朝吹真理子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ人を好きにならないうみと結婚したアミが、いつしか彼女を愛してしまった葛藤が切なく心に刺さる。好きなのに側にいられない理由はいくらでもあり、相手にも同じ重さの愛情を求めてしまうからこそ、拒絶されたときの痛みを恐れて距離を置いてしまう——そんなアミの心理が垣間見れた気がした。
うみは愛着を持たないと言いつつも、アミが側にいる世界線を密かに思い描き、最後まで捉えどころがなくミステリアスだった。しかし、自身が過去に実父から受けた仕打ちを、今度は我が子が受けているのを目の当たりにし、寄り添う姿には確かな人間味が宿っており、彼女の内面にある温かさに惹きつけられる。
物語の途中でうみとアミの二人は絶縁してしまったのかと焦ったけれど、終盤で無事に再会を果たしていたことがわかり心底ホッとした。
静かながらも深い余韻の残る作品。 -
Posted by ブクログ
やっと読み終わりましたー!
手に取ってから読むまでかなり時間がかかってしまいました。
GOATという雑誌はわたしが読書楽しい!ってなり始めの頃に創刊して、まだ色んな作家さんに出会えてない、出会いの場を作って貰えた雑誌でもありましたし、読書の楽しみも改めて教えてもらえました。
そんな姉妹雑誌が出ると聞き、即買いました。
meetsと名前にもある通り、作家さんたちが出会って色んな事が生まれたり、
とても興味深かったです。
韓国文学や、歴史、そして色んな世界に行ったかのような物語たち。異世界… 満足感たっぷりでした。
わたしは、旅とはつまり未知なるアリを見ることであるがとても、面白かったです。
文字の書き方がとても面白く、その背景まで見えた気がしました。
あとは異世界をのぞくとの2作も好きでした。
読むのも時間かかったんですが充実感たっぷりの時間を過ごせました。 -
Posted by ブクログ
凄かった。エッセイというものをほぼ読んだことがなかった私にとって強烈な読書体験だった。
ほんタメというYouTubeチャンネルで紹介されており興味を持って読んでみた。これは、映像化はきっと難しい、本という媒体のみを通して伝えられる感覚だと思った。
共感できる部分も多く、一方で共感できなかったあの子の振る舞いはこんな感覚にルーツがあったのではと思い至るところもあって、強烈に胸に響いた。私の感じたもやもやを言語化してもらったようで嬉しさもあった。自身も女性性を元とした経験はポジティブ面、ネガティブ面ともにあり、同じような経験をした作家がそれをどう捉えるかを聞けたことが嬉しかった。
性に関する体験をもとに感情が描かれていて、一読するだけでは飲み込みきれなかった部分もあった。一作ずつ丁寧に読みといていきたい。 -
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吉田棒一「インフルエンズ」
吉田棒一、何となく知っていたけどえぐいっすね。こんなヘンテコな小節が許されるかよ!と怒鳴りながらめちゃくちゃ推してしまう、舞城王太郎、佐川恭一に続く奇人現るーーーーー
小田雅久仁「魑魅虫」
独特な語りと雰囲気はものすごく好きなのだけど、悪が集まり結局何が起こったのか、ニュアンスしか分からず……
冒頭、女性作家陣の全てのエッセイ、小説、ラフ画、対談、全て素晴らしかった。韓国に興味なくてもあっても、国を超えるとはどういうことは、戦争をするとはどういうことか、読み応えしかない。
全体的に、詩や短歌が挟まっていたり(どれも良い)、目を見張るような絵がページいっぱいに広がっていたり、捨てページのない文芸誌、堪能させて頂きました。
後ろ書きにも書いてあったように、電子書籍での配信などにもしっかり力を入れているようで、とても頼もしい。途中で滝口悠生がデータをどこに保存するか問題をしっかりとレポートしていてくれたのも、出版業界の現状が見れ、有益でした。出版したら是非皆さん献本しましょう -
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「私の身体」を「生きる」とは何だろう。いや、「私の身体」とは何だろう。そもそも、「私」とは何だろう。
