宮下奈都のレビュー一覧
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非常に落ち着いた雰囲気で、一文字ずつが身体に染み渡るような読み心地だった。
ピアノの音や自然の情景を綴る言葉の並びが驚くほど美しく、その小気味良いリズムに身を任せているだけで、頭の中に豊かな森が広がっていくような感覚に陥る。
物語の軸となるのは、ピアノの調律という「抽象を具体に変える」繊細な作業だ。
必ずしも顧客の要望通りに仕上げることが正解ではない、という視点が興味深い。顧客自身も自分の理想を言葉にできていないことが多い中で、言葉の裏側にある真意を想像し、音に反映させていく。そのプロセスは、単なる技術職の枠を超えた深い対話のように感じられた。
また、登場する調律師たちがそれぞれ異なる仕事観や -
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「羊と鋼の森」という表題はもちろん知っていましたが、書評等で「調律師」という言葉が出てきてあまり馴染みがなく、どのような話なのか?全く予想できていませんでした。宮下さんの著作では「神様たちの遊ぶ庭」という北海道の大自然の中で暮らす家族のしみじみ、ほのぼのとしたエッセイが初読みでした。このエッセイの中でも、厳しい大自然の中で生きている様子がふわりとした柔らかい雰囲気で描かれていました。独特のリズム感のある文章でした。
そしてこの「羊と鋼の森」の中で感じたのは、静謐、繊細な心の動き、空気の透明感、羊と鋼の森と言う表現そのもの、文章のリズム。ピアノの調律師の話なのに不思議にピアノの音は聞こえてきま -
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調律師が出てくる本、3冊目。
冒頭からうっすら目に涙の膜が張り、乾かないまま読み終える、私にとってはそんな本。
主人公の外村くんは北海道の山育ち。彼のなかには山があり、北の森の景色と音と光がある。春先に木の芽が潤ってひかる。カササギやエゾシカもいる。
ピアノも音楽も知らないまっさらな彼が、高校生になって「調律」に出会い、こつこつ、こつこつ、努力と気づきを重ねていく。先輩、顧客たち。道標となる原民喜の言葉。
限りなく地味な題材のお仕事小説でありながら、探し求める音色や音楽を描く言葉は詩的なくらいに美しい。
久し振りに読み返して気づいたこと。
作中には、具体的な曲名がほとんど出てこない。これ -
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ネタバレずっと積読してて期待値が低かったからか思いの外良かったのではないか…少ないページ数なのに物語の年月と同じ10年分の厚みがある気がする。30になったばかりの私には、「まさにこれ最近思ってたこと!」で、あと5年、10年たったらこんなことで悩んでたねって懐かしむ時が来るのかな。
主人公の梨々子が東京に居た時と田舎に移ってから、だんだんはっきりしていた輪郭がぼやけていき、考えが曖昧で加齢とともにきゅっとしていた身体も曖昧になっていくような、なんとか綺麗でいようと頑張るんだけど、頑張れば頑張るほど自分のことしか考えれてなくて、家族との関係も曖昧になっていく。
人生に意味なんてなくて、ただひたすらに生