大森望のレビュー一覧
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臨死体験がテーマのSF。認知心理学者のジョアンナは、神経内科医のリチャードに誘われて臨死体験の研究プロジェクトに着手する。人工的に臨死体験をひきおこし、その謎を科学的に証明しようとするが、被験者不足でジョアンナは自らプロジェクトの被験者となり、ほかの人の臨死体験や自らの体験から、すこしずつ臨死体験の謎を解明していく。
上下巻でそれぞれ650ページずつくらいの大長編。上巻の前半くらいまでは、なかなか話もすすまず医学研究の小難しい話が多かったり、話をやめない登場人物ばかりでほんとうにこの物語自体が「引き延ばしの天才」。でも、ジョアンナが「潜り」はじめてからは、一歩一歩着実に真相に近づいていき、どんどん先が気になってくる。臨死体験の謎が、予想もしてないようなことにつながっていき、展開がよめない。ジョアンナが真相にたどりつきそうでなかなかたどりつかない様子が、舞台の病院が改装工事や通行止めばかりだったり、登場人物たちが留守電やポケベルの行き違いなどでなかなか連絡がとれなかったりする描写と重なり、いろんな意味でこちらももどかしい。下巻に入るともう一気に読めてしまう。
続きは下巻のレビューで。 -
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臨死体験がテーマのSF。認知心理学者ジョアンナは自ら臨死体験の研究プロジェクトの被験者となり、すこしずつ臨死体験の謎を解明していく。
上下巻でそれぞれ650ページずつくらいの大長編だけど、ジョアンナが「潜り」はじめてからは、一歩一歩着実に真相に近づいていき、どんどん先が気になってくる。臨死体験の謎が、予想もしてないようなことにつながっていき、展開がよめない。真相にたどりつきそうでなかなかたどりつかない様子が、舞台の病院が改装工事や通行止めばかりだったり、登場人物たちが留守電やポケベルの行き違いなどでなかなか連絡がとれなかったりする描写と重なり、いろんな意味でこちらももどかしい。
第2部の終わりでまさかの展開で、下巻はもう一気に読めてしまう。衝撃も大きく、最後までよめば展開に納得するものの、やっぱりショック。医学的な研究がテーマだけれど、映画や文学が多く登場し、高校時代の英語の先生がキーパーソン。主人公たちの臨死体験の研究も、そういったものからヒントを得る。象徴的なラストまで読みきると、もう一度最初から読み返し、すべてをひろって考えたくなる。冗長だった部分にも意味があり、物語のいたるところで暗示されていたもの、メタファー……振り返ってみるととても文学的なSFだった。感動号泣、というより、凪がおわった海みたいに心がゆれるような感覚。
ジョアンナとリチャードをはじめ、ジョアンナの親友ヴィエルも、心臓病の幼い入院患者メイジー、敵役のミスター・マンドレイクなど登場人物はみんなわりと典型的なのに魅力的。典型的だからこそかな。ころころと映画をみているよう。文庫のカバー、上巻がメイジーで下巻がリチャードかな。上巻、なんでジョアンナじゃないんだろうと思ってたけど、読んだらちょっとわかった。 -
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これまで読んだフィリップ・K・ディック作品とは少し毛色が違うものが多かったような印象を受けます。
「妖精の王」はファンタジー要素が強く、珍しくしっかりとハッピーエンド!
