折原一のレビュー一覧
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ネタバレ○ 耳すます部屋
ゆかりという母子家庭の子どもを預かった久恵が,ゆかりを殺害してしまったように思わせておいて,実際は,ゆかりの母がゆかりを殺してしまったというオチ。久恵とゆかりの母である八重子が電話をしており,久恵が電話を切らずに話していたので,ゆかりと久恵の会話が全て八重子に筒抜けになっており,話を聴いて,娘が盗みをしたことを知った八重子がゆかりを殺してしまうという話である。「耳すます部屋」というタイトルは,八重子が電話でゆかりと久恵の会話を聴いていたことを示している。
○ 五十像
少年が犯人と見せかけて,五人組の大人が,少女を誘拐した誘拐犯だったという話。しかし,少年が単なる善人ではなく,最後の最後で少女に対し「付き合ってくれるかい」と問いかけ,少女の全身に鳥肌が立ったという描写で終わる。何とも言えない読後感の作品
○ のぞいた顔
夏美という自殺した娘の話を出し,房子という少女が,教師を脅そうとした話…と見せかけて実際はホラー?リドルストーリーのような結末だが,やや練不足か。
○ 真夏の誘拐者
誘拐。ただしメイントリックは母親がパチンコをしている間に,車ごと誘拐されたが,誘拐された段階で子どもが死んでいたという点。母親は自らの罪がバレないように,誘拐犯を殺害するが,勘の鋭い刑事が子どもの解剖をし,母親の罪を見抜いたような終わり方をする。なかなかの作品。
○ 肝だめし
ホラー。肝だめしで「死ぬほど驚かされ」,死んでしまった少年が,翌年の肝だめしで幽霊として驚かすという話。ショートショートらしいショートショート。
○ 眠れない夜のために
折原一らしい短篇。週間雑誌の読書投稿欄において,騒音についての投書がされるという話。読者コーナーの担当者が一方当事者だったという展開は,途中で読めてしまうが関係者が次々死んでいくというブラックな展開も折原一らしい。
○ Mの犯罪
連続幼女殺人事件の被害者のひとりと思われた少女が,実は殺人者であり,彼女の犯した殺人を目撃し,Mという男性に罪を押し付けた変質者を最終的に殺害するという話。折原一の作品に登場する女性は,なかなかの曲者ぞろいである。作品のレベルとしては中の下くらいか。
○ 誤解
猟銃による誤射殺人がテーマ。自分の息子が,いじめにより自殺してしまったことから,藤岡という男の依頼し,いじめをしていた少年を誤射殺人に見せかけ,殺人するように依頼した男の話。藤岡が脅迫をしてきたので,いじめをしていた男の父に手紙を書き,藤岡を殺させようとした。なかなか込み入った話。考えオチという感じ。でも,これは結構いい作品と思う。
○ 鬼
「ひろし」が行方不明になる話から始まる怪談話。百物語として怪談を続けるうちに,「ひろし」は存在し,「敏樹」という少年がいなくなる世界になってしまうという話。世にも奇妙な物語系の作品。デキは普通かな。
○ 目撃者
亭主を殺した妻が,目撃者を殺害するために,目撃者に懸賞金を払うとして目撃者探しをする話。目撃者が出てきたところで,目撃者を殺害するがその殺人を別の目撃者が目撃していて…と続く作品。あらすじだけ聞くと結構面白そうだが,実際は,それほど面白くない…。
連作でもなく,折原一っぽい底意地の悪い作品が10作ある。ここの作品のデキはそこそこだが,折原一好きなら十分楽しめるデキ。寝る前に読む小説向きではなさそうだけど…★3で。 -
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ネタバレ日本推理作家協会賞長編賞に輝くサスペンス。折原一らしく,多数の登場人物の視点からいろいろと謎が提示され,中盤のサスペンス部分はなかなかのもの