各作家たちの切り口は様々だが、みな共通しているのが、己という存在を不可欠に構築するこの肉体というものの生物的な役割にも社会からの眼差しにもかなり戸惑い、苦しみ、受け入れたり受け入れられなかったりしながらどうにか生きている点で、強く連帯感を持ちながら読んだ。
痛ましさを感じたのが、執筆陣の女性たちはほぼほぼみな性被害の経験がある点。私にもあるし、私の友人たちもほとんどあると思う(学生の頃、痴漢が話題になったとき、その場にいた10人ぐらいのなかで痴漢に遭ったことがない子は1人しかいなかったことを覚えている)。この社会で、そうやって女性は、否応がなしに「私の身体」は本当に私のものなのかと、「私」がモノとして扱われ得るということに向き合わされてしまう。時には、まだ第二次性徴も迎えていないうちに。だからこそ、このようなアンソロジーが興味深い。
とはいえ男性視点の「身体」やその社会的表象については私にはわからない部分なのだが(この辺りのアンコンシャスバイアスについて、鳥飼茜さんとパートナーの方との会話が面白かった)。男性作家たちに、同じテーマでアンソロジーを書いてもらったらどのようなものが生まれるのだろう?と好奇心を抱く。 -
Posted by ブクログ
『男は、家族のギリシャ赴任中にうまれたとかで、アテネと読むことができる雅典という、うるわしげな名前があったけれど、ともみの女友達からは、セグウェイと呼ばれていた。 ともみも過去を振り返るたび、セグウェイとつきあっていたころは云々、と男をあだ名で呼んでいたために、雅典に会っても、セグウェイと心で思っていた』-『「セグウェイはかわいい男」朝吹真理子』
細野晴臣の夢日記は、夏目漱石の「夢十夜」の「こんな夢を見た」に倣って、どれも「夢を見た……」と始まるナンセンスな夢のお話。夢なのでとりとめもなく、起承転結もない(本人曰く脚色は一切なし)。漱石の夢十夜はもちろん斬新な小説ではあるけれど、極端に言えばどれも真面目腐った線香臭い話ばかりであるのとは対称的に、不真面目で何だか得体の知れないアートのような味わいがある。まあ、それを読むだけでいいのなら「ほぼ日」のアーカイブを見ればいいのだし、それならイラストはカラーで見応えもあるし(一部フラッシュのアニメーションに関しては、書籍では二次元コードで動画に飛ぶという親切なアフターケアがある)。なので、これは単純に朝吹真理子がどんな話を書いているのかに興味があって手にした本ということになる。
細野晴臣の元の夢日記に啓発されて、朝吹真理子、リリー・フランキー、ナイツ塙亘之が三話ずつ(ただし朝吹真理子の三話目は二つの夢物語を下敷きにしているので二夜分と勘定)書き下ろし、合計九話(十夜)を加えたもの。「夢十夜」とはあるけれど、元の夢日記は三十七夜の物語(ほぼ日上では幻の第三十八話「ハーレム・ミュージシャン」のイラストもあり)。本の構成では夢日記が後になっているけれど、先ずはこちらを読んでから、各々どの話を選択しどう発展させたのかを愉しむ方がよいような気がする。
三人とも元の話を題材に膨らませているけれど、リリー・フランキーが星新一風のショートショートを三つ揃えているのに対して、ナイツ塙は自伝的な二つの話とナイツの漫才を模したネタ、そして朝吹真理子は少しずつ趣の異なる三つの短篇を書き下ろしている。その内、三夜・四夜に相当する話が最も作家の素の個性が出ているようで面白い。どこか「抽斗のなかの海」の一文を読んでいるような気になる。一方で、細野晴臣の夢との親和性が一番高いのはリリー・フランキーのショートショートかも知れない。少しエロティックで少しグロテスク。一応、オチも付いていて完結した感じが高い。それに何となく漱石の第五夜(捕らわれの身の侍が懸想する女の話)、第六夜(木彫の話)、第七夜(西国へ向かう船の話)とも響き合う話に仕立てられている様な……。ナイツ塙の自伝的エッセイ風の二作は「それで思い出したんだけどさあ」というような展開の二作品で、真面目なのかふざけている判然としない味わい。最後のネタは、もうナイツの声で読んでしまうね。
ほぼ日のサイトには「夢を見るにも、才能というものがあるみたいです」と紹介されているけれど、夢をほとんど見ない、あるいは覚えていない自分には正に羨ましい限りの才能。細野晴臣という天才の内側をほんの少し垣間見たような気分になれる本。