鬼澤忍のレビュー一覧
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購入済み
悲観的絶望的な記述
長大な著書であり 膨大な実例を挙げて不平等.格差の変化の実情 原因について論じている。かなりの箇所で同じエピソードの繰り返しがあり「冗長」との印象を抱いた。
しかし、印象に残る箇所 感銘を受けた箇所も数多くあった。例えば下記のような文章である。
歴史的に見れば、格差の是正 平等化には黙示録の四騎士黙示録の四騎士(戦争 革命 崩壊 疫病)による大惨事が必要であった。黙示録の四騎士のうち平等化に一番貢献したのは一番多くの割合の人を殺した「疫病」である。労働者が減ると労賃が上昇し、格差が解消してゆく。
現在の日本の労働者減も、移民による労働力補充などをしないと労働力不足による賃金向上が実現でき、格 -
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誰にでも平等に機会が与えられているが故に
学歴が高い人は努力した人
学歴の低い人はチャンスがあったのに掴まなかった人
といった評価がなされる。
身分制度があった頃は、自分の不遇な境遇を制度のせいにできたが、能力主義の現代では、自分の不遇を自分のせいにできてしまう。
それが昨今のエリートとブルカラーの軋轢を生むというのは納得である。
とはいえ、学歴の高い人は経済的に恵まれた家庭である傾向が高く、そもそも努力できる力というのも先天的なものである可能性も高い。
それなのに、学歴の高い人はあたかもその個人の努力だけで勝ち取ったと評価し、恵まれた職業につけるようなシステムは、それこそ差別的と感じる。
必 -
Posted by ブクログ
人種、民族、宗教、文化、歴史。
あると言えばある。
実態はないと言えばない。
人が集まり、緩く、厳密な定義を持たせないことで、なんとなく成立する物語。
中には、先鋭的に解釈して文字通り人を殺してでも、自らの物語の筋書きを貫くものもいる。
周囲との調和を目指すものもいる。
人は木の股から生えてはこない。
一人で成人することもできない。
親、社会、他者から、言葉を、生活を、文化を与えられて育つ。
それら、全ての偏りから自由には生きることはできない。
なんという不自由さだろう。
幸せなことに、今自分の周囲において、人種だの国家だの文化だのが原因で、殺したり殺されたりの連鎖があるわけではない。
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Posted by ブクログ
著者はユダヤ系アメリカ人。少しイスラエル寄りなところを感じさせつつも、かなりバランスよくイスラエル及びパレスチナ問題を解説している。恥ずかしながら本書を読んで、日々のイスラエルに関するニュースは基本的事項を押さえずに聞いていたことが分かった。これからは少し背景知識を持ってニュースを聞くことができそうだ。
興味深かった点を羅列すると、
イスラエルが占領するヨルダン川西岸は、米国を含め(トランプ政権は置いておく)国際社会からその支配は認められていない。
米国のユダヤ人は基本的にリベラルであり、イスラエルの建国当初から支援してきたが、近年は右傾化するイスラエルと思想的に分離が見られる。米国で熱心にイ -
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ユダヤ系アメリカ人の著者ができるだけ公平な視点から書くイスラエルの問題。イスラエル、パレスチナの地についての歴史を描く第一部とイスラエルの問題を探る第二部に別れる構成で、著者のユダヤ人バックグラウンドはありながらもどちら側にも肩入れすることなくイスラエルの解決の見えない問題を教えてくれる。
知れば知るほど解決などできない問題だと思えてくるがどうなるのだろう。ユダヤ人が迫害を受けた結果として元々パレスチナに住んでいた人々を迫害(と、同じようなこと)するというのは、客観的に見たどうしても愚かとしか思えない。判官贔屓的にパレスチナ国家樹立を支持したくなる部分もあるけど、ファタハとハマスの断絶のように -
Posted by ブクログ
正直なところ読むのに苦労した。理解しきれていない部分もあるので何回か読み返して理解を深めたいと思う。
アメリカンドリームに代表される能力主義は本当に称賛されるべきことなのか、という問いに対してアメリカの政治家、経済学者の発言や、過去の事例を参照しながら考えを述べていく内容。
個人的に興味深いと感じたのは、学歴偏重主義の話。国を統治する上で必要なのは名門大学の学位を有していることではなく、「実践知と市民的美徳」であるという主張には説得力があると感じた。(事実ワシントン・リンカーン・トルーマンは大学の学位を持っていない。)
アメリカの話がメインではあるが、日本に置き換えられることも多いので、読んで -
Posted by ブクログ
大卒者とそれ以外の学歴者の差異が、社会階層の分断線となっていて、その分断線が、世代を超えて固定化している。さらに、大卒者の中でも、トップ校と、それ以外の差が大きくなり、その分断も、世代を超えて固定化している(トップ大卒の子どもはトップ大に入り高給取りの「勝ち組」となり、大学に進まなかった親の子どもは大学に進まずに「負け組」となる)。
この構図については『学歴分断社会』(吉川徹)等でも取り上げられていて、アメリカでも日本でも同じだと認識したが、この本では、その動きを支える「メリトクラシー」の負の側面に踏み込んでいる。
優秀な人を責任あるポジションにつけるという「メリトクラシー」の理念そのもの -
Posted by ブクログ
ネタバレ2012年刊。
それをお金で買いますか?というテーマの一例…
・刑務所独房の格上げ…一晩82ドル
・インド人代理母による妊娠代行サービス…6250ドル
・米国移住権…50万ドル
・欧州で企業が1トンの炭素を排出する権利…13ユーロ
・製薬会社の安全性臨床試験で人間モルモット…7500ドル
この世であらゆるものにプライシングされ、お金さえ払えば大体のものは買えるのだ、という態度について考えさせられる。
いい指摘はしているが、翻訳本なので読みづらく、読書中何度も眠くなった。
機会あれば再読して価格をつけることのモラルについて考えたい。