交通事故に遭い,記憶喪失になった謎の男「神崎一郎」の正体は誰かという謎。20年前の青葉ケ丘中学で,恐怖新聞を発行し,粛清をしていたのは誰かという謎。同窓会を妨害するために,野呂和男と喜多村冬彦を殺害した復讐者は誰かという謎。そして,青葉ケ丘中学の教師だった仁科良作の妻は誰かという謎。これらの謎が、畳み掛けるように構成される。しかし,真相が平凡。神崎一郎の正体は,都会から転校してきて,すぐに転校していった足立一郎。恐怖新聞を発行していたのは級長の秋葉拓磨。復讐者は,自殺した稲垣公夫の父であり,仁科良作の妻は,長谷川美鈴だった。
いずれも,ある程度ミステリを読んだことがある人であれば容易に予想する結末であり,ミスディレクションといえるものがない。叙述トリックを駆使し,作品がどんどん複雑になっていた折原一が,叙述のテクニックを利用し,サスペンスとして楽しめる出来とし,作品全体の作りをシンプルにした結果だと思われるが,どこか一つくらい,裏を書いても良かったのでは,と思ってしまう。折原一を初めて読む人が,叙述トリックの折原一の作品と期待して読むと拍子抜けするかも。ミステリ慣れしていない人が,先入観を持たずに読めば,楽しめるかも。
いじめ部分は全く感情移入できなかった。折原一はいじめられたことがないのかもしれない。米澤穂信のボトルネックや,相沢沙呼の午前零時のサンドリヨンなんかに比べれば薄っぺらく感じてしまった。
折原一らしく,サスペンスとして中盤部分までは十分に楽しめ,結末の意外性こそはないが,全体してこじんまりとまとまった作品といえ,駄作とは思えないので,評価としては★3かな。 -
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ネタバレ折原一による「○○者」と題する作品の一つだが,五十嵐友也は登場しない。シリーズでは,異色の作品。やりすぎと思えるほど複雑な構成で,はっきり言ってしまうとバカミス。
「誘拐者」というタイトルのとおり,新生児の誘拐事件が背景となっている。堀江夫婦から新生児が誘拐され、堀江夫婦の妻である堀江チヨも同様に「あすか」という名前の新生児を誘拐する。堀江チヨは,佐久間玉枝という殺人者が獄中で出産した子を養子として引き取った夫婦の新生児を誘拐しており,これが事件を複雑化させていく。堀江チヨは,「あすか」という本当の自分の子どもを求めて「あすか」という子どもの誘拐を繰り返す。この部分が既にバカミスっぽい。堀江夫婦の亭主である堀江幸男は,チヨが誘拐してきた子どもを「あすか」として育てるが,佐久間玉枝からあすかを守るために,あすかをアメリカに留学させる。堀江幸男は,家を出て月村道夫と名乗って生活をし,そこで小田切葉子という女性と付き合い始める。
叙述トリックとしては,玉枝とチヨを誤信させるというもの。堀江チヨも完全におかしくなっており,この堀江チヨの狂気も,折原一らしいといえばらしい。堀江チヨと佐久間玉枝という二人の狂気は,恐怖というより,そんなやついないだろう…。というバカミスっぽさにつながっている。折原一っぽさは満載で,やりすぎ感はあるが,バカミスとして見ればなかなかの出来か。★3かな。 -
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ネタバレ冒頭にバリンジャーの「歯と爪」からの引用が掲げられている。折原一の作品ということもあって,叙述トリックを駆使した作品であろうことは想像に難くない。
内容は,五十嵐友也というノンフィクション作家による作品という想定。五十嵐友也の視点,アルバイトの新聞配達員の視点,万引き現場から捜査中,取り調べ,裁判から刑に服するまで,氏名を名乗らなかった「沈黙者」についての描写,殺人者の視点といった視点から描かれている。
校長先生の家である「田沼家」で,一家のうち4人が惨殺される事件,同じ町内で起こった「吉岡家」の夫婦惨殺事件という二つの事件が描かれる。二つの事件の描写と,田沼家の生き残りである田沼ありさと立花洋輔による捜査が描かれ,その最中に名前を名乗らない万引き犯である「沈黙者」についての話が描かれる。
