池内紀のレビュー一覧

  • カフカ短篇集

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    カミュに言わせれば、カフカの作品は極めてファンタジーであると言うが、決して単なるお伽噺に過ぎないというそういう侮蔑ではないと思う。カフカの想像は、人間の想像の限界を超えられないというところで超えてしまっている。
    決して近未来や未知のテクノロジーだったりそういう類の想像ではない。いつも等身大の生活の中でふっと生じるものがカフカの想像である。彼の与える空間はいつだって閉塞的で、圧迫されているかのように感じられる。読んでいてとても息苦しい。離れられない、逃れられない、そういうしめつけがどこかまとぁりついてくる。彼が用いるのは「喩え」おそらく閉塞的な機構(システム)というのは喩えだったのだろう。万里の

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    2017年07月30日
  • カフカ短篇集

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    仕事は忙しいし、官僚的なわけのわからいないプロセスのなかで、なにをやっているのか分からなくなる。

    という状況のなかで、これってカフカ的だなと思い。仕事の合間に、短編をパラパラと読む。

    すると、これがすごい。カフカって、幻想的というイメージだったのだが、これは、全くリアル以外の何ものでもない。もちろん、わけのわからないシュールな展開が多いのだが、そういう不条理さまで含めて、これこそが現実である。

    と、とりあえず、断言してみる。

    カフカは、サラリーマンをやったり、親が老いたりしなければ、分からない作家であったのだ。

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    2017年05月02日
  • カフカ寓話集

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    同じ訳者の「カフカ短編集」が面白かったので、こちらも読んでみる。

    「寓話集」といっても、カフカがこれは寓話でこれは短編と仕分けた訳ではない。タイトルは、「カフカは現代の大人のための楽しい寓話である」という訳者の解釈から来たものだろう。

    「短編集」を読んだときは、「そうはいっても、やっぱり暗いよなー」という感じがしたが、こちらは、なるほど寓話と言う感じだな。動物が主人公のものが多いし。

    「皇帝の使者」「ジャッカルとアラビア人」「巣穴」「断食芸人」「歌姫ヨゼフィーネ、あるいは二十日鼠族」あたりが、特に面白かった。

    きっとどれも昔読んだ事があるはずだけど、印象はかなり違う感じ。自分が

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    2017年05月02日
  • 永遠平和のために

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    高校生くらいからでも読めるが内容は決して空虚ではない。
    モラルと政治は一致しない現実を踏まえても、永遠平和は空虚な理想ではない。

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    2016年09月22日
  • カフカ短篇集

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    切れ味抜群の文章。奇妙な寓話の世界へ引き込まれます。カフカの世界を覗かせてもらった不思議な体験でした。

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    2016年09月19日
  • カフカ短篇集

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    カフカは難解だ。しかし、それでも読者惹きつける何かが間違いなくある。その点でカフカ世界を、五感と想像力をもって感じられたから良かった。

    「掟の門」
    「判決」
    「流刑地にて」
    「夜に」
    「橋」
    「町の紋章」
    「プロメテウス」
    「喩えについて」

    解釈を急がず、カフカ世界に入っていく。
    そして、そのまま物語の世界に独りで取り残されたかのような感覚を与えてくれる。
    こんなにも不可思議で、乱暴な短編集は初めてだった。

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    2016年08月25日
  • 今夜もひとり居酒屋

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    東海林さんの丸かじりシリーズのエッセイをいくぶん学術的にして新書にまとめればこうなる。日本の居酒屋文化を、店のしつらえ、店主、客、酒、肴それぞれに着目し、適切な分析により愉快に考察する。確かに、こだわりを強く持ち、料理も店構えもきっちり仕上げた店があれば、工夫もやる気も欠落した店主が惰性でやっている店もある。当然前者が流行って、後者は閑古鳥かと思いきや、必ずしもそうでもないのが居酒屋の不思議。なるほどそうだ。居酒屋とは読んで字の如く、心休まる我が居場所となる酒屋でなきゃならない。家庭と職場に次ぐサードプレイスだ。

