鬼澤忍のレビュー一覧
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アメリカでトランプ氏が復権した時代に、きわめて弱い声かもしれないが、聞かなくてはいけない主張がここにあるような気がした。
自由な選択を尊重するリバタリアンも、全体の幸福を目指す功利主義も、正義の観点からは疑問符がつく。カントも、ロールズも、いまひとつだ。ではどうすれば?
多元的社会では、道徳も共通善も一致しない。でも、他者の尊重の名のもとに、議論を回避すれば、「偽りの敵意」が生まれかねない。公共の言説の貧困化につながりかねない。(実際そうなっている)。だから、道徳や共通善を考えるという、困難な道筋をあきらめてはいけない。市民道徳を育み、公民的生活基盤の再構築を目指すべし――。
道徳に関与 -
Posted by ブクログ
「正義」に関する哲学の理論体系が整理されている。
ハーバードの授業が元になっているだけあって、網羅的だ。
正義を功利主義(効用の最大化)として捉えることも、リバタリアニズムやリベラリズム(選択の自由、平等)で考えることも、限界がある。
道徳や価値観は人によって異なるが、その差異を無視するのではなく、個別のテーマについて議論を深めることで、共通善を探っていくことが必要だ。
分断が進む社会での示唆にも富む名著。
日本はアメリカほど分断が進んでいないと実感したので(富裕層も公立の学校に行きたがる、公営の病院が機能しているなど)、維持されてほしい… -
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購入済み
悲観的絶望的な記述
長大な著書であり 膨大な実例を挙げて不平等.格差の変化の実情 原因について論じている。かなりの箇所で同じエピソードの繰り返しがあり「冗長」との印象を抱いた。
しかし、印象に残る箇所 感銘を受けた箇所も数多くあった。例えば下記のような文章である。
歴史的に見れば、格差の是正 平等化には黙示録の四騎士黙示録の四騎士(戦争 革命 崩壊 疫病)による大惨事が必要であった。黙示録の四騎士のうち平等化に一番貢献したのは一番多くの割合の人を殺した「疫病」である。労働者が減ると労賃が上昇し、格差が解消してゆく。
現在の日本の労働者減も、移民による労働力補充などをしないと労働力不足による賃金向上が実現でき、格 -
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誰にでも平等に機会が与えられているが故に
学歴が高い人は努力した人
学歴の低い人はチャンスがあったのに掴まなかった人
といった評価がなされる。
身分制度があった頃は、自分の不遇な境遇を制度のせいにできたが、能力主義の現代では、自分の不遇を自分のせいにできてしまう。
それが昨今のエリートとブルカラーの軋轢を生むというのは納得である。
とはいえ、学歴の高い人は経済的に恵まれた家庭である傾向が高く、そもそも努力できる力というのも先天的なものである可能性も高い。
それなのに、学歴の高い人はあたかもその個人の努力だけで勝ち取ったと評価し、恵まれた職業につけるようなシステムは、それこそ差別的と感じる。
必 -
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正直なところ読むのに苦労した。理解しきれていない部分もあるので何回か読み返して理解を深めたいと思う。
アメリカンドリームに代表される能力主義は本当に称賛されるべきことなのか、という問いに対してアメリカの政治家、経済学者の発言や、過去の事例を参照しながら考えを述べていく内容。
個人的に興味深いと感じたのは、学歴偏重主義の話。国を統治する上で必要なのは名門大学の学位を有していることではなく、「実践知と市民的美徳」であるという主張には説得力があると感じた。(事実ワシントン・リンカーン・トルーマンは大学の学位を持っていない。)
アメリカの話がメインではあるが、日本に置き換えられることも多いので、読んで -
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ネタバレ2012年刊。
それをお金で買いますか?というテーマの一例…
・刑務所独房の格上げ…一晩82ドル
・インド人代理母による妊娠代行サービス…6250ドル
・米国移住権…50万ドル
・欧州で企業が1トンの炭素を排出する権利…13ユーロ
・製薬会社の安全性臨床試験で人間モルモット…7500ドル
この世であらゆるものにプライシングされ、お金さえ払えば大体のものは買えるのだ、という態度について考えさせられる。
いい指摘はしているが、翻訳本なので読みづらく、読書中何度も眠くなった。
機会あれば再読して価格をつけることのモラルについて考えたい。
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Posted by ブクログ
アメリカのジャーナリスト「アラン・ワイズマン」のノンフィクション作品『人類が消えた世界(原題:The World without Us)』を読みました。
「人類消滅後―私たちの家や町は、地球はどうなるのか?」というキャッチコピーに惹きつけられ、壮大な未来予測を知りたくなって買っちゃいました。
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『TIME誌』が選ぶ2007年ベストノンフィクション第1位!
もしある日人類が忽然と消えたら、その後の地球には一体何が起きるのだろう。
地上を覆う人工物、自然、生命がたどる運命は?
私たちが環境に与えてきたダメージはどう癒えるのか?
そしてこの星が -
Posted by ブクログ
けっこう前に出た本だが、普遍的なテーマを扱っているので、今読んでもいろいろと考えさせられる。
これまで価値のなかったものに値段がつけられ、需要と供給が生まれたケースは、今も増え続けていると思う。
本の中で扱われた列への割り込み、命名権などは、今日本でもそれほどの忌避感もなく受け入れられているような気がするし、自分自身、ユニバーサルスタジオでファストパスを買うことや、映画館で少し高い値段を払って周りの人が気にならないボックス席をとることを、それほど疑問には思わずに過ごしている。けれど、それがもともと無料の、慈善事業コンサートなら同じことは思わない。似た事柄でありながら、その溝は以外に深い。裏を返