終盤に一気に真相が明らかになる。真相は,沈黙者は,田沼家で行方不明になっていた「ありさ」の弟ではなく,「ありさ」の父の田沼繁だった。田沼家事件と吉岡家事件の間に挟むことで時制を混乱させるが,実際は二つの殺人事件より遥か昔の事件という時制を誤認させる叙述トリックが使われている。
そして,吉岡家惨殺事件の犯人は,田沼繁だった。田沼繁が,かつて,自分の捜査をした警察官だった吉岡に復讐をし,吉岡家の長男である吉岡弘が,その復讐として田沼家を惨殺したのだ。田沼繁が,懲役6年の実刑を受けてまで,氏名を明らかにしなかったのは,自分の祖母に辛い思いをさせないためだった。
折原一が実際に裁判を傍聴し,知った氏名を黙秘した男の事件をベースに描かれた小説とのことだが,田沼繁が,氏名について沈黙を守った動機が,おばあちゃんのためというもので,イマイチ腑に落ちない。二つの惨殺事件の真相が犯人が別々でそれぞれが復讐だったというのは,衝撃的ではある。ただ,やや動機が弱いという気もしてしまう…。読んでいる途中は,どういった真相なんだ?とワクワクしたが,オチが途中の盛り上がりほどではなかった。折原一の作品はこういう傾向が強い。駄作ではないし,★3かな。 -
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ネタバレ折原一らしく,叙述トリックが仕込まれているが,入り組んだ真相というほどではなく,比較的分かりやすい構成になっている。第一部として書かれている「螺旋館の殺人」も、第二部として書かれている「盗作のロンド」のいずれも,若い頃に小説家を目指した田宮老人が自費出版として出した本の内容だという構成。最後の最後に,折原一がこの作品を同人名義で発表したというオチが用意してある。
第二部では,作中で沢木という編集者が田宮になりすますという構成になっている。このあたりだけが,折原一らしい複雑さだったが,それ以外の部分は,第一部の原稿すり替えのトリックも含め,やや平凡なデキ。読みやすい,軽い文体や,軽いキャラクターなど,エンターテイメントとしては十分楽しめるので★3で。 -
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清水潔さんの北関東連続幼女誘拐殺人事件を追った「殺人犯はそこにいる」 と同じ事件をもとにしている事に興味を持って読み始めたのだが、ほぼ同時に図らずも寝屋川の中1遺体遺棄事件が起きてしまった。
人間の中に潜む狂気を押さえ込む事が出来るのは最終的には本人自身でしかない。
けれども押さえ込む事が出来ない環境は社会の歪みが大きく関係するのだろうか。
ごく普通と見える中学生が夜中に遊んでいても平気な世の中、見知らぬ人間が周囲に現れても声をかける事もしない、人間臭い関係を持つ個人商店よりもコンビニやスーパーが気楽と思えるそんな社会と人間が今の社会の基本のようになっているのは歪みではないだろうか。 -
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日本ミステリ作家の中の職人の中の職人、彼の名こそ「折原一」
そんな職人作家の中篇、元々は山で非業の死を遂げたクライマーの追悼集からインスパイアされたとのこと。
文庫本を読んだが、初版は実際の追悼集を模した体裁をとっており、別冊を含めた2冊での出版だったとのこと。そのほうがまさに折原一っぽくて、文庫だと面白さ半減ってところだろうと思う。
個人的には安定の折原なので、伏線等の仕掛けも含めて、満足はした。ただ信者以外にはどうだろうか?誰もは楽しめる1冊とは言えるだろうか?まぁ自分は信者だからどうでもいいが…
いやそれなりに存在する信者のためにも、折原氏には作風をブレることなく邁進していただきたい!と思う。まだ~者シリーズは未読がけっこうあるので読んでいきます。