【感想・ネタバレ】田舎の紳士服店のモデルの妻のレビュー

あらすじ

「もしも、子供がいなかったら、夫がいなかったら。私はもっと快活に笑えていただろうか。もっと自由だったのだろうか。」(本文より)東京から夫の故郷に移り住むことになった梨々子。田舎行きに戸惑い、夫とすれ違い、恋に胸を騒がせ、変わってゆく子供たちの成長に驚き――30歳から40歳、「何者でもない」等身大の女性の10年間を、2年刻みの定点観測のように丁寧に描き出す。注目の著者がすべての女性に贈る、愛おしい「普通の私」の物語。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

“宮下さん”ってだけで、購入。宮下さんの言葉のチョイスが好きだ。温かみと鋭い視点で、言葉にならなかったことが言葉として触れることができる。
最近なかなか読書できなかったが、読み始めたら隙間時間を使って読めた。読みたい欲で時間が作れたんだと思う。

これから、“母”になる人に読んでもらいたいな~。
女”はどうしても出産を経て、“母”という役割を与えられる。仕事というと部長とか課長とか急になる感じだなぁ~と思う。急に責任のある役職にあてられたのに引継ぎがない。あっても役に立たない。なのに、上司はいないし、自分で試行錯誤を繰り返すしかない。最大のパートナーだと思っていた夫は、“父”になるまで時間がかかる。“母”という変化は、まったなしで、日々役割をこなしていかなければいけない、そんな人もいるだろう。というか、自分もそうだった。だから、この梨々子の気持ちがよくわかる!何者なのか、自分を見失いそうになる。日本人特有なんだろうな~。

P192
私は大丈夫、どこへ行ってもやっていける。案外こういう小さな言葉が支えになってくれることもあると思う。

実際、亡くなった梨々子の父が言ったかもしれないが、捏造かもしれない言葉だけど、こういうことってあるよね、と激しく同感!


宮下奈都さんのちょこちょこでてくる言葉、文章に、よくこんな風に表現できるな~と感心しながら読んだ。やっぱり宮下さん好きだわ~。

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2025年02月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自分も育休中で、子どもを育て始めたばかりです。今は子どもと向き合い、過ごすだけの毎日。仕事もせず、どこにも行かず、自分は一体何なのだろうと思っていました。

けれども、この本の中に答えのひとつが書いてあり、気持ちが少し軽くなり、自分のことも認めてもらえたようで気持ちも温かくなりました。

P.225 この町がどこにでもあるように、私もどこにでもいる。私にも替えが利く。もしも替えが利かないとしたら、あの子たちの母として、達郎の妻としての竜胆梨々子だけだ。

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2024年10月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本作、ジャケット等見ずにタイトルだけで買いました。

なお私、タイトルを誤解しておりました。
モデルをやっている妻、ということではなく、男性服のモデルをやっている旦那さんの奥さん、の話、ということでした。

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夫のうつ病がきっかけで、東京から福井の夫の実家へ移り住んだ梨々子。都会での華やかな生活から一転、慣れない田舎での暮らし、つかめない夫の心、子育ての不安など、さまざまな葛藤を抱えながら、妻として母として、そして「何者でもない自分」としての日々を生きる10年間を描く物語。

・・・
読んでいて色んな意味で辛く感じました。

一つは、なんで梨々子はこんなにいちいち皆と同じ価値観に縛られるのかという驚き。もう一つは、さりとて自分もその価値観から完全に脱しているわけではないなあという発見。

世の中の一般的な価値観にがんじがらめになり(会社、出世、駐在、この中学受験、キラキラ生活)、夫の鬱とともに家族で田舎に引っ込んでからの、自己の気持ちの整理を描く本作、完全に同じではないのですが、分かるところもちょくちょくあり、最終的には梨々子は頑張ったなあと思いました。

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あと、この夫さんの造形、そして彼に対する梨々子の反応は結構ぐっときました。

私も散々家内を振り回してしまいました。だけどうちの家内も梨々子のように、私のことを(一生)理解できない生き物と思い、自ら孤独の中に生きていると感じているのか?

うちはもう少し仲は良いとは思いますし、家内とは100%分かり合えないと悟っていますが、それでも絶対的な信頼感みたいなのがあり、私は孤独は感じていないです(10-15年くらい前はもっと自信がありません。。。)

ただ、私がどう感じていても、うちの家内が孤独を感じていたとするとこれは悲劇です。

すれ違いが妻を追い込まないように、腹を割った話し合いが必要だなあと感じました。特に旦那の効く耳が必要。私はかつては夫さんのような男であったと感じ、読中に自らの過去を反省しました。

・・・
ということで宮下氏の作品、久しぶりに読みました。

辻村深月さんの解説が梨々子の心象について説明しており秀逸。ぐっときます。

なお梨々子にはこの前読んだ『生きるように働く』をすすめたくなりました。世の中のメインから外れてもいいじゃん。

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2025年10月19日

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