上橋菜穂子のレビュー一覧
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連れ去られたユナを追う途中で、矢に射られ意識を失ったヴァンが復活。
火馬の民とまみえ、ヴァンを塩鉱で噛んだ犬たちがどういう生き物なのかを知ることになる。
一方、ホッサルたちは黒狼病の治療法を求め、沼地の民の居住エリアへと来ていた。
土地を奪われ、自分たちの大切な物を失くさんと蜂起する火馬の民。
かくや、現状維持でことを荒立てたくないアカファ王。
侵略してくるムコニア帝国。
この国は、あちこちに火種があり、不満があり、憂いがある。
人には人の数だけ考えや正義があり、それを貫くがために戦い疲弊していく。
現実もそうだ。
天啓だと信じたい物を信じ、突き進む先には、大概碌なことがないもんだ…
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Posted by ブクログ
鷹狩りの席に黒狼たちが乱入。
次々と噛まれたり引っ掻かれたりとしたものが、その後、病を発症し死んでいく。
その中で、アカファ人だけは病への抵抗をみせる。
その差が一体なんなのか、黒狼病とはなんなのか、ホッサルは立ち向かっていく。
一方、ヴァンはユナと名付けた女の子と一緒に、途中で助けたトマの家で暮らしていた。
飛鹿の面倒や指南をしながらも、黒狼病の噂を耳にし、また自分自身が変容している感覚にも襲われた時、
谺主からの使者がやってきて、ユナと二人で会いにいくことになった。
コロナ禍を過ごした日々を彷彿とさせる描写の数々。
なんだこれは、コロナじゃないか、となんど思ったことか。
もちろん、人か -
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Posted by ブクログ
私の中ではバルサとエリンの2つのお話だけでもう確固たるものがある、この作者さん。
その初期の作品であるこの本は、先日のフォローしている方のレビューを読んで手に取った。
亡き母から人の心が聞こえる〈聞き耳〉の力を受け継いでいる小夜、この世と神の世の〈あわい〉に棲む霊狐・野火、森陰の屋敷に幽閉されている少年・小春丸、ある夜、この3人が偶然出会ったところから始まる物語。
彼らは隣り合う2つの国の争いに巻き込まれていくが、過去の因縁の渦に巻き込まれながらも懸命に生きようとする小夜に、使い魔として生きながら彼女に寄り添おうとする野火、彼に毒づきながらも理解を示す玉緒の変化など、それぞれの健気な心情と行 -
Posted by ブクログ
前2巻で一旦完了した物語。少女から大人への成長の物語として。王獣と呼ばれる強大な生き物を操る能力を開発しながらも、政治的に利用される恐れとの狭間で悩みゆく物語として。ひとつの国の中で重要なキーパーソンとなっていく中で、正解の無さに悩む物語として。心ならずの面もありながら、前巻では流れを大きく変える重要な行動を起こし、多くの人を助けた主人公。その10年後から物語は動き出します。
この巻では、平穏に留まっていた主人公の世界が、その国をめぐる周囲の状況によって、否応なしに渦に巻き込まれようとしていくように物語が動いていきます。禁忌を犯さずに現在を止めておくことが正解なのか、止めようのない大きな流れに -