鬼澤忍のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ国家が貧困を免れるのは、適切な経済制度、特に私有財産と競争が保証されている場合に限られる。
エジプトが貧困なのは、砂漠や気候、土壌、文化的特性、イスラム信仰、間違った政策、ではない。限られたエリートによって支配されてきたから。
イングランド、フランス、合衆国、日本、ボツワナ、ブラジルで政治変革が起きたために、豊かになった。
アリゾナ州ノガレスと、メキシコのソノラ州ノガレス。同じ地域、気候風土だが、生活は全く違っている。メキシコは独立後50年間、政情不安にあった。アメリカの銀行は、競争があった。メキシコの銀行間にはなかった。政治家は、選挙で勝つためには銀行と結託したくても続けられなかった。メキシコのカルロススリムは、イノベーションによって財を成したのではなく、政治的モネによって、民営化された独占通人企業を手に入れたことで財を得た。
経済制度は経済的インセンティブをもたらし、イノベーションを起こす。どのような経済制度を受け入れるかは政治的プロセスであり、これを決めるのは政治制度。政治家が国民の代理人になるか、自らの権力を乱用するか。成文憲法や民主的制度にとどまるのではなく、社会のあり方も決める。
制度と法の支配と安定性と継続性が保証されているからこそ、繁栄に向かうインセンティブを生む。
繁栄は経済制度で決まるが、それを決めるのは政治制度。
不平等の原因としての地理説では、豊富な生物と植物がいるインド、中国を説明できない。新石器革命が起きたのは、中東だたが、オスマン帝国の支配により貧しいままとなった。
コンゴは中央集権化された国家だったが、銃を奴隷を捕まえて輸出するためにつかった。コンゴは王によって、没収や課税のリスクを抱えていた。新しいテクノロジーを取り入れるインセンティブはなかった。鋤をつかって農業生産力を上げても、取り上げられる危険があるため、奴隷輸出を選んだ。
中国は、数百万の飢餓の経験から、共産主義から市場的インセンティブへの転換を図ったため、成功したが、これは政治が変わったから。
繁栄の達成の多くは、政治的問題の解決にかかっている。政治問題は解決済みではない。
韓国は民主的ではなかったが、私有財産と市場経済を認めた。そのため急速な経済成長がおきた。北朝鮮は私有財産をもてないため、生産の増進や維持のインセンティブがない。新しいテクノロジーを受け入れる余地がない。
収奪的な経済制度と包括的な経済制度の違い。私有財産、イノベーションだけでなく教育にも及ぶ。
収奪的な政治制度と包括的な政治制度の違い。政治とは社会のシステム、ルールを選ぶプロセス。
その前に、中央集権化された国家権力が必要。ソマリアでは多元的な政治勢力が争うため、実質的な権威が不在。
収奪的な政治制度と経済制度は、互いに支え合い持続しやすい。
包括的な経済制度は包括的な政治制度の上に作られる。恣意的な講師を抑制する。
経済成長は創造的破壊から起きる。収奪的制度ではそれが恐怖となり、イノベーションを抑え込もうとする。
オーストリア=ハンガリー帝国とロシア帝国は、貴族階級が強く、失うものが多いため、産業化が阻まれた。
成長が進むのは、経済的特権の喪失を心配する者、政治権力が失われることを心配する者、による妨害がない場合。
現代のコンゴ民主共和国は依然として貧しい。成長を促す経済制度がなく、収奪的な経済制度になっている。一部のエリートに政治権力が集中しているため、経済発展を促すインセンティブがない。中央集権化も起きない。取って代わる政権も、収奪的制度を繰り返す。
経済制度が収奪的でも、エリートたちが生産性の高い活動に投資すれば経済成長は起きる。カリブ海諸国、ソビエトの経済成長の例。
韓国は、経済制度が包括的だったため、収奪的な政治制度を維持する必要がなくなった。軍隊や政治を支配しても、得るものは少ない。
どちらもケースでも、中央集権的な国家がなければ成り立たない。部族間の対立があると、取って代わった勢力も収奪的にならざるを得ない。
ペストはヨーロッパを襲ったが、少しの違いから収奪的制度を壊す働きをするか、より収奪的制度の出現を許すか、の違いが起きる。
スペイン国王は、アメリカ帝国から金と銀を得たが、イングランド国王は財政的に豊かではないため、増税のため議会の承認を得る必要があった。
イギリスでは国王は貿易を独占できなかったが、スペインやフランスはできた。これが産業革命につながった。
東欧は農奴がいたが、西欧では少なかった。
ベネティアは、一部の独占エリートが収奪的制度を復活させた。