「欠陥ビーバー」はビーバーが主人公の作品だし、「父さんもどき」は子供たちが主人公(私の頭の中ではスタンドバイミー的な雰囲気でした。いや、内容は全く違いますが)です。
ほかはいつものPKD作品ぽい、不思議な終わり方やディストピア的作品です。
個人的には「宇宙の死者」が面白かった。
「フォスター、お前はもう死んでいるぞ」は命を金で買う的な時代。主人公はいささか過敏というか過激な気もするが、周りの状況と自分の置かれた環境を考えるとああいう気持ちになってしまうのも分かる。
「人間以前」は誰が人間であるということを決めるのか?というひとつの問いが示されている。内容的に中絶問題の関係者から抗議もあったようですが…。
ところであの終わりはどういうことなんでしょうかね。 -
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小説なんて、自分が読んで感じるままでよいのだろうが、他人の見解も気にならないわけではない。こういう本を買うのは、いかにも興味本位っぽくて、自分に自信がなさそうで、ちょっと恥ずかしかったが、好奇心が勝った。
村上春樹を読み込んでいる人は、なるほど、こういう風に読むのかといった参考になる部分もあったし、自分の思ったことは他人も同じように思っているのかと納得できるところもあった。まあ、読んでよかった。
本書は、騎士団長殺しだけでなく、過去に行われた批評として、「田崎つくる」や「1Q84」も取り上げられている。本書の後半を読むために、未読だった「1Q84 BOOK3」を読むという本末転倒的なこともやったが、逆に言えば、本書がBOOK3を読む原動力にもなり、ある意味助かった。 -
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相当変、だけど好き、な世界観。いいのか「服」で、まさか「服」が、と戸惑う私を力ずくで持っていく剛腕。この無茶苦茶で風呂敷広げすぎな世界を大いに真剣に不真面目に書く、この世界観、何かに似てると思ったら、かつて大ファンだった劇団★新感線の作家中島かずき氏が解説してた。やっぱり(笑)。何でか宇宙で全裸の集団率いるヤクーサ・ポンズ、ジャドパーとマストの交渉の場面、ふざけすぎて逆に意味があるのかと思ってしまったし、ザイオードの秘密結社の秘儀の場面の描写とか、もう新感線でした。アマラとエストルーとウィルス船長のトリオも味があるな…。後半やや失速した(というか、カストールと蠅の惑星の場面がさすがにきつくてそのあたりからついていけなくなった)ところもあるが、満足感高いSFでした。
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な ん じ ゃ こ り ゃ(爆)
奇想のSF作家・ベイリーの面目躍如と言うべきか、良くも悪くもベイリー節満載。SF初心者は近づくな危険!(笑)
同じくベイリーの短編集「シティ5からの脱出」を読んだときとほぼ同じ感想なんですけど、ワン・アイディアを徹底的に突き詰めた、非常に純度の高いSence of Wonderが詰まっています。ただし、SFとしての純度の高さと、物語としての完成度は、別物です。物語の完成度を求めてはいけませんヽ( ´ー`)ノ「うひゃー」とか「どひゃー」とか言いながら、○○の一歩手前ギリギリまで暴投しまくるベイリーの奇想に気持ちよく酔いしれつつ読み進めるのが、ベイリー作品の楽しみ方です。
というわけで、かなりマニア向けの作品で読む人を選ぶんですが、初読の「災厄の船」「邪悪の種子」の2編が、完成度が高いのよ。ベイリーなのに。
この2編が収録されているので、普通なら☆3つのところを☆4つとさせていただきました。ベイリー、ちゃんとした話も書けるんだ・・・(笑) -
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英国の奇才バリントン・J・ベイリーの日本オリジナル短篇集は全10篇収録です。単行本初収録の作品ばかりなだけに、SF好きには待ちに待った一冊なのかもしれません。
解説曰く、「ワン・アイデアを極限まで拡大し、それを古いSFの設定に落としこむところがベイリー短篇の真骨頂」とのことで、常人においては到底考え付かないような奇抜な考えに溢れた短篇集でした。まさに「奇想、爆発」な一冊。
そんな奇想天外な10篇のなかでも、「空間の海に帆をかける船」(表題みたときに、コードウェイナー・スミスのあの作品を思い出しましたが、少しばかり似ているだけですね…)は、空間を高次の海と捉えたアイデアが刺激的で、アイデア傾注の作品の中ではとりわけ好きな一作。
しかし、一番おもしろかったのは、蟹(異星生物らしい)の半生を愉快で哀愁漂う作品に仕上げた「蟹は試してみなきゃいけない」でした。この作品かなーり好きです。
