折原一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
好きな作家がいたとしても、ファンレターを書くまでのめりこんだことはないなあ・・
芸術家というのは、コアなファンが多い。
そのジャンルは美術であり、文学であり、音楽であるかもしれない。
そしてファンの願望はやがて大きくなり、現実と理想の区別がつかなくなったり、本人に会いたいとか考えてしまうのだろう。
この小説は、覆面作家である西村香(中年男性と思われる)と、そのファンが引き起こす短編集。
そして面白いのは、ファンレターとその返事のやり取りの文面が掲載されることによるリアリティ。
特にファン心理が、あるタイミングで勘違いとなり、それが憎悪になったり・・恐ろしい。
-
Posted by ブクログ
ここしばらく、折原さんの本を讀んでゐなかつた。
折原一といへば、やはり敍述トリックなので、地の文では誰のことを描寫してゐるのかをいつも注意しながら讀んでいつた。
それでも、やられてしまふのだから、もはや折原ワールドに身を委ねるしかない。
今囘は5つの誘拐と8つの殺人事件が起きるが、それぞれ誰が犯人なのかは最後の方までよくわからない。
といふか、犯人はとある人物であるかのやうに書かれてゐるのだが、それがその通りなのかは、なかなかわからないしくみになつてゐる。
それにしても、本書では折原一にしてはめづらしく、胸の惡くなるやうな描寫が多い。
現實世界の出來事でなくてよかつたと、しみじみ思ふ。