池内紀のレビュー一覧
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独文学者でエッセイストの情緒豊かな紀行。
西欧文化に精通したからこそ。
日本古来の風景の魅力を伝える良作。
筆者の紀行文は川本三郎と並んで好きである。小難しい小説などを読む合間、方の力を抜いてのんびり楽しめる。本当はお二方なように旅行に行ければリフレッシュできるのだが、時間も金銭もそんな余裕を与えてはくれない。
本書には16の街が登場する。津和野の他は極めてマイナーな街の感。北から順に、斜里、上川、岩内、金山、登米、三春、大多喜、渥美、朝日、木之本、岩美、上関、佐川、星野、湯前。
筆者の作品は紀行に良くある嫌みがない。豪勢な料理も豪華な宿も登場しない。本数の少ないローカル線か路線バスでふら -
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散歩とか、町歩きの本は多い。「散歩」とは名付けていなくても、読んで、歩きたくなるエッセイや小説も多い。
著者は、数ある散歩本をお供に、各一箇所ずつ歩いている。基本ひとりで歩いているのだが、(今回は)「散歩本」というお供が、きちんとお相手していてとても楽しい。私自身、手にするのは「散歩本」が多い。というか、最近は「散歩本」ばかり読んでいる。そうした散歩本をこの本のように分類してみるのはいいなと思った。
この本では、「水の都」「江戸の面影」「明治・大正・昭和をたどる」「東京生まれの東京育ち」「味の散歩」などに分けられている。私としては、もう少し細かく「城を見に行く」「銅像を見に行く」「落語を歩く」 -
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ネタバレカフカなどの翻訳で知られるドイツ文学者の池内紀さんが、70歳に書き始めた「すごいトシヨリBOOK」。序文で「77にはこの世にいない」と書いている。今年の8月に78歳で亡くなられた。▼「老い」を笑って私たちに見せてくれる。老いが自然に受け入れられる。▼堀口大学の詩の紹介:〈深海魚光に遠く住むものはつひにまなこも失ふとあり〉▼『尊厳死協会会員』になって延命治療を拒否する意思を明示する。▼「あの映画を見に行こう」と思っていても、億劫になって結局見に行かなかったりするものです。ただ億劫がって出歩かなくなると急速に老いてしまいますから、スケジュールを作るというのは、常に自分を移動させる方法、自立の一つの
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ネタバレ歴史の洗礼を受けた場所は、不思議なオーラがあるという。
歴史散歩の仕方にはどうも2種類あるようだ。
著者は事前の下調べもなく、フラッと行くタイプで、変な先入観を持たない方が新しい発見があって面白いという。
この真逆が司馬遼太郎のようだ。司馬は事前に徹底的に調べ上げて、現地ではそこの空気を感じるのみ。
どちらが良いのかは各個人の好み次第であるので、何とも言えないが、私を含めて普通の人は池内流が多いのではないだろうか。
とは、言いながら私は大の司馬ファンで「街道をゆく」は愛読書である。
やはり、読むのと実際に行動するのでは、大きな違いが出るようだ。
本書では歴史の裏側の隠れた面も随所で紹介され -
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ネタバレ凄く面白かった! 老いるということ、自分がその立場にならないとわからないことが読める。また、理解し難かった年寄りの行動あるある、こういうことなのねーとちょっとわかった。
カラダは老けても心は老けてない、というのは錯覚で、心は老けてないと思うこと自体がまさしく老化のしるし。心も老けるからこそこれまでと違う人生の局面が見えてくる、老いて初めて若さがわかるということ。
老いの進行、老人は過去をねつ造する。年配者同士が昔の自分について話していることはかなりフィクション。そうであってほしかった願望をいつの間にか自分で現実とすりかえる。
老いの初期では、失名症や人の話を急に横から取って自分の話に持って -
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2009年4月1日~2日。
これだよこれ! と思わず大声で叫びたくなるのは、数日前に読んだ「カフカ寓話集」の面白味の無さに呼応してのこと。
この「カフカ短篇集」を読むと「カフカ寓話集」は残りものを集めたんじゃないの? って疑問すら湧いてくる(強ち外れているとも思えないが)。
各作品の面白さから解説に対する力の入れ方まで、なにから何までが雲泥の差としか思えないのだ。
「カフカ寓話集」の冒頭に収録されていた「皇帝の使者」にしても、こうして「カフカ短篇集」の最後を飾る「万里の長城」に収まったこそ、その意図が明確になるのでは、と思ってしまう。
やはりカフカは面白い。 -
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読書の楽しみは
居ながらにして 異なる国へ
居ながらにして 異なる時代へ
居ながらにして 異なる思考へ
連れて行ってもらえることです
ドイツ文芸はむろんのこと
この世の出来事に博覧強記の
池内紀さん
その池内さんの「ドイツ紀行」
その風景はむろんのこと
建物、川、町、路地
そこにまつわる
歴史、文芸のあれやこれや
が心地よく語られていく
それぞれの章は「町」の名がつけられている
その「町」で出遭う
その町で暮らしておられる
なんでもない庶民の方とのふれあい
がたまらなく魅力的である
あったこともないのに
その人にあったような気にさせられる
行ったこともない町であるのに
行ったことのあるよ -
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ネタバレ【目次】
Ⅰ 水の都 東京
幸田 文『ふるさと隅田川』
鈴木理生『江戸の橋』
竹内正浩『カラー版 地図と愉しむ東京歴史散歩』
村松 昭『多摩川散策絵図』
陣内秀信+法政大学陣内研究室『水の都市 江戸・東京』
幸田露伴「水の東京」『一国の首都』
Ⅱ 江戸の面影
江戸いろは会『「江戸」を歩く』
池波正太郎『江戸切絵図散歩』
三遊亭圓生『江戸散歩 上・下』➖向島
江國 滋『絵本・落語風土記』
今井金吾『新装版 今昔中山道独案内』
長谷川渓石 画/進士慶幹・花咲一男 注解『江戸東京実見画録』➖一石橋
安藤鶴夫『わが落語鑑賞』➖三光新道
芳賀ひらく『デジタル鳥瞰 江戸の崖 東京の崖』➖愛宕山
岩本素