大森望のレビュー一覧
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久しぶりのSF小説(といっても1ヶ月ぶりだが…)、そして久しぶりのディック作品(といっても4ヶ月ぶりだが…)ということもあって、期待以上に楽しめた本書は、ディック曰く「クズ」みたいな作品とのこと。「後半はまあまあだけど」とフォローをいれるものの、「前半はまるで読めた代物じゃない」と述べるように、ディックは本書にあまりよい思いを抱いていないようですね。その辺りは、訳者あとがきでの大森氏による推察を参照されたし。ちなみに本書は大森氏が初めて翻訳したディック作品とのことで、なんだか訳者あとがきから、大森氏の本書への愛着が感じられますね。
さて、ディックの長編によく感じる「ちくはぐ感」は本書でも相変 -
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「ブラックアウト」から「オールクリア1」と同2まででひとつの物語。とにかく長かった。面白かった。終盤に行くまでは少しダラダラとした感じはあるが、それらはすべてラストに向けた伏線である。最後にどんどん伏線が回収されていくのは見事。作者も苦労したと後書きにあるのだけど、特殊な時間の流れかたをする本作品においては、辻褄を合わせるだけでも大変な作業になるのは簡単に想像できる。これで意外というか、ある意味ロマンチックな結末まで用意するのだから、コニー・ウィリスはどんだけすごいんだと思わざるをえない。長くて読むのは大変だけど、読み終えた時の満足度は高い。読む価値はあった。
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vN(フォン・ノイマン)と言えば、ノイマン型コンピュータを想像する人は多いだろう。身近にあるパソコンやスマートフォン、電卓などほぼすべてのコンピュータはノイマン型だ。そんなコンピュータがAIとなり、ロボットとなった世界を描いているのかと思っていたら全然違った。巻末の解説を読んで分かったのだが、自己複製するロボットのことをフォン・ノイマン・マシンと呼ぶそうだ。それなら納得。まさにそのようなロボットの物語だ。本作品では、vNと呼ばれている。そのvNはロボットなのだが食事をする(生身の人間とは異なるものだけど)し、子供から大人に成長(食べる量で成長スピードが変わる)し、普通の人が持っているロボットと
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西暦2060年の学生3人が第二次世界大戦中の英国にタイムトラベルして、そこで騒動に出くわす物語。何も起こらなければ、大戦中の出来事を実地調査して現代(2060年)に戻るだけの話である。もちろんそれではお話にならないので、タイムトラベル前から突然のスケジュール変更(変更理由は明かされていない)などもあり、何かハプニングが起こることを予感させる。当然だが、過去に送られた3人はそれぞれ想定外の出来事が起こり、現代に戻れない状況に陥る。3人がそれぞれ微妙なすれ違いがあったり、読者をやきもきさせる。「あー、出かけるんじゃなくて、そこで待ってろよ」と何度思ったことか。そんな煮え切らない状況のまま本書は終わ
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- カート
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試し読み
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屍者の帝国の世界観を元にした短編集。シェアードワールドというらしい。二次創作みたいなもの?
なかなか良質な小編が多かったなぁ。宮部さんの語りはやはりうまい。山月記やくまのぷーさん、アルジャーノンに花束をなど他作品のネタを混ぜ混むのが流行りなのかお手前なのか?とりあえず好き勝手ぶちこんどけーみたいなノリもある。
特に好きだったのは「神の御名は黙して唱えよ」と「ジャングルの物語、その他の物語」かなぁ。宗教観や文体・展開など、伊藤先生へのリスペクトの現れ方が好み。
編集者や円城先生の裏話なんかも楽しく読めた。ノリ的には同人的な、商業性の薄い話だったんだね。そりゃ賛否あるだろうけど、そういう悪巧み的な -
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全体的に読みやすい。翻訳がこなれているからだろう。古い作品なのだがどれも古さを感じさせない。元のアイデアが良いからだ。個人的に印象に残ったのは、「出口はどこかへの入口」「地球防衛軍」「訪問者」「世界をわが手に」の4作品。人の良心を試されているかのようなもの作品が多い。
以下、個別作品の感想。
◎トータル・リコール
同名の映画の原作。主に映画の前半部分が本編である。この作品では記憶を取り戻した後のストーリーが異なる。淡々とした感じではあるが、しっかりとしていて面白い。昔のSFだなと感じるのは、記憶媒体にテープを使っていること。火星に人類が行ける時代になれば、テープは一般的な記憶媒体ではなくな -
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「屍者の帝国」の世界観を共有したアンソロジー(シェアードワールドというらしい)。津原泰水、たぶん初読でちょっと苦手。坂永雄一、元ネタへの知識がないせいか入り辛い。この2篇がちょっとオイラには合わなくて、後は割と好きな部類。
藤井太洋、戊辰戦争と南北戦争をムリヤリつないでる感はあるけど、そこ含め単純に冒険活劇としてノリがいい。
高野史緒、「カラマーゾフ」を食わず嫌いで読んでないんだけど、他あちこちから拾ったネタをどんどん放り込むスタイルは好きだ。
仁木稔、伊藤計劃本線の匂いが一番する中央アジアもの。伊藤計劃アンソロジーでウィグルの話書いてたのこの人だっけ?
