感情タグBEST3
Posted by ブクログ 2018年04月11日
過去と現実が厳密に切り離されることなく、夢の話かと思いきや、昔の自分に思考が飛んで行ってたり、ふわふわたゆたいながら、大枠としては25年ぶりの邂逅が描かれる。これを読みながら、”あ、ひょっとして『仮往生~』で描かれていたのって、こういうことだったのかも”って、ちょっとかの作品に近づけた気がしたりもし...続きを読むて。まあでもあれはあれ、これはこれ。思わずうっとりするような素敵な情景描写をふんだんに散りばめて、ちょっと不思議な余韻を残しながら進行する、きこととわの物語。中編小説くらいのボリュームながら、その分量以上に濃密に、2人と寄り添える作品。素晴らしいです。
Posted by ブクログ 2022年10月08日
きました、The芥川賞作品。二人の女性が再会することで生まれるコミュニケーションと気持ちの移り変わりという言い表すのが難しい感情を汲み取る表現はまさに芥川賞。ドップリとハマれる作品は休みの日には嬉しく仕事の日は避けたい。気持ち持っていかれるから。
Posted by ブクログ 2022年07月17日
多分「楽しむ」よりも「感じる」小説なのかもしれない。
貴子(きこ)と永遠子(とわこ)が葉山の別荘で同じ時を過ごし、別荘の解体に伴い25年後に再会する。簡単に言えばそんな話。
冒頭の「永遠子は夢をみる。貴子は夢をみない」という一文があるのですが、最後まで読み、これは貴子の夢だったのでは?とも思いました...続きを読む。過去と現在が行き来したり、重なり合ったり重なり合わない記憶、「髪」の表現の妖艶さ、生と死・・・。生々しい官能的な世界に、私自身、彼女らの夢の中に連れ込まれてしまいそうな危険な感覚を覚えた。魅力的な作品。
Posted by ブクログ 2018年12月11日
朝吹真理子さんの言葉を読んだのは確か「羽生善治 / 戦う頭脳」で羽生善治×朝吹真理子両氏の対談でした。これは朝吹真理子さんの文章ではなく対談なので、多少修正していようとも基本は口述だったはずなのですが、読めば分かると思いますが「この人は何者だ?」と思う程会話自体が美しい。丁寧な言葉を喋る人だとかそう...続きを読むいう次元じゃない。なんだか羽生名人が朝吹真理子さんという文学作品の登場人物と対談しているような現実離れした美しい話し方で、それに惹かれて代表作だと言われる芥川龍之介賞受賞の本作を読みました。
起承転結がどういうことではなく、流れている文章自体が美しい、それ自体を楽しむような美しい小説でした(地の文には一体合計何回改行を入れてるんだろう?と思う程に少ない。Kevin SaundersonがKraftwerkのMan-Machineアルバムを聴いた時に「Kraftwerkにはシンバルがない」と言ったものに近い感動を感じた。強引につなげてますが本当にそう感じた)。文章に対する装飾がほとんど皆無で、ず〜っと上質なAmbientとかを読まされている気分。ポワポワ。
重度の睡眠障害者は夢と現実の区別がつかなくなった経験があると思う。これに不安障害が繋がると現実が現実を超えてしまうことがあり、これが本当にきつい。本書は夢と現実の垣根を超える小説ですが、あの夢と現実の超越が本書ほど美しければよかったのにとか、少なくともそうなるようにイメージして睡眠障害を迎えられたのではないかと思うと時期的に少し惜しい思い。
美しい小説だ。
Posted by ブクログ 2023年12月12日
この方の作品のファンになってしまいました。
独特な文学的な文体で、現実なのか夢なのか、ひらがなもあえて多くしてるんだと思うんどけど、また違った懐かしい描写に成功している。とにかく描写が懐かしいというか、なんとも芸術的な気分にさせる。
今月表参道の山陽堂書店でで個展もやってるらしいので行きたいとお思い...続きを読むました。
Posted by ブクログ 2023年08月06日
僕にはとても読みづらい作品で、125ページの中編で読むのに6日間もかかった。もちろん時間の合計ではなく、かかる期間のことだ。
知らない言葉だらけで、調べたら源氏物語で使用されたとか、とにかく通常に使う言葉の代わりに普段使われない言葉に置き換えて使用されている。
教養の高さは感心するが、読む側のレベル...続きを読むが問われる。ひらがなも多く使われ、漢字で意味を感じ取るのに慣れた僕にとってこれもまた苦労した。
