池内紀のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ときどき小説を読んでいると、ああそうだったなと、それまで意識もしていない自我のようなものに気づく時がある。そういう感覚は覚えがあるが言葉にできていなかったなと。
しかし、それはもしかすると“そういう感覚”は今まで経験すらしていなかったのかもしれない。
作品を読んで、自我の中にある、“そういう感覚”が呼び醒まされただけなのかもしれない。
それは、自分が認識するこの世界を押し広げているということだ。だから私は本を読む。
どんな短い作品でも、カフカの作品はああそうだったかと膝を打つような感覚は覚えない。
その作品を体で理解したということは、一度もない。でも、一度読み出すと止まらなくなる。
私の中に -
Posted by ブクログ
池内紀(1940~2019年)氏は、東京外語大外国語学部卒、東大大学院人文科学研究科修士課程修了、神戸大学講師、東京都立大学助教授、東大文学部助教授・教授等を経て、早期退官後、文筆業・翻訳業に従事。カフカを中心にドイツ文学の評論・翻訳が専門ながら、旅行記ほか、幅広く文筆活動を行った。毎日出版文化賞、桑原武夫学芸賞、読売文学賞等を受賞。宇宙物理学者の池内了は弟、アラブ研究者の池内恵は子供。
本書は、著者が70歳になったときから、自らの老いに関して気付いたことを、自分の「観察手帳」に書き綴ってきた内容を、76歳の時点で聞き書きにより書籍化したものである。尚、著者は、観察手帳を書き始めたときに、77