北米は、英国、フランスの植民地政策で決まった。ラテンアメリカはスペインの植民地政策で骨格が決まった。中東はオスマン帝国の植民地政策で決まった。
中国はアヘン戦争のあとも絶対王政を崩そうとしなかった。日本は、外圧と明治維新で包括的な政治制度ができた。
中央集権的体制があれば、なんらかの規則を実施することができる。収奪的制度であっても、富を奪おうとすれば富を生み出す必要があり、資源を特定分野に集中させることで成長はできる。既存の技術を下にした成長しかできない。ソ連の例。成長は早いが終了するのも早い。
経済的インセンティブはない。エリートは、持続的変化を嫌う。
スターリンは、インセンティブがないと働かないことを理解していて、その仕組みを作った。しかしボーナス制度は、常に業績不振がスタートの方が都合がいいことに気づかなかった。利潤動機ではなく、算出目標が同期だとイノベーションは怒らない。良いアイデアを思いつくことは強制できない。
コンゴ共和国の川を挟んだ2つの部族、レレ族は貧しいが、ブショング族は裕福。はなぜ起きたか。政治制度が違う。ブショング族は収奪的で絶対王政ではあったが、中央集権体制があった。収奪スべき富を生み出すために、ある程度の経済的繁栄は動機される。富は少数エリートに集まる。しかし、包括的な政治制度の場合と全く違うのは、それが持続不可能ということ。支配が続く場合は、創造的破壊とイノベーションが不足するので、成長は長続きしない。内紛と政情不安がおきると、政府は転覆するが、その後に出現する政治もやはり収奪的である。
ベネチアの遠距離貿易は、国営化し貴族のものになったことで、没落が始まった。包括的制度は反転することがある。小さな相違ははかないもの。
ローマ帝国は共和国から帝国へ移行して収奪の比重が増し、内紛や内戦がおきて崩壊した。
労働者の抑圧に基づく経済、奴隷制、農奴制、はイノベーションとは無縁。
いまでも、アフガニスタン、ハイチ、ネパールなどは政治的中央集権体制が欠けている。これは工業化の前提条件。
エリザベス一世とジェームズ一世は、靴下の機械化の特許を却下した。失業が生まれれば政治的不安定を生み、国王の権力を脅かすと考えた。収奪的制度はイノベーションを歓迎しない。
イギリスでは、名誉革命で王の収奪的制度を破壊した。専売品は国王のものではなく、国家のものになった。同時に中央集権化も進んだ。これが産業革命への糸口となった。包括的経済制度のたまもの。
オスマン帝国は、活版印刷が発明されても印刷を禁止した。民衆に知識をつけないため。印刷機の創造的破壊に反対した。
スペインは絶対王政が樹立されていたことが収奪的制度が持続した原因。イングランドでは名誉革命で絶対王政が敗北したことで、発展した。スペインは、むしろ絶対王政が強固になった。私有財産の曖昧さ、貿易の独占、公職の世襲など。
ロシアやオーストリアハンガリー帝国では鉄道も権力者の反対で敷設できなかった。国家が人々の繁栄を望まなかった。農業中心の社会のほうが都合が良かった。鉄道で革命がやってくる、と考えた。
明、清が交易に反対したのは、創造的破壊への恐怖から。国内市場は大きかったがイノベーションを起こすほどではない。
エチオピアでは、国王が気まぐれに土地を与えたり取り上げたりした。そのため、耕し、面倒を見るものはいなくなった。自分が収穫できるとは思わないから。 -
Posted by ブクログ
近代に入るまでは身分制度があったので、人間は良い意味で不自由であった。身分が違うので農民が貴族に憧れるということはなかった。しかし、人間が自由を持ったことで、人に対する羨望やそれに対する絶望が蔓延するようになった。能力主義を絶対的な正義とする今日の世の中で、成功すれば自分の努力の賜物、失敗も自分のせいという風潮になり、ますます格差が生まれる世の中になった。能力はそれを必要とされる世の中に生まれてこそ発揮されるものであって、それは単に運に過ぎない。例えば、大谷選手が中世のヨーロッパに生まれていたらあんな活躍は恐らくなかったであろう。成功はあくまで運であり、謙虚になることが求められる。
-
Posted by ブクログ
少し難しい内容でした。
上巻で人類の歴史上、技術革新が起きたら特権階級の人が富を得る、労働者階級の人は今まで以上の成果を同じ時間で求められるようになった。という内容だったと思います。
下巻では、自動車工場等で労働者が集まり、労働組合を設立したことで、対抗策を作り技術向上に伴う利益の分配を求めることが出来た。
このことから、技術革新の恩恵を分配する仕組みが格差を縮める方法であると予想される。
ここ最近の技術革新とされる人工知能(AI)にも同じことが言える。この技術が特権階級に有利に働く事になれば、富の格差は広がってしまうだろう。