とこんなに文句を言うけど、やはり文学として評価されるべき作品だと感じた。知らない言葉を知っている言葉へ、ひらがなの一部を漢字へ置き換えたら、雰囲気そのものも変わってしまうかもしれないので、この雰囲気を出したいからこそこのような書き方になっているのも納得出来たし、主人公2人の裏にいる記憶にしか出てこない2人のお母さんもまた主人公で、短い数日間の話だが、4人の女性のそれぞれの人生、親子の関係性、文章としては軽く触れるのみだが、その度考えさせられる内容ばかりで、読んでいるうちに、なんか不思議な感情になれるという技術力も凄いと思う。
ある方の書評を見ると、ジブリの映画のような気持ちになれると。まさにそれ!と、とても共感した。時間というテーマをこのような形で表現出来るという発想も、短いからこそ決して簡単ではない構造が崩れずに出来たところも素晴らしい。
Posted by ブクログ 2022年04月07日
2011年芥川賞受賞作品。現在と過去、現実と記憶がないまぜになって「いま・ここ」の自己が希薄化し、二人の女性の身体は境界線を失って混濁する。他者は異物として対置されず、それどころか自己の一部となる。女性性を際立たせるための男性の介在はもはや必要なく、男性の主要人物たちはアブストラクトな背景と化す。同...続きを読むじことが男性の身体で可能なのか。文学における男性の身体は依然、他者=女性という支持体を必要とするのだろうか。
Posted by ブクログ 2020年05月10日
記憶のあいまいさ。
過去の積み重ねが今であるなら、
今ある自分のいかにあいまいなことか。
人から教えてもらって、好きになった
アーティストのポスターが
急に目に付くように感じる。
人間は、脳のキャパの問題から、
目に入る情報のほとんどを
切り捨てている。
同じ道、同じ時間を共有してるはずなのに...続きを読む、
全く違う記憶を生きている。
人はよく、過去は変えられないが
未来は変えられる、という。
実は、過去も変えられるのだ。
全ては、今ここにいる自分に
引き寄せられる。
過去も未来も、今の自分の手の中にある。
Posted by ブクログ 2020年04月17日
千と千尋の神隠しのような、
日本古来の時間の流れかたを感じた。
効率化、時短、資本主義そんな現代を生きるためのワードをちょっと横において読みたい一冊。
時の流れはいつも取り止めもなく掴めないけれど、この本の中に少しだけ閉じ込めてくれている気がした。
Posted by ブクログ 2019年10月31日
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【読書の時間】
とりたてて、特別なことが起こるわけではないけれど、心が動く。
子供の頃の時間を共有しつつも、突然縁が途切れ25年間会うことのなかった2人が、別荘の取り壊しを機に再開する。
すごく、淡々としているんだよね。
でも何故か胸がギューーーっとなる。
なんでかな。。...続きを読む
「わーー!久しぶりー!元気だった!?」
そういう騒がしい再開の喜びが溢れる、ような感じじゃなく。
なんだかひそひそ話で昔話が語られているような。
ふふふ…みたいな。
静謐な空気感が漂う。
2人の間で覚えている話が食い違ったり、そういうことってよくある事だとは思うんだけど、このお話の空気感の中ではそれも現実と夢の境目がふわふわとしていて不思議な感じ。ちょっと怖いことが起こったりもするけど、それも白昼夢のような、そんな感じ。
懐かしい日々を思い出すときに胸が痛くなるのは、貴子の母の春子が亡くなってしまっているからなのかもしれない。
思い出が美しくて懐かしくて優しいのと同時に、1つの喪失感がある。
春子が2度と戻らないという事が、過ぎ去った時間が永遠に過去のものっていう感覚を強くするのかも。
Posted by ブクログ 2019年09月05日
良かった。何がどう良かったのかが私には上手く言えないけど。こういう小説って探すの難しい気がするから出会えたことがまず嬉しい。
その「こういう小説」って、誰にでも書けるものじゃないと思うんよねえ。だから凄いなと思う。最初から最後までちらつかせ続けるキーワード(夢とか2人の髪とか)とか、何かこう上手いっ...続きを読むていうのか。凄いなあと思う。こういう小説を書けることが。芸術。文字で綴られる芸術ってこういうことなんじゃないんかな。
