鬼澤忍のレビュー一覧
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シンガポールに住んでいて、盲腸になって医者にかかった日本人のおじさんが600万円を請求されたらしい。保険で済んだそうだが。このようなことは日本では起こらない。その手の話し。
様々な社会経済におけるお金で買っちゃ(売っちゃ)いけないだろ的な商材やサービスの実例に則し、モラルの観点や構造を分析したあと、次にそれに判定を下すのではなく、必ず両者の立場や言い分、第三者的な視点を通して解説され、読者に問題提起することによって思考をうながすもの。
さまざまな知られざる事実をだいたい上記のような型で並べているのでとても読みやすい。
著者のマイケル・サンデルはハーバード大学の大人気教授で、福岡伸一との対談で知った。能力主義と道徳性の関係性を丁寧に言葉にする専門家。現代の知の巨人だと思った。 -
Posted by ブクログ
最近読んだ中でもっとも筋の通った本。
ゾンビが大嫌いでゾンビ映画の広告を見るのさえ苦痛に感じる自分が魅了され、読み切った。
怖い本だと困ると思って夜読むのを最初は避けてたくらい。
いやいや読み進むうちに、まるで脳神経科学の講義を受けているような気分になる、それも評判の良い人気教授の講義をである。
難しい脳の解剖が大変ではあるけれど、理論的にゾンビを解明し、対応策の検討に導く過程も楽しく読めるという空想医学理論小説というジャンルを作りたくなるような本。
現実にはいないゾンビを真面目に分析し、理論を展開していく。
その荒唐無稽だけど一抹のもしものとき必要かもと思わせる書きぶり。
翻訳の方の力もあるかもしれない。
どちらにしても楽しい本。
難解な感じの続く脳神経科学に、抵抗感のない人にはごく楽しめると思う。
実際にゾンビに襲われてないしね。今はまだ。
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Posted by ブクログ
例えば、ハリケーン(台風)が過ぎ去った後、家の屋根に損傷を被った被災者に対して、業者が通常の数倍の金額で屋根の修理を受注すること(価格設定は需要と供給の関係で決められるもので本来自由である、また高い価格設定で多くの業者が参入し復興が早まると容認する見解もある)。例えば、戦争で外傷を負ったり死亡した兵士に与えられる国からの勲章が、PTSDなど心的障害を負った兵士には与えられないこと(心的障害は敵の攻撃によって生じたものでなく因果関係も明らかでないと現状を肯定する見解もある)。例えば、経営破綻した大手金融機関に税金から公的な救済資金が支払われたにもかかわらず、その企業の役員に莫大な金額のボーナスが支払われること(当該企業の株式の大半を政府が保有することになるので、納税者のために早期に不良債権を処理するには有能な人材の確保が必要であり、それに見合う報酬が必要と容認する見解もある)。そんな具体的事実や事例をもとに、本当の「正義」とは何かについて考えるのが本書の内容です。
この他にも、課税という富裕層から貧困層への富の再分配、貧困層の臓器売買、現在を生きる世代とは関わりのない歴史的過ち(ホロコーストなど)についての謝罪や補償、代理出産、同性婚。妊娠中絶の是非などについても、個人の権利、倫理的・道徳的な判断も含め、正しいことなのか、すなわち正義という観点から、様々な考え方について提示してくれています。
本書では、これらのような「正義」について考えるアプローチとして、
①幸福の最大化、
②自由の尊重、
③美徳の促進、
の3つの観点が存在するとしています。
①は功利主義的な立場で、例えば1人あるいは5人のどちらかをやむを得ず殺さなければならない状況ならば、1人殺すべきだという、少しでも多くの人間が幸福になれる方向をとる、最大多数の最大幸福こそが正義なのだとする考え方。
②は正しさは善に優先するという立場で、正義とは対立し合う意見に対してすべて中立であらねばならず、個人が「自由に選択できること」こそが正しさであり、正義なのだという考え方。
③は相互的尊重という立場で、人間は多種多様であり満場一致で決めることは出来ないのだから、考え方をすり合わせた「共通善」を目指していくことが正しさ、すなわち正義であるという考え方。
本書では日本では関心の薄い宗教的な要素も記述されていますが、いずれにせよ、「個人の自由と権利」をどこまで認めるか、「社会としての幸福」をどこまで求めるか、その2つの要件から「法律」をどのように規定するか、ということを様々な考え方を紹介するとともに、著者が考えるその判断基準を述べているのかと思います。