北原尚彦、屍者の帝国のキャラを使いつつ -
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ネタバレ屍者の帝国の世界観で、8人の作家陣が新作短編を競作する書き下ろしアンソロジー。
様々なジャンルで屍者の物語を紡がれている。
ほとんどの作品で感じられるのは、屍者を運用しているのが当たり前の世界となっていて、現代のロボットが日常に広がっていく感じとダブって面白い。
皆んなそうだろうが、中でもやっぱり北原尚彦の「屍者狩り大佐」がワトソンたち一行が出てくる物語でテンション上がる。
他にも宮部みゆきや山田正紀らベテラン陣も執筆していてどれも一読の価値あり。
最後に円城塔の「屍者の帝国」を完成させた時のインタビュー記事も載っていて、もちろん本当は違うのだろうが、「必要以上に思い入れることなく程 -
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2060年から来た史学生3人(ポリー、マイク、アイリーン)が、第二次世界大戦下のロンドンに取り残され、未来に戻る手段が見つからない。
何が起こっているのかはわかってきたが、なぜそのようなことになったのかはまだわからない。
未来から来た人間が過去に介入することによって歴史を変えることが許されない。
しかし戦時中、何がどう転んで人を死に追いやったり、または失われるはずだった命を助けてしまうかわからない。
また、自分自身が死んでしまうことももちろん避けねばならない。
そのためには一刻も早く未来にも出らなければならないのに、手掛かりが見つかったかと思うと、勘違いだったりすれ違いだったりして、思うに -
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表題作が興味深いのだが、巻末収録短編のタイトルが「シビュラの目」である…
私はSFを完全に誤解していたなぁ、だから手を出さなかったんだろう、SFは全てにおいて「無機質なもの」と思い込んでいた。人間の在り方も科学的に進んでしまう事で精査され、人間味が薄れ、設定の奇抜さを楽しむもんだと思い込んでた。設定の奇抜さで競う、と言うのはBLにもある側面だ。
収録作の『ナニー』に差し掛かっているが、ほぼ球体のアンドロイド家政婦ロボットの話。旧式は新式と対決すると、性能の差、と言う絶対値を打ち破る事は出来ない。人間の様に「火事場のクソ力」なんてものはスペックになければ出すことが出来ない。旧式のロボットは修理す -
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『ドゥームズデイ・ブック』『犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎』に続く、オックスフォード大学史学部タイムトラベル・シリーズ第三弾。
今回は三人の史学生がほぼ同時に第二次大戦中のロンドンへ降下する。
タイムトラベルといっても過去へ行くことしかできず、時間旅行者が歴史に影響を与えることはできない。時間旅行も、大学が研究目的で時間遡行装置を管理しているので、誰でもが簡単にいくことはできない。
当時の人たち(時代人)の中で生活をしながら、歴史的事実を見学するだけなのだ。
ポリーは、ロンドンのデパートで働きながら、ロンドン大空襲下の日常生活を体験する。
マイクルは、アメリカ -
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ディックの短篇は、長篇に比べて読みやすくて解りやすい。そして、とっても面白い!
本書は、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の「トータル・リコール」(最近はリメイクもされました)やスティーブン・スピルバーグ監督により映画化された「マイノリティ・リポート」の原作を含む全10篇収録の短篇集です。
地下に潜った人類に代わって、ロボットが地上で戦争を繰り広げる「地球防衛軍」やテレパス(精神感応者)による監視社会を描く「フード・メーカー」、地球外生命体の侵略物として非常にサスペンスフルな「吊るされたよそ者」、そして、プレコグ(予知能力者)により犯罪を未然に防ぐ社会を題材とする「マイノリティ・リポート」