Posted by ブクログ 2018年10月26日
さまざまな事物の表現と漢字のひらきかたとそれらを滞りなく配した文芸(文章芸)らしい文章
小説としての主題選定もそれを邪魔しないてきとうな塩梅だが
同じような「文芸」でも『乳と卵』のほうがより噛み合っている印象
Posted by ブクログ 2018年10月14日
時間と年月と世界と、夢と記憶と現実と、自分と周りの人と世代と、すべてが絡まり合って溶け合って一つの認識となり、ただ古代から時間は流れる・・という感じの静謐な世界。
Posted by ブクログ 2024年01月18日
144回(2010年下半期)芥川賞受賞作
純文学ってこういう作品のことをいうのかな
絵画のような文学
泉鏡花を読んだ時
光がきらきらと輝いている
風景が脳裏に浮かんだ
ゆめとうつつ
現在と過去
あなたとわたし
の境界線が消失していて
でもその境界線を探さなくてもよくて
ただ描写を味わいながら読...続きを読むみ進んでいく感じ
Posted by ブクログ 2023年04月15日
第144回芥川賞受賞作
夢と現、過去と現在を混在させた曖昧な世界を調和させる表現力がすごい。子どもの頃の不確かな淡い記憶や微睡むような感覚。誰しも感じたことがあるけど、言葉にできない塵芥が物語になっている。
末尾の町田康さんによる解説が秀逸。
Posted by ブクログ 2023年04月02日
「永久子は夢を見る。貴子は夢を見ない」という出出しが凄く魅力的で、その後の展開に大きな布石と仕掛けがなされていたのが素晴らしいと感じました。
記憶というあまりにも不確かなものを、ひととき共に過ごした二人の女性が共有し合う様子をそばで見させて貰った様な感覚を持ちました。
初めは永久子側が夢と現実の境界...続きを読むが曖昧なのを貴子の記憶が補正する話かと思っていましたが、物語中盤で、非現実的なことが起こるのが貴子であったり、いるはずのない永久子を服装まで言い当てたりと、貴子が夢を見ないのは、見ている自覚がないだけなのかもしれない、という展開になって驚くと共に、自分の読解力が追いつかず混乱させられました。
通しで2回読みました。
改めて読んだ感想は現実、記憶、夢、が折り重なって展開されていた様な気がします。どこがどれかというのは分かりませんでしたが、それこそが作者が使えたかったことかもしれません。
Posted by ブクログ 2023年01月23日
2010年度第144回芥川賞受賞作。
別荘で出会った二人の少女が25年後に別荘の解体をきっかけに再会する。二人のかみ合うようなかみ合わないような記憶とこの25年の間に起きた出来事、夢と現実の狭間を通して二人の心は再び通い合っていく。そんな姿を描いた作品。
現実的な作品とは違うため、そうした作品...続きを読むに慣れている人は本作の世界にはなかなか入りにくい部分があるかもしれない。じっくり読まなければ、この小説の世界観には浸れない。
Posted by ブクログ 2023年01月03日
綺麗な作品だなと思った。幼い頃の夏、限られた日数を共に過ごした永遠子と貴子の二人が、その夏の思い出の残る家を解体することをきっかけに再会するという大きなストーリーの中で、それぞれの今と記憶の中の心情や会話が織り重なって、まさに人が記憶を呼び起こす時の思考のちぐはぐさ、過去の感情と今の心の声が重なるよ...続きを読むうな感じが表現されているなと思った(人によって少し記憶がずれているのもリアルだなと)。幼い頃の夏の思い出というのは大人になっても残り続けるもので、私も一時帰国で訪れた旅館の近所のお祭りでとった金魚を旅館に預けたことや(思い返すとだいぶ迷惑だな)、今は亡き母方の祖父とカードキャプターさくらの劇場版を見たこと等思い出したり。朝吹真理子作品の匂いがしてくるような表現がすきなのですが、自分の幼い夏の匂いと、作品中の表現から想起される匂いとが混ざって不思議な感覚になりました。
Posted by ブクログ 2022年06月17日
貴子と永遠子。二人は7歳違い。25年前に葉山の別荘で同じ時を過ごした。それから25年、再開した。柔らかい文章で不思議な感覚になる。あれは夢だったのか現実だったのか錯綜する。懐かしく切ない子供の頃の話に胸がキュンとなった。
