大森望のレビュー一覧
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マンガ的な雰囲気のB級SF。
トランスで新型兵器のアイディアを手に入れる兵器ファッション・デザイナーが、究極兵器“ザップ・ガン”の開発を目指すというぶっとんだ設定。SFアイディアのてんこ盛り+ディックおなじみのドラッグや社会描写などがあるが、前半部分が読みにくく、全体的にまとまりがない印象。
とはいえ、後半以降はテンポよくストーリーが展開し、美少女ヒロイン&メカもの的な面白さがあってかなり楽しめた。映画化よりもアニメ化してほしい、そんなノリの作品。世界観的にゲーム化もいけそう。シリアスな本編に直接絡まない、明らかにお笑い担当でしかないキャラもいて新鮮。読後感が良い! -
Posted by ブクログ
750ページ二段の、まるで辞書のような
新⭐︎ハヤカワ・SF・シリーズ『ブラックアウト』!
永らく積読状態でしたが『オールクリア 1、2』が揃ったところで、意を決してシリーズ年内読破を決意!
2060年のオックスフォード大史学生3人がタイムトラベル先の1940年第二次大戦時のイギリスで巻き込まれる騒動は、戦っている者ではなく一般市民の生活を描いており、どこかコミカルで、まるで恋愛ドラマにある「すれ違い」。それだけに、ときおり現れるシリアスな場面がより戦争の恐怖を煽り立てる。
のめり込んで読みすすめると、本を持つ左手が重みに耐えているうちに、750ページが終わる。
でも物語はまだ終わらない。
『オールクリア 1』へ突入します!
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Posted by ブクログ
中国の軍事兵器により出生率が下がり、タイタンからやってきた異星生物ヴァグとの戦争に敗れた人類は、ヴァグによる緩やかな支配の下、地球上の土地を賭けたゲームに明け暮れていた。カリフォルニア州に住むピート・ガーデンは、ある晩のゲームに負け、居住地でもあったバークレーを奪い取られてしまう。失意に暮れるガーデンに悪いニュースが追い討ちをかける。東海岸を支配する強力なゲーム・プレイヤーのラックマンが西海岸をも支配下に置くべく、ガーデンらのゲームに参加するというのだ…
序盤から予想を裏切る展開が続き、ダレることがありません。いきあったりばったりかなと思いつつも、物語に破綻感は感じない。なんだかディックらしくない気もするのですが、薬漬けで自殺願望のある主人公であったり、テレパス、プレコグといった超能力はディックらしさ満開。そして、ラシュモア効果。人工知能が搭載された機械のようなもので、車やエレベーターなどの機械(ケトルまで!)が自由自在に喋ります。これが作品に愉快さを与えてくれます。当然ながら話のなかでその詳細は説明されないのですが、物語の本筋と関係ないところでのこういったガジェットの存在はディックの魅力の一つです。
さて、サスペンスでエンターテイメント色の強い物語で存分に楽しむことができました。ディックは「この本については言いたいことは何もない」とコメントを残したようですが、その言葉の真意はともかく私は楽しめましたよ。 -
Posted by ブクログ
ブラックアウト、オールクリア1から続き、とうとう完結編!著者は本書の執筆に8年を費やしたとのことですが、さすがの物量と、それに負けない構成力。最終巻でどんどん伏線が回収され、物語が収れんしていく様子は圧巻でした。
正直、戦時中のロンドンの状況については全く知識がなかったですが、人々の生活の様子が活き活きと描かれており、タイムトラベル的な要素を横に置いても充分に楽しめる作品でした。そこに未来からやって来た史学生たちの人間ドラマが加わり、最後まで一気に読まずにはいられず、ラストは感動して何度も読み返してしまいました。
さすがに大作すぎて、ストーリーを追うのに必死で細かい描写をキャッチできていないので、ブラックアウトから読み直して、「あー、こんなところにこんな伏線が!!」って発見していきたい。けど、再読するのにもものすごく時間がかかるんだろうな(笑) -
Posted by ブクログ
西暦2114年。世界は道徳再生運動(通称、モレク)の広がりにより、あるゆる反モレク的言動を取り締まる監視社会へと変貌していた。そこではハサミムシ型のスパイ・ロボット”ジュブナイル”が人々の生活を監視し、少しでも道徳に反する行動を犯したものはブロック集会にて匿名のパッシングを浴び、居住権を奪われてしまう。そんな中、大事件が起きる。モレクの創始者ストレイター大佐の銅像に誰かが赤ペンキをぶっかけ、その首を切り落としてしまったのだ…