私の以上の解釈で正しいのかどうか自信はありませんが、「正義」について、上記の通り様々な要因で多種多様な考え方がある中で、誰もが納得する正解を得ることは難しいと思います。ただ「感情」ではなく「理性」で判断することが大事ということは同感で、その判断が理性に従っているかどうかを確かめるには、『自分の主張が最高裁判事の意見として提示されたら、どう感じるだろうか』と自問してみるといい」、と書かれていた部分には思わず付箋を貼りました。
あらためて「正義」について考えるには有益な一冊で、著者の話をもっと詳しく聞いてみたいと思いました。
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Posted by ブクログ
ネタバレ頂点に立つ人びとは、自分は自分の手にしている境遇にふさわしい人間であり、底辺にいる人びともまたその境遇にふさわしいという独りよがりの信念を持ちやすい。
リベラル派 保守派
左派 右派
民主党 共和党
主流派 反主流派
ヒラリー トランプ
道徳的に行動する責任を負わせることと、われわれ一人ひとりが自分の運命に全責任を負っていると想定することは全く別である。
神は正義に叶う、神は全能、悪が存在 この三つの見解を同時に取ることは難しい
→人間の自由意志 悪への責任を神から人間へ移行する考え
リベラリズムの先駆者
しかし、自由意志を認めれば神の究極の贈り物である十字架にかけられたキリストという犠牲の意味を損ねる、神の恩恵を前にしての謙虚さが自らの努力に対する誇りに取って代わられてしまう
神に選ばれることは自力では決して不可能であり、そのために功績を上げてチャンスを増やそうとすることが冒涜である
→断固たる反能力主義
ただ労働的な考えだと天職について頑張ることが救済のしるしだと見なし、これが選ばれる原因だとすり替わっていく
自分たちが神に選ばれたと確信しているせいで、宗教的貴族社会は地獄に堕ちる運命にあるように見える人々を軽蔑して見下した
→能力主義的おごりの初期バージョン
選ばれたものは自力?自力でなく神の恩寵? 当時
成功は自力?幸福は制御できない要因? 現在
オバマはテクノクラート的な考えそのもの
テクノクラート的なものとしてではなく、権力、道徳権威、信頼にまつわる民主社会に生きる市民にとっての問題としなかったことが問題
このようなことが現在のポピュリストの不満の政治であり、能力主義とテクノクラシーの失敗に向き合うことが共通善に向けた一歩
人びとが能力主義に不満を訴える場合、理念についてではなく、理念が守られてきないことについての不満であるのが普通だと
能力主義はもっと根の深い問題だとしたら?実現できないのではなく、理想に欠陥があるとしたら?
能力主義完全実現は正義にかなうか、いささか疑わしい
能力主義の理想は不平等の解決ではなく、不平等の正当化
才能を自分の手柄ではないと認めれば能力主義的信念は疑問にさらされる。才能の道徳的恣意性を無視し、努力の道徳的意義を誇張してしまっている。
ハイエクの自由市場リベラリズム 才能に対する世の中の価値の尺度が違っているから受ける報酬も変わるわけでそれはただの運である
ロールズの福祉国家リベラリズム 才能のあるものが得た報酬を運に恵まれない人に分かち合う 努力の意欲さえ恵まれた家庭や社会環境によるもの
これが立証されるかはそのコミュニティから恩恵を受けて、共通善に貢献する義務があるかどうか
ハイエクの考えでも功績と価値の区別はできてるけど、お金が尺度となる市場経済の前ではほぼ能力主義と一緒
ナイトの考えだとハイエクの考え➕市場価値と社会的貢献は一致することが疑わしい
薬の売人 高額 小さな価値
教師 低額 大きな価値
平等主義リベラリズムは結局のところ、エリートの自己満足を咎めていないことを示唆しているのかもしれない
大学入試を適格者内でくじびき
能力を一基準として、最大化すべき理想としない
グローバリゼーションプロジェクトは消費者の幸福を追求し、外部委託、移民、金融化などが生産者の幸福に及ぼす影響をほとんど顧みなかった。労働の尊厳の喪失
改善に向けて
生産者として役割 貢献の真の価値は賃金ではなく、対象の道徳的、市民的重要性
低賃金労働者への賃金補助、税負担を労働から消費へ
税務政策は道徳的側面を持つ、労働よりも投資の税率が低いのはgdp増加が目的、それは道徳的前提?