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    2016年08月10日
  • なじみの店

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    歩く速さで思考するというのは
    池内さんのような方のことを言うのでしょう
    普段の何気ない
    どこにでもあるような
    どこにでもおこるようなことを
    わかりやすい言葉で 
    さりげなく ひょい と とりあげて
    こんな風に 考えてみると
    ほら と 新鮮な発見に気づかされます

    気持ちよく 脳のマッサージをしてもらっている
    そんな感じですね

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    2016年06月24日
  • 永遠平和のために

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    220年前の警世の書。いま書かれたかのようです。
    カントの提言は、わたしたち一市民に、平和のために行動せよ、権力者の戦争好きにブレーキをかけよ、と語りかけてくる。偉大な哲学者の、平和への提言に、乾杯。

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    2016年01月13日
  • 永遠平和のために

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    世界中の人、とくに先進国の政治家に読んで欲しい。
    これが書かれたあとに起こった世界的な戦争のことを思うと胸が痛い。

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    2015年11月22日
  • 聖なる酔っぱらいの伝説 他四篇

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    放浪のユダヤ人作家ロート。5篇の短篇の主人公たちも放浪する。故国を遠く離れて。ナポレオンはヨーロッパをかき混ぜ、第一次大戦はヨーロッパの枠組みをぶっ壊してしまった。民族自決という名の下にバラバラになったオーストリア帝国。行き過ぎた民族主義はユダヤ人に対する憎悪を引き起こす。ヒトラーを予見させる『蜘蛛の巣』と亡き帝国の挽歌である『皇帝の胸像』は鏡像のようだ。せつない愛の物語2篇もいい。表題作は作者そのものらしい。淡々とした筆致で書かれた物語たちは甘さのあとにくるほろ苦さのようなものを含んでいた。


    『聖なる酔っ払いの伝説』でもアプサンの代用酒でペルノーを飲んでるけどヨーロッパではアプサンがそん

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    2014年08月09日
  • カフカ寓話集

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    扉ページの次の絵。
    この人はもうずっと深刻なままでいる。
    このままもう立ち直ることはない。

    この人は同一人物なのか、それぞれ別人なのか、男なのか、女なのか、作者自身なのか、赤の他人なのか。ひとつのストーリーなのか。

    この人は、うな垂れ、手枷で曳きたてられ、法廷に立たされ、希望を持った次の瞬間に裏切られる。
    ように見える。

    この絵をよく見てからカフカを読むべきかどうか判断すべきでしょう。

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    2013年10月13日
  • カフカ短篇集

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    どうしてわれわれは故里をあとにしたのか
    これは、万里の長城建設に携わる技術者の独白である、短篇「万里の長城」の一部分です。

    父と息子の関係を描き、結末がショッキングな「判決」、特にミステリアスな「田舎医者」、ある流刑地に、ヨーロッパから裁判制度の調査旅行に来た有名な学者が、残酷な死刑装置の説明を受けるところから始まる「流刑地にて」など、ものすごくわかりにくい話から、筋は結構わかりやすいものまで、翻訳した池内紀さんが選んだ短篇集。

    「死」のイメージが強い話や、難解な話も多いが、わりと明るい読後感を残す「火夫」、「中年のひとり者ブルームフェルト」などもある。
    「火夫」は、女中に誘惑され子供がで

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    2015年10月01日
  • ちいさなカフカ

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    著者の池内紀さんがあちこちに書散らしたものを蒐集し一冊にまとめたものらしい。
    カフカが恋人に宛てた手紙、散歩してまわったプラハの町並み、複雑な言語感覚、小役人として属した官僚機構、19世紀から20世紀にかけてのヨーロッパ、ユダヤ人、宮沢賢治との共通点…。
    「この十年あまりにいろんな場で発表したものから十編を選んだ」だけあって、テーマは多岐にわたり、そのとりとめのなさがいい。
    作品を通して想像するカフカは「暗い」「気難しい」というイメージだが、ここに現れるカフカはまた少し違う。
    いろんな「ちいさなカフカ」に出会えた気がする。
    カフカを読んだことのある人にも、これから読もうかという人にもお勧めの一

