劇的すぎる展開があったり、激昂したり、衝突したり、決定的なことが起こったり。
そういうことではなく、柔く強く適応してのびのびと生きる梨々子が良い。
こんな生き方もあるんだ、と見本を見せてもらえた気持ち。
田舎で暮らしたことなくて、良い噂を聞かない最近はあまりいいイメージがなかったけれど、気の持ちようとか飛び込んでみてやってみるとか、入ってみないとわからないものなのかもと思った。
Posted by ブクログ
突然田舎に引っ越した鬱を発症した夫と二児の母の10年の物語。淡々としていて、それでも悩んでいる心の葛藤、独白を読まされている感じ。矢理自己肯定しようとしてもがく気持ちが淡々綴られていて抑揚がない。読み手が主婦だと共感できるのだろうか。
読んでいて興味を惹かれる場面は少しはあったと思います。