池内紀のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本書はいわば,カフカの “トリセツ(取扱説明書)” である。
大きな目にそげた頰,長い脚に痩せた身体。
見るからに根暗な雰囲気を醸し出し,
やや恐ろしくもある。
そして,それは見た目だけでなく彼の書く小説も同様,
暗く,奇妙なものが多かった。
朝,目を覚ますと虫になっていた…。
あるいは,朝起きると,いつの間にか逮捕されていた…。
不条理すぎる書き出しから始まる物語を,カフカは淡々と書き綴る。
カフカはずっと部屋に籠りきりで小説を書いていたわけではない。
昼間は平凡な,それでいて有能なサラリーマンとして会社に勤め,
帰宅すると少し仮眠をとってから自分の小説を書いた。
たまに仕 -
Posted by ブクログ
知り合いに池内紀をリコメンドされたので、試しに読んでみた。
ひとり旅でどんなことを感じるのか、彼ならではの視点で記載されている。この視点が正しいかは分からないが、きっと参考にしてくれということなのだろう。
ひとり旅をよくする身として、彼の視点に頷けるところもあるが、なんとなく対抗心が芽生えてしまっているのだろうか、うまく迎合できない自分がいる。
なんでか考えてみると、彼の視点は日本史が支柱となって、そこでの史跡や風景で感じた独自の感想が埋め込まれているのだが、なんとなく各所に居るであろう人々の匂いがしない。私は、現地でざわついている人の息遣いが好きなので、それが足りないのが残念であった。
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Posted by ブクログ
稀代の読書家として知られる著者が、主として西洋の文学、芸術、歴史を参照しながら、悪魔というテーマにまつわるさまざまなエピソードを紹介している本です。
澁澤龍彦の著作を思わせる内容ですが、澁澤に比べるともうすこし抑制の利いたユーモアが感じられるように思います。澁澤も、けっしてオカルトに対する熱狂的な情熱を見せることはなく、「手帖」三部作に見られるように百科全書的な関心がその仕事の全体をつらぬいているというべきでしょうが、同時に澁澤のばあいにはみずからの分類的思考それ自体に対する耽溺が感じられます。これに対して本書には、ずっと健全な精神が息づいていて、そのぶんすこしもの足りないような印象を受けて -
Posted by ブクログ
こんなタイトルで、一冊の本を出版するなんて、池波正太郎か。
とは言え、読み進めるごとに、頷かざるをえないな、こりゃ。
女性が懇意にするネイルサロンや美容院、果てはメゾンがあるように、酒呑みにも行きつけの店があるもんで。
たまには、違う店にも入り、あれが良いだの悪いだの。
店も変われば、客層、料理、色んなものが変わるわけで。
ああ、酒場って良いですね。
最近のハマってるアテは、潤目鰯と銀杏です。
本書は居酒屋、割烹、小料理屋に特化されており、バー、パブなどには触れられておらず。今でこそのバルは、昔はスタンドって呼んでたんだなんて、いかにも赤提灯で横隣になったオヤジが言いそうなことも書かれ -
Posted by ブクログ
昨年上演された指輪ホテルの「断食芸人」というお芝居のタイトルが妙に記憶に残っていて、どんな話なのか気になって読んでみた。短編がたくさん入っていて、カフカさんが書いた棒人間みたいなイラストも載ってお得。
わたしはどうも、意味をわかろうと読んでしまうため、カフカさんの小説は意味がわからなくて欲求不満になりそうになる。途中からそのことに気がついて、これは何かの隠喩だとか、この台詞の意味はこうなんじゃないかとか考えないようにして読んだ。
現実はいくら知恵を絞ってみても割り切れない。割っても割ってもなにか余りがでる。そして、その余りは、気味が悪いというか…なんとも嫌な感じに胸に残る。ありそうもないよ