このAIの技術は会社の経営者と労働者の話ではなく、国家と国民の規模だと思いました。
-
購入済み
悲観的絶望的な記述
長大な著書であり 膨大な実例を挙げて不平等.格差の変化の実情 原因について論じている。かなりの箇所で同じエピソードの繰り返しがあり「冗長」との印象を抱いた。
しかし、印象に残る箇所 感銘を受けた箇所も数多くあった。例えば下記のような文章である。
歴史的に見れば、格差の是正 平等化には黙示録の四騎士黙示録の四騎士(戦争 革命 崩壊 疫病)による大惨事が必要であった。黙示録の四騎士のうち平等化に一番貢献したのは一番多くの割合の人を殺した「疫病」である。労働者が減ると労賃が上昇し、格差が解消してゆく。
現在の日本の労働者減も、移民による労働力補充などをしないと労働力不足による賃金向上が実現でき、格差が解消する。
急進的な暴力的な格差是正(中国共産党の例)少しでも余分に働き少しでも所得が多いと、ブルジョアだと目をつけられる。みんな「貧乏こそ最高だ」と考え最低限しか働かなくなる。
格差の解消≒みんな貧乏なレベルへ収斂するということ。特に上流階層の貧困化。
(例)ニカラグア社会主義革命政権が暴力的な強制に頼らずに、民主的多元共存を目指したことが、有効な平等化を果たせなかったことの決定的な要因。→平等化に暴力は必須。
共産主義革命.冷戦の恐怖によって、西側諸国の福祉政策 格差是正がある程度進められた。
平等化≒非文明化≒貧困化
原因は生産能力≒農地面積:人口増加 か
義務と権利は対になるものである。
男性の参政権=徴兵義務
女性の参政権=軍需産業労働 女性の権利向上
そして、今後の不平等の解消 格差是正への道筋を述べているはずの最終章でも
「多くの暴力を伴うほど平等化は効果的」「民主化が進めば不平等は解消する という状況は、実績としては証明されていない。」「暴力がない長期的本格的な平等化の証拠はまったくない。」
という悲観的絶望的な記述となっている。 -
Posted by ブクログ
誰にでも平等に機会が与えられているが故に
学歴が高い人は努力した人
学歴の低い人はチャンスがあったのに掴まなかった人
といった評価がなされる。
身分制度があった頃は、自分の不遇な境遇を制度のせいにできたが、能力主義の現代では、自分の不遇を自分のせいにできてしまう。
それが昨今のエリートとブルカラーの軋轢を生むというのは納得である。
とはいえ、学歴の高い人は経済的に恵まれた家庭である傾向が高く、そもそも努力できる力というのも先天的なものである可能性も高い。
それなのに、学歴の高い人はあたかもその個人の努力だけで勝ち取ったと評価し、恵まれた職業につけるようなシステムは、それこそ差別的と感じる。
必要なのは、低賃金への人への金銭的サポートではなく、敬意である。
清掃員だってスーパーの店員だって、大工だって、どんな職業も必要で尊敬に値することがわかっているのであれば、給料をもっと均等にしたら良いのではないか。
一方、資本主義社会ではそれも難しいことは承知である。なかなか難しい問題であり、引き続き考えていきたい。 -
Posted by ブクログ
正直なところ読むのに苦労した。理解しきれていない部分もあるので何回か読み返して理解を深めたいと思う。
アメリカンドリームに代表される能力主義は本当に称賛されるべきことなのか、という問いに対してアメリカの政治家、経済学者の発言や、過去の事例を参照しながら考えを述べていく内容。
個人的に興味深いと感じたのは、学歴偏重主義の話。国を統治する上で必要なのは名門大学の学位を有していることではなく、「実践知と市民的美徳」であるという主張には説得力があると感じた。(事実ワシントン・リンカーン・トルーマンは大学の学位を持っていない。)
アメリカの話がメインではあるが、日本に置き換えられることも多いので、読んでみると新たな気付きや視点を得ることが出来ると思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2012年刊。
それをお金で買いますか?というテーマの一例…
・刑務所独房の格上げ…一晩82ドル
・インド人代理母による妊娠代行サービス…6250ドル
・米国移住権…50万ドル
・欧州で企業が1トンの炭素を排出する権利…13ユーロ
・製薬会社の安全性臨床試験で人間モルモット…7500ドル
この世であらゆるものにプライシングされ、お金さえ払えば大体のものは買えるのだ、という態度について考えさせられる。
いい指摘はしているが、翻訳本なので読みづらく、読書中何度も眠くなった。
機会あれば再読して価格をつけることのモラルについて考えたい。