Posted by ブクログ 2022年01月03日
さらさらした文章
朝吹真理子さんの本を読むのは初めて。松濤美術館の同じ企画展を同じ日に見ていたり、わたしが根津美術館に行った日に、朝吹真理子さんが日経の日曜版に根津美術館周辺エリアに関するエッセイを書いていたり、何かと縁があるように思えて気になっていた。
場所と記憶の関係について、わたしも幼い時...続きを読む期に住んだ社宅を頭の中でありありと思い描けるのに、もうとっくに取り壊されて低層高級マンションになっていることを不思議に思ったことを思い出しながら読んだ。
なんでもないことがさらさらと重厚に描かれている。
不思議な描写の部分を咀嚼しきれなかった。
鉄線柄の浴衣いいなあ。
Posted by ブクログ 2021年07月25日
芥川賞作品ということで手に取る。大学在学中の作品のようで20代でこのような文章を綴れる語彙力と描写力にこの方がまだ短い人生の中で一体どれだけの本を読んだのだろうと感嘆していました。幼い頃毎夏葉山の別荘で過ごした「きことわ」のそれぞれの記憶が25年を経て同じ別荘で鮮明によみがえる様がこれでもかと綴られ...続きを読むる。記憶というのは五感に刻まれ深い場所にあっても何かの刺激と共に再び目の前にひっぱりだされるもの。同じ風景を見ていても人により記憶されるものは違う。一時濃密な時間を過ごした相手と何十年先に再会すると私ならどうなるだろうと考えて余韻を楽しみました。
因みに話の中に現在の北極星はこぐま座だがずっと後の北極星はそうではないと記載されていて死ぬほど驚いた(これってみんなが知ってることなの?)
芥川賞、私設図書にて
Posted by ブクログ 2021年05月02日
読書開始日:5月1日
読書終了日:5月2日
所感
難しかった。
全体通してずっと貴子、永遠子の夢の中にいるようだった。
安定しない。
綺麗な表現と難しい漢字もあいまり、常に朝靄がかかっているような感じだった。
解説が欲しい。
Posted by ブクログ 2021年02月26日
曖昧の美学か。過去のことは美化する。
親しい人が亡くなったら引越すのか。
夢の中の記憶と過去の記憶が交差して今が動き出す。なにも起きない日常。
Posted by ブクログ 2020年04月26日
ふわふわとゆったり時が流れていく不思議な感じ。
繊細で丁寧な言葉遣い。
自分の夢と母の夢が繋がったこと、一度あったな。
小物も同じで驚いたけど、すごく怖かったから百花の気持ちが分かる気がする。
月は地球から
「年間、約三.八センチ地球から遠くなるの。」
Posted by ブクログ 2020年03月12日
多分、好きな人はとても好きな感じなんだと思います。私はそれほどでもない感じでした。細かな描写とか言葉の遣い方などは面白く気持ちの良い読後感でした。
Posted by ブクログ 2019年05月24日
引きずり込まれる文体。時間と空間を一緒に移動しているような気分になりました。町田康氏の解説がいつになったら、作品の解説をはじめるのだろうという状態で面白かったです。
Posted by ブクログ 2018年10月16日
別荘で共に夏を過ごした小三と高一だった貴子と永遠子の二十五年後の再会。夫と小三の娘と暮らす永遠子の家族模様に年月の流れを思う。特別なことは起こらないまま記憶を共有する二人が穏やかな文章で綴られて、たまに出る古風な言葉遣いで独特な雰囲気な一方で、身近に感じる描写たちに引き寄せられる。薄いのにみっしり。
Posted by ブクログ 2018年11月17日
幼少時に別荘で毎年会って遊んでいた貴子と永遠子。貴子の母の死を境に音信が途絶えていた。別荘を解体して土地を売却することになり、25年ぶりに思い出の別荘で顔を合わせた。
現在と思い出が同じ過去形で絡まり合って描写される。絡まり合う貴子と永遠子の髪の毛のように。
これぞ純文学という小説。読者を楽しませ...続きを読むる意図は微塵もない。ただひたすら状況を描写する。それを読んで読者の心が動くかどうか。動くところもあったし、そうでないところもあった。全体としては物足りなかった。
文章はとても上手で綺麗で、風景が心に浮かんで来やすい。
貴子を最後まで「たかこ」と読んでしまい、あ、きこだった、といちいちつっかかった。これがなければもっとなめらかな読書になったと思う。