ディックお好きのディストピアSFですが、現代社会に重なる部分が多く、その先見性には驚きを隠せません。特に、匿名性を帯びた住民が不道徳な者たちに対して執拗に口撃を仕掛ける様は、現代の匿名掲示板における炎上そのもの。50年以上前の作品だよなぁ、と感嘆の思いです。
主人公アレク・パーセルはモレクにふさわしいテレビ作品を世に送りだす、新進気鋭のリサーチ・エージェンシー(いわゆる広告代理店)の創業社長。その功績を認められ、政府からテレメディア局長の座を推薦されるアレクですが、銅像へのいたずらの犯人が彼自身かもしれない(アレクには記憶がない)ということで、物語は不安定な方向へ進んでしまいます。
アレクのようなリサーチ・エージェンシーが作るテレビ作品により道徳的教訓は世の中に発信されていきますが、子供たちはその教訓をしっかりと理解していない模様。そう思うと、このモレクという活動は初期の思想はどうであれ、いまでは現行の支配体制を維持するための方便でしかないようにも思えます。正義をかざして、悪に目を向けさせる。そのための監視社会。確かに間違いではないのでしょうが、肝心の正義に卑しさがないとは断言できません。
「汚染されることへの恐怖。猥褻な行為をはたらくことへの恐怖。こうした構造すべてが、巨大な拷問室みたいなもの。だれもかれもがおだかいを監視して、あらをさがし、他人をひきずりおろそうとしている」
うーん、ディストピア。
さて、このアレク、とっても前向き。そして現実的。ディック初期の作品だからでしょうか、綺麗にまとまっていて、展開もスムーズ。アレクは奥さんとの仲も良いし、ディックの作品でいつも登場する謎の美少女(本作でももちろん登場)にもなびかない。ディックのプライベートも順調だったのか?と勘ぐりたくなるほど。また、物語は終盤、アレクが窮屈なモレク社会に残るか、開放的な反モレク社会に逃げるか選択を迫られた結果、モレク社会に残って抵抗することを決断する様には、苦難にも立ち向かうディックの前向きな姿勢を感じます。この姿勢は「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」にも感じたことですね。
いずれにせよ、結末も意外と?清々しい終わり方で後味も悪くない。ディックらしからぬといえば正しくないのでしょうが、そんな印象の強い作品でした。おもしろかったので、満足です。 -
Posted by ブクログ
22世紀の人類は、極めて高い知能を有する<新人>と超能力を操ることのできる<異人>、そして一般的な<旧人>の3つに分類され、世界は僅かな<新人>と<異人>が60億以上の<旧人>を支配していた。そんななか、窮屈な支配をうける<旧人>の期待を背負って深宇宙へと旅立ったプロヴォーニは状況を打開できる知的生命体の”友人”とともに帰還の途にあった…
遠くの世界から救世主(というより状況を変化させる存在か)が現れるという展開は「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」を思い出します。主人公でちょっと冴えないタイヤの溝堀り職人ニックが不思議な黒髪少女チャーリーと出会って厄介ごとに巻き込まれる展開や、悪役サイドだけど変に人間味のある<異人>グラムもなんだか既視感がある。そんな(個人的には)模範的ディック作品といった感じの作品でしたが、以前読んだ「ヴァリス」が意味不明過ぎた反動なのか、むしろそのお陰でおもしろく読み進めることができました。
しかし、未知の知的生命体に世界を救わせるというのはなんだかディックの、あるいは当時の社会の願望を表しているように思えるのは無知な考えでしょう。ただ、誰にでも外の世界に救いを求めることはあると思いますが、その結果、本書のように心が晴れない終わり方であったり、そもそも本当に世界が救われたのかよく解らないといったところが本書の良さであるように思えます。 -
Posted by ブクログ
航時部シリーズ。過去にタイムトラベルして歴史上の出来事を調査などしている。今回はコベントリー大聖堂の主教の鳥株を探すというミッション。今回は(少なくとも上巻では)何かパニックになるのではなく、ビクトリア朝のイギリスに降下して、テムズ川を下って歴史の齟齬をなくすミッションだ。その他光景が、ジェローム・K・ジェロームの著作「ボートの三人男 犬は勘定に入れません」につながる。本書を読むのなら、こちらを先に読んだ方がより楽しめる。クスクス笑いながら読めるだろう。なお、航時部シリーズは浮き足だった感じで物語が進行するのが多い。ただし、本作も基本的にはそうなのだが、「ボートの三人男」のようにゆったりとした感じもある。そこが異色かな。
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