朝吹真理子のレビュー一覧
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ネタバレ「永久子は夢を見る。貴子は夢を見ない」という出出しが凄く魅力的で、その後の展開に大きな布石と仕掛けがなされていたのが素晴らしいと感じました。
記憶というあまりにも不確かなものを、ひととき共に過ごした二人の女性が共有し合う様子をそばで見させて貰った様な感覚を持ちました。
初めは永久子側が夢と現実の境界が曖昧なのを貴子の記憶が補正する話かと思っていましたが、物語中盤で、非現実的なことが起こるのが貴子であったり、いるはずのない永久子を服装まで言い当てたりと、貴子が夢を見ないのは、見ている自覚がないだけなのかもしれない、という展開になって驚くと共に、自分の読解力が追いつかず混乱させられました。
通しで -
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Posted by ブクログ
綺麗な作品だなと思った。幼い頃の夏、限られた日数を共に過ごした永遠子と貴子の二人が、その夏の思い出の残る家を解体することをきっかけに再会するという大きなストーリーの中で、それぞれの今と記憶の中の心情や会話が織り重なって、まさに人が記憶を呼び起こす時の思考のちぐはぐさ、過去の感情と今の心の声が重なるような感じが表現されているなと思った(人によって少し記憶がずれているのもリアルだなと)。幼い頃の夏の思い出というのは大人になっても残り続けるもので、私も一時帰国で訪れた旅館の近所のお祭りでとった金魚を旅館に預けたことや(思い返すとだいぶ迷惑だな)、今は亡き母方の祖父とカードキャプターさくらの劇場版を見
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Posted by ブクログ
単なる夢日記ではつまらない、ということで一ひねりした企画もの。
細野晴臣が見た夢37編と、その中から10編を基に朝吹真理子、リリー・フランキー、塙宜之の3名が短編を創作している。
遊び心を楽しむ本なのでしょうが、土台が夢なので支離滅裂でエログロも混ざって気色悪い面もある。
物理学者のファインマンさんも、確か見た夢を記録していた時期があったはず。
皆同じことを考え、実行しているのですね。
私も目が覚めた時に見ていた夢をどこまで思い出せるか挑戦することがある。
同じような設定の夢をよく見ていると感じる。
以前の夢と同じ場所で同じように困った状況に追い込まれたりする。
たいてい予期せぬことが起こ -
Posted by ブクログ
さらさらした文章
朝吹真理子さんの本を読むのは初めて。松濤美術館の同じ企画展を同じ日に見ていたり、わたしが根津美術館に行った日に、朝吹真理子さんが日経の日曜版に根津美術館周辺エリアに関するエッセイを書いていたり、何かと縁があるように思えて気になっていた。
場所と記憶の関係について、わたしも幼い時期に住んだ社宅を頭の中でありありと思い描けるのに、もうとっくに取り壊されて低層高級マンションになっていることを不思議に思ったことを思い出しながら読んだ。
なんでもないことがさらさらと重厚に描かれている。
不思議な描写の部分を咀嚼しきれなかった。
鉄線柄の浴衣いいなあ。 -
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芥川賞作品ということで手に取る。大学在学中の作品のようで20代でこのような文章を綴れる語彙力と描写力にこの方がまだ短い人生の中で一体どれだけの本を読んだのだろうと感嘆していました。幼い頃毎夏葉山の別荘で過ごした「きことわ」のそれぞれの記憶が25年を経て同じ別荘で鮮明によみがえる様がこれでもかと綴られる。記憶というのは五感に刻まれ深い場所にあっても何かの刺激と共に再び目の前にひっぱりだされるもの。同じ風景を見ていても人により記憶されるものは違う。一時濃密な時間を過ごした相手と何十年先に再会すると私ならどうなるだろうと考えて余韻を楽しみました。
因みに話の中に現在の北極星はこぐま座だがずっと後の北 -
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一つ一つの話題はあまり深みに入り込まず、それぞれのテーマ毎の対談者が連想する関連する本を上げていくような感じで進む。友達同士で、あの本って面白いよねーと語り合っているような雰囲気。特に議論が入り組むようなところがなく、この本はすごい面白いのかなと異様にひきつけられることはない。総花的にあげられた中から、よさそうな本を読んでみようかなと思うような、雑誌に表紙の絵入りで載ってたら、いい企画だなーと思うだろう本。単行本として読むとすこし軽く、物足りない気がする。
ただ、単純にいって、なぜ今の時代でも谷崎が、普通にエンターテイメントとして楽しむことができるのか。アリスの永遠性。など。名作として考えられ -
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よく本を読むひとはあまり本を読まない人によく聞かれると思う。〇〇の本が好きなんだけどそれ系ないか、と。難しいよね、例えばこの本にもあるけど伊坂幸太郎が好きな人ってたくさんいる。伊坂幸太郎が好きな人に薦める本ってなるとわたしは東野圭吾や湊かなえを薦めてしまうけど、本書では映画なされたベストセラーとしてハニフクレイシ、アーヴィンウェルシュ、カズオイシグロなどを挙げている。伊坂幸太郎が好きと言うよりも映画化されてる面白い本というニュアンスだろうが少し違和感。
逆に谷崎潤一郎の痴人の愛からはじまり、三島由紀夫、江國香織。大島弓子から、萩尾望都、ミランダジュライというセンスはわかる。好きだわどれも。