実体経済にとって無益で賭博めいた投機に悪行税を課す
能力の時代が破壊した社会の絆を修復する
完璧な平等を必要なのではなく、多様な職業や地位の市民が共通の空間で出会うことは必要 -
Posted by ブクログ
昨今の世の中の混乱を西洋におけるプロテスタント倫理の崩壊と言う意見を聞くようになりました。
本書でもそのあたりを『自らの健康とささやかな成功を神に感謝する考えから、健康で成功するためにきちんとできる人間である事は神に愛されている証と言う考えに変わり、健康で成功するために努力する事が神に愛される原因と考えるようになり、健康で成功するための努力そのものが個人の選択と能力により獲得できるものと考えるようになり、ついには自分の運命は自分が握るものと言う考えに至った』とページを割いて説明しています。
自分の運命は自分で切り拓くものと言う考えは実に人間本位の考え方だと思います。
多分ですが、今の私があるのは私一人の手柄ではなく、親や友人や先生や他の誰や神様や運命が私に与えてくれたものと考える事が第一歩なんだと思います。
一度こう言う考えに立ち返る事で、私たちの価値や能力は本来は他の誰かとの関係性の中でしか評価できないものと気付けるのかもしれません。
人間には社会生活に積極的かつ生産的に参加したいと言う要素があり、これが満たされる事、つまり他人を承認し他人から承認される事を抜きにしては、分配だろうと流動性の向上だろうと、小手先のテクニカルな政治的な対処ではもはや意味を持たない事も良く理解できました。 -
Posted by ブクログ
心がざわざわするということはないだろうか?
そんな時、「こうだったらどうしよう」と思考を巡らせるのは私だけではないはず。
この本はそんな「頭の中のひとりごと」とどう向き合っていくかが書かれている。
頭の中のひとりごとというと本当にさまざまだけれど、この本ではネガティブな要素に関して書かれており、それをチャッターいう名前で表されていた。
強み資質診断ツールの『ストレングスファインダー』で内省が7位だったわたし。
この内省が磨かれるのかな?と思い手に取ってみたが、チャッターと内省は別物だったということが判明した。
私なりの解釈になるが、チャッターは自分の内面や感情に焦点を当て、心の状態を観察する内観に近く、内省は自分の言動や行動について客観的に振り返り、分析する解決法に近いように感じた。
つまり、ネガティブでグルグル思考なチャッターをいかに建設的な思考に持っていくか。
と読んでいて内容を解釈した。
ちなみに本中、脳卒中によって、内なる声が消えた方の話が出たが、その感想が興味深かった。 -
Posted by ブクログ
当たり前だと思ってきた「能力主義」というものを根本から考え直させられました。
努力すれば報われる、教育機会を広げれば公平になる…リベラルな考えに比較的共感してきて、これまで善意だと思っていた考えが、実は「成功できなかった人は失敗者」という偏見を助長しているのではないか、と気づいて少し衝撃を受けました。
私たちは生まれてから受験、就活、昇進とずっと選別され続けています。何かしらの基準で「優れている」「劣っている」とラベルを貼られるのが当たり前になっていて、達成した人は驕り、達成できなかった人は自分を責めてしまう。
でも本当に大事なのは、そうした基準を超えて、どんな立場の人も尊厳をもって生きられることなのだと思います。
サンデルの提案する改善策は正直まだ現実味が薄い部分もあると思いますが、それでも「この社会の常識を一度立ち止まって疑う」きっかけを与えてくれる一冊でした。 -
Posted by ブクログ
私は心の中の独り言が多いタイプで、例えば、嫌なことがあった時にはそのことを延々と考え続け、また、誰かと話した後は嫌なことを言ってしまってないかと1人反省会をするなどしていた。そして、それによりどんどんマイナスな方向に物事を考えてしまっていた。
そんな私にとって、心の中の独り言からポジティブな効果を得る方法を記したこの本はぴったりだった。
特に、以前はネガティブなことを考えるのを無理やりやめようとしていたが、そうではなくある簡単な(すぐ実践できる)方法により客観的にその物事を捉えられるようになったことは良い収穫だった。
不安な気持ちに苛まれた際にはまた読み直そうと思う。