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    2012年11月12日
  • ドイツ 町から町へ

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    著者によるドイツの紀行文集。誰でも知ってる都市から、すごくマイナーな街まで載ってて、一冊通してドイツの国家像が見えてくる感じがして面白かったです。何より著者池内さんの、各都市の風景が浮かぶようなテンポの良い文章と、豊富な見識に私は引き込まれました!!

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    2012年09月17日
  • となりのカフカ

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    著者の近著である『カフカの生涯』を抄記した内容で、カフカの人物像に焦点を合わせ、意外な素顔と作品との関係性をも明らかにしています。カフカがいかに優秀で機械好きなサラリーマンであったか、また創作活動と恋愛とそして晩年の病気との狭間で色々と揺れ動いていたかがよく分かるでしょう。裏の顔を知って、またカフカの作品を読みなおしたくなること請け合いです。

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    2011年11月13日
  • カフカ寓話集

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    最初の2ページを読むだけで分かる。
    ああ、カフカだと。
    物語の中に入ったと思ったら、読者はそこに置き去りにされる。
    誰も追いつけない。カフカにだけは。
    自分なりに色々な作品を読んできたつもりだが、
    カフカの世界に似た作品、世界観をもつものには未だに無い。
    なぜカフカだけがここに行き着けたのだろうか。

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    2011年10月09日
  • 今夜もひとり居酒屋

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     池内先生、うまいなぁ。
     居酒屋本たくさん出ているけれど、あまり感心しない。
     「元祖」と言われている(言われてない?)グラフィックデザイナーの方とか、物書きとしては素人の某重工メーカーにお勤めの方とか、恐ろしく文章が下手くそで、読んでいて胸がイタミまくりの方とか、いろいろと「居酒屋本」が出ているが、やはり違うなぁ、と。

     「中央公論」連載の頃から、読んでいました。
     なるほど、新書になりましたか。

     読んでいて、楽しい。
     具体の店は出てこないけれども、文章を読んでいて、行った気になってしまうのは、あるいは、猛烈に行きたくなるのは、作者の筆の技のなせる技なのでしょう。

     あまりガツガ

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    2012年01月23日
  • 今夜もひとり居酒屋

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    フランツ・カフカやエリアス・カネッティやギュンター・グラスやヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの真髄を教えてもらった、敬愛する独逸文学者の池内紀が、まさか温泉以外にもこういう傾向の随筆を書かれるとは夢にも思ってみませんでした。

    そう、それは・・・・・
    ♪ 地球の上に朝がくる その裏側は夜だろう・・・と歌う、川田晴久(戦前は義雄)とミルク・ブラザースのことを書いた『地球の上に朝がくる 川田晴久読本』以来の驚きかもしれません。

    父などはよく、今は「つぼ八」だとか「笑笑」だとか、一杯飲むのも団体でしか行けやしない、と嘆いて、そのすぐ後に、ああ「時間ですよ」の中の篠ひろ子が女将さんでいるような

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    2011年10月28日
  • ドイツ 町から町へ

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    著者が文学者ということで、どんな場所にもどんな歴史にも文学が根を張っているという事実を噛み締めながら読みました。歴史も文学も人間が作るものなのだから繋がっていて当たり前か。ドイツには城や建造物が眩暈がするほど昔から残っていて、それらをこれからも残していくのが当然という雰囲気、新しく町を造るとき(或いは戦争で破壊された町の再建)のしっかりと先を見越した町づくりなどに、日本には無い良さがあります。逆に、きっと変化する事や理解できない事を過剰に避ける傾向もあります。観光地然としすぎていない、わりと小さな町から町へ、著者が旅をしながら綴った短い章を追っていくとそれらがだんだん見えてきます。どの町のこと

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    2010年10月16日