宮下奈都のレビュー一覧
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憧れの田舎暮らし。個性豊かで楽しい家族。同じようで違う毎日。そんな生活が羨ましくて山村留学を真剣に考えたりもした(笑)
でも「しあわせって、たぶんいくつも形があるんだろう。大きかったり、丸かったり、ピカピカ光っていたり、いびつだったり、変わった色をしていたりするかもしれない。そういうのをそのまんまで楽しめるといいとつくづく思った」に、私は私の幸せの形を探さないとダメだとはっとさせられた。そして、それはきっと山村留学ではない。
最近なんとなく惰性で生きちゃってるけど、それは自分が選択したことなんだと思い知らされた。変えるのはきっと自分。
忘れたくない言葉がいっぱいのこの本は、手元に置いて、これからも何度も読み返すだろうな。 -
Posted by ブクログ
調律師が出てくる本、3冊目。
冒頭からうっすら目に涙の膜が張り、乾かないまま読み終える、私にとってはそんな本。
主人公の外村くんは北海道の山育ち。彼のなかには山があり、北の森の景色と音と光がある。春先に木の芽が潤ってひかる。カササギやエゾシカもいる。
ピアノも音楽も知らないまっさらな彼が、高校生になって「調律」に出会い、こつこつ、こつこつ、努力と気づきを重ねていく。先輩、顧客たち。道標となる原民喜の言葉。
限りなく地味な題材のお仕事小説でありながら、探し求める音色や音楽を描く言葉は詩的なくらいに美しい。
久し振りに読み返して気づいたこと。
作中には、具体的な曲名がほとんど出てこない。これって実は、すごいことなのでは…
音楽ものの創作では、実在の曲名を使うことで読み手に曲を脳内再生させ、イメージを補完するという手法(というのかしら)がある。例えば「のだめ」も「蜜蜂と遠雷」も、そうして世界を膨らませてきた。どっちも音大生の物語だから、どんどん学んで知識を膨らませていくのは、物語的にも全然ただしい。
でも、外村くんは音楽を知らない。一生懸命吸収しつつはあるけれど、うんちくを振りかざすような境地にはいない。作中ではっきり聴き当てたのは小犬のワルツと結婚行進曲くらい。
私たちも彼の視点で、わからないまま森へ誘われる。こつこつと読み進め、心の中で耳を澄ませ、想像するしかない。
定番の「膨らませ方」に頼らずに音を描く、物語を組み上げていく力量のすごさ…も、勿論感じる。けれどそれよりも、そう描くことによって、私も外村くんの無垢な歩みを体感できる気がすること。今更そうはなれないからこそ、それがとってもうれしい。
検索すれば答えなんてすぐわかる、知識と情報で補強しないと自信を持てない、AIに土台をやってもらって仕上げだけ自分で整えればオッケー…そんな今どきのモノの知り方に不安を抱いたとき、またこの森の入口に立とう、そう思わせてくれる本。
あとは余談。
先輩の柳さんがステキ。技術も仕事への意識も高く、外村くんを導いてくれる頼れる兄貴。ドラムも叩けてバンドやってて、綺麗な彼女がいて、でも裏側には、胸に刺さるような過去もある。今俺かっこいいこと言わなかった?ってかっこ悪いこと言ってくれるところまでかっこいい!笑
調律師、子供の頃に憧れた仕事。でも、動作が雑でよく物を壊す自覚があったので、自分にはピアノなんて繊細なものを扱う資格はない…と諦めてしまったっけ。
勝手な憧れを壊さないまま、その世界の豊かさを、深いところまで掘り下げて見せてくれる本。しかも、心に馴染んだ北海道の景色と結び合わせてくれるなんて。
感謝します。 -
Posted by ブクログ
ネタバレずっと積読してて期待値が低かったからか思いの外良かったのではないか…少ないページ数なのに物語の年月と同じ10年分の厚みがある気がする。30になったばかりの私には、「まさにこれ最近思ってたこと!」で、あと5年、10年たったらこんなことで悩んでたねって懐かしむ時が来るのかな。
主人公の梨々子が東京に居た時と田舎に移ってから、だんだんはっきりしていた輪郭がぼやけていき、考えが曖昧で加齢とともにきゅっとしていた身体も曖昧になっていくような、なんとか綺麗でいようと頑張るんだけど、頑張れば頑張るほど自分のことしか考えれてなくて、家族との関係も曖昧になっていく。
人生に意味なんてなくて、ただひたすらに生きるしかないのだ。だからそんなに力まず執着せず、もっと気軽にいてもいいのではないかとちょっと大人になった気がした本。 -
Posted by ブクログ
「羊と鋼の森」の宮下奈津さんのエッセイ。
エッセイのタイトルにしては小説のような物語性を感じるタイトル。
ちょっと大げさでは?と思っていたが、読後はまさに!となった。
北海道の移住先”トムラウシ”は「神々の遊ぶ庭」と呼ばれるくらい、素晴らしい景色に恵まれた土地なのだそう。ただその場所に移住した時の話だから、このタイトルというわけでなく、読み進めていくと、ここで過ごした日々、そのものが物語の中のような日々で、読後はこのタイトルに納得してしまった。
とにかく宮下さんの子どもたちが可愛い!1年間で親も子も本気で遊び生きる姿に、ハッとさせられた。