池内紀のレビュー一覧

  • カフカ短篇集

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    カフカを読む時は心身の調子が悪ければ悪いほど楽しめる。余分な装飾がこそげ落とされた文体は疲れた頭にも容易に染み込み、その世界観は理解できなくとも生の不条理が刻み込まれたこの身体が反応する。時に一、二頁で終わるその作品達はどこか不穏な空気を纏っているものばかりなのに、それでも不思議と安心感を感じられるのだ。カフカの描く物語は現実的でないものばかりだが、現実の暗がりに潜む痛みをを鮮やかに切り取ってくれている。それは今にも砕けそうなガラスのコップを支え合う感覚にどこか似ていて、とても美しく思えるのだ。

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    2014年08月16日
  • カフカ短篇集

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     フランツ・カフカ著。20篇収録の短編集。
     これまでカフカの小説は「変身」しか読んだことがなかったのだが、予想通りシュールな話ばかりだった。簡潔で不可解な設定、哲学や暗喩を感じさせる文章、様々な解釈を生む謎を残した結末。これが、いわゆる「カフカ的」ということだろう。
     だがそういうこと以上に、私はカフカに深いシンパシーを覚えた。それはカフカの小説が、単に「カフカ的」であることのみならず、あくまで庶民・労働者目線で書いているからだ。そして物語の背後に確かに感じる、強い諦観。笑えるようで笑えない話が多いのは、それを創作のエネルギー源としていたからだろう。
     こういった特徴はカフカの生活が影響して

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    2014年06月11日
  • 悪魔の話

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    「のちの世の人々は、きっとこの二十世紀を支配した拝金主義の猛烈さに驚くだろう。金銭はすべてのものから、ものの個性と象徴性を奪い取る。つまりはその「魂」を剥奪する。これは何であれ姿を変えることはできるし、すべてに入りこむこともできる。しかし、何ものでもない。金銭はすべてを支配して、何ものも愛さず、すべてを知っていて、しかし、何ものも信じない」 ー 81ページ

     最近の若者はあまり金に執着しないという言論が形成されつつある昨今ですが、皆様お元気にお過ごしでしょうか。

     挨拶はともかく、もし仮に人が金に執着することを嫌がるのだとしたら、このへんが一番の理由なのだなとは思う。その非人間的な質感に対

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    2013年11月28日
  • きまぐれ歴史散歩

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    本人が旅行に行ったノートと現地で購入した本をまとめたものである。この手の本があとどのくらい残るであろうか。本よりも動画やfacebookの方が多い。

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    2013年10月28日
  • 今夜もひとり居酒屋

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    これは具体的な居酒屋のガイドではない。居酒屋論である。居酒屋の分析はなかなか面白く、客であることの修行を思わせる。大人が分かる文化なのだ。

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    2013年09月06日
  • カフカ寓話集

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    結構わかりやすいことをやっている。案外とおもしろい。けど、これって歴史的な価値?以上のものなんだろうか。カフカ以外の名義で、例えば無名の若い作家の名義で新しく出版されても評価されるんだろうか。なんて思った。表現をいじれば普通にウケるかな。孤独とか不安とか。ね。

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    2013年08月30日
  • ニッポンの山里

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    「限界集落」という嫌味な名づけられ方をしている日本の30箇所の山里をめぐる紀行文。不便で効率が悪く仕事もない・・だから益々人が住まなくなる山里は、古来は太陽が降り注ぎ水脈があればそこに定住し暮らしを立ててきた人々が暮らしを紡いできた場所だ。
    汗を流し息をぜいぜい言わせながら登った山道の先に突如として集落が現れる光景の描写はとてもいい。

    いくつか訪ねたい場所を知る。しかしさらに荒廃は進んでいるのかもしれない。足で歩く旅の魅力を十分に感じた。

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    2013年08月23日
  • ひとり旅は楽し

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    複数の旅も確かに面白い。
    だけれども、一人ぼっちの旅も
    また、面白いのです。

    ですが、楽しむためには
    自分の体は自分で守らなければなりません。
    特に山が絡む場合には要注意。

    この中で有用な部分は
    宿泊に関してのところ。
    なかなか気付きづらいですがよく考えれば
    そう感じるんですよね。

    こういう本はよいと思ったところを
    取り入れたほうが面白いはずです。

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    2013年07月18日
  • カフカ寓話集

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    岩波文庫のもう1つのカフカの短編集です。
    個人的には「カフカ短篇集」の方が好みですが、カフカの短編を他にも読みたいって方はこちらもどうぞです。
    岩波文庫の短編集は、手頃で手軽に手にしやすい点で、おすすめです。

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    2013年07月11日
  • カフカ寓話集

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    初めてのカフカ作品。寓話が元々好きだったこともあり、残酷な表現も多々見られたが楽しく読めた。けれども、どこか不安になってくるお話たち。ちょっとしたスリルや奇妙な雰囲気を漂わせるお話を求める方におススメ。

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    2013年03月10日
  • ニッポンの山里

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    20130224 忘れてしまうが確かに生活している。都会との比較に意味は無いがこれからどうするか考えるときにヒントになると思う。

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    2013年02月24日
  • 新編 みなかみ紀行

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    発作的な旅、家族がいても関係ない。深い山に住んでいたこともあり、山や自然や鳥の声に郷愁を感じる。
    妻も、またかといった感じで旅に出ることを認める理解力。
    四万温泉の田村旅館でひどい目に。
    今とは違い、旅すること自体が大変。時間も手間もかかる。まさに非日常。
    創作誌に投句してくれる地方の同志と会えるのも大変貴重な経験。電話などでも気楽に連絡できないがゆえに、会うというのはものすごく貴重。酒を過ごすのもやむを得ない。

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    2012年11月03日
  • 出ふるさと記 作家の原点

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    まさしく池内紀である。
    この人は、どのような人でも、山でも、温泉でも居酒屋でも書く対象に限りなく優しい。
    この本は12人の日本人作家のふるさととの関わりを描いたもの。
    単に作家の生い立ちを描くのではなく、大切な人とのつながりを少ない枚数で丁寧に描いている。

    でも12人のうち作品を読んだ事のある人は、中島敦と寺山修司と田中小実昌だけだ…

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    2011年10月17日
  • 作家のへその緒

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    序文に「人と作品のつながりのなかに一つの切れ目を入れてみた。断面を通して、たえずせいせいしたものがはっきりと見えてこないか。(略)ひとことにしていえば『創造のへその緒』であって、それをそっとさぐってみた」とある。
    取りあげているのは文学史上大きな存在感を示している12人の作家たち。親しんだ作家たちのとらえには納得。よくは知らない作家たちのこともそうかと思わせられる説得力があった。
    なかなかおもしろかった。

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    2011年07月26日
  • 海山のあいだ

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    池内さんの旅エッセイは、ただの随筆ではない。人生は偶然のめぐりあわせの連続であり、それらはすべてむだなことばかりのようでいて、余分なものは何もないと感じさせてくれる。表題の章もだが、自伝的で虚実いりまじったような「自分風土記」の章が秀逸。

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    2011年06月29日
  • ドイツ 町から町へ

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    ネタバレ

    ドイツの多くの町について数ページづつ綴られているけど、けっこう内容が濃くて楽しめる。作歌や芸術家にちなんだ話も多いので、ドイツの小説や音楽がお好きな方にお奨めです。もちろん歴史好きの方にも。

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    2011年05月25日
  • となりのカフカ

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    [ 内容 ]
    カフカ初級クラス・十二回講義。
    しめくくりは修了祝いのプラハ旅行つき。

    [ 目次 ]
    サラリーマン・カフカ
    カフカ家の一日
    虫になった男
    メカ好き人間
    健康ランドの遍歴
    手紙ストーカー
    性の匂い
    ユダヤ人カフカ
    独身の選択
    日記のつけ方
    小説の不思議
    カフカ・アルバム―プラハ案内とともに

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読

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    2011年04月12日
  • なぜかいい町 一泊旅行

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    [ 内容 ]
    見知らぬ町の朝は、いいものだ-旅とエッセイの名手である池内紀が、独自の嗅覚で訪ね歩いた、日本各地の誇り高き、十六の町の旅の記憶。

    [ 目次 ]
    北から南へ(フクロウの知恵-斜里町(北海道)
    日本一巡り-上川町(北海道)
    金の帯-岩内町(北海道)
    木組みと流水-金山町(山形県) ほか)
    東から西へ(カニのハサミ?渥美町(愛知県)
    おもかげゾーン-朝日町(富山県)
    湖北の知恵-木之本町(滋賀県)
    ひいふみつよつ-岩美町(鳥取県) ほか)

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセー

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    2011年04月09日
  • ひとり旅は楽し

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    ネタバレ

    [ 内容 ]
    ひとり旅が自由気ままと思うのは早計というもの。
    ハードな旅の「お伴」は、厳選された品々でなければならない。
    旅の名人はみな、独自のスタイルをもっている。
    山下清の下駄や寅さんの革トランクにしても、愛用するには立派なワケがあるのだ。
    疲れにくい歩き方や良い宿を見つけるコツから、温泉を楽しむ秘訣、さらには土産選びのヒントまで、達人ならではのノウハウが満載。
    こころの準備ができたら、さあ旅に出かけよう。

    [ 目次 ]
    出かける前―まえがきにかえて
    島に渡ると
    海辺は冬がいい
    札所をまわる
    坂のある町
    キョロキョロする
    歩き方のこと
    足かクルマか
    わが専用車
    ステッキをお伴に〔ほか〕

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    2011年04月02日
  • 新編 みなかみ紀行

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    まなかひに奈智の大滝かかれどもこころうつけてよそごとを思ふ
    -熊野奈智山-

    ひとり飄々と旅をする姿を想像していたら、実際は、結社の仲間をうきうきと訪ねたり、別れ難くなった友人と予定外の滞在をしたり、人の匂いのする旅人だった。ルックサックを背負ってね。

    また来むと思いつつさびしいそがしきくらしのなかをいつ出でて来む
    -みなかみ紀行-

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    2011年03月03日