それにしても本当にワン・アイデア勝負の作品ばかりで、なんだかおもちゃ箱を開けるときのようなワクワク感につつまれながら楽しめた一冊でした。 -
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久しぶりのSF小説(といっても1ヶ月ぶりだが…)、そして久しぶりのディック作品(といっても4ヶ月ぶりだが…)ということもあって、期待以上に楽しめた本書は、ディック曰く「クズ」みたいな作品とのこと。「後半はまあまあだけど」とフォローをいれるものの、「前半はまるで読めた代物じゃない」と述べるように、ディックは本書にあまりよい思いを抱いていないようですね。その辺りは、訳者あとがきでの大森氏による推察を参照されたし。ちなみに本書は大森氏が初めて翻訳したディック作品とのことで、なんだか訳者あとがきから、大森氏の本書への愛着が感じられますね。
さて、ディックの長編によく感じる「ちくはぐ感」は本書でも相変わらず。気になったのは、登場人物のひとりのフェブス。最初は自分本位の塊として際立ったキャラであったにもかかわらず、途中から扱いに困ってしまったのでは?と思うぐらい物語からフェードアウト(最後らへんでお情け程度で役目を与えられましたが…)。その他にも「青い頭虫人間」やらヴィンセント(彼は終盤で重要な役割に変貌しましたが)などなど、なんだか、あっちいったりこっちいったりな展開でした。ただ、この展開がダメなのかと問われると決してそうではなくて、このちぐはぐ感こそがディック長編の面白さだったりするんですよね。いつもながら不思議に思うところ。 -
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「ブラックアウト」から「オールクリア1」と同2まででひとつの物語。とにかく長かった。面白かった。終盤に行くまでは少しダラダラとした感じはあるが、それらはすべてラストに向けた伏線である。最後にどんどん伏線が回収されていくのは見事。作者も苦労したと後書きにあるのだけど、特殊な時間の流れかたをする本作品においては、辻褄を合わせるだけでも大変な作業になるのは簡単に想像できる。これで意外というか、ある意味ロマンチックな結末まで用意するのだから、コニー・ウィリスはどんだけすごいんだと思わざるをえない。長くて読むのは大変だけど、読み終えた時の満足度は高い。読む価値はあった。
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vN(フォン・ノイマン)と言えば、ノイマン型コンピュータを想像する人は多いだろう。身近にあるパソコンやスマートフォン、電卓などほぼすべてのコンピュータはノイマン型だ。そんなコンピュータがAIとなり、ロボットとなった世界を描いているのかと思っていたら全然違った。巻末の解説を読んで分かったのだが、自己複製するロボットのことをフォン・ノイマン・マシンと呼ぶそうだ。それなら納得。まさにそのようなロボットの物語だ。本作品では、vNと呼ばれている。そのvNはロボットなのだが食事をする(生身の人間とは異なるものだけど)し、子供から大人に成長(食べる量で成長スピードが変わる)し、普通の人が持っているロボットとは異なる。食べた量が多ければ、男女関係なく子供を産める(生殖なしで)し、主人公のエイミー(vN)は祖母を食べてしまったりなどとてもロボットとは思えない行動をする。ノイマン型コンピュータを頭の中で想像していた人は、「何じゃこりゃ」と感じるだろう。もちろん私もそう思いました。では本作品がトンデモ本かというとそうではなく、前提条件(作品の設定)を受け入れてしまえば、ロボットと生身の人間との関わりかたなどをアクションたっぷりに見せてくれる。最後の方は恋愛もあり、ロボットの心についても提示される。物語の初期設定が多少強引だと感じるが、ストーリー展開に無茶なところはないので素直に楽しめる。
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西暦2060年の学生3人が第二次世界大戦中の英国にタイムトラベルして、そこで騒動に出くわす物語。何も起こらなければ、大戦中の出来事を実地調査して現代(2060年)に戻るだけの話である。もちろんそれではお話にならないので、タイムトラベル前から突然のスケジュール変更(変更理由は明かされていない)などもあり、何かハプニングが起こることを予感させる。当然だが、過去に送られた3人はそれぞれ想定外の出来事が起こり、現代に戻れない状況に陥る。3人がそれぞれ微妙なすれ違いがあったり、読者をやきもきさせる。「あー、出かけるんじゃなくて、そこで待ってろよ」と何度思ったことか。そんな煮え切らない状況のまま本書は終わる。続きは続編の「オールクリア」でってことだ。3人が過去に置いてけぼりにされている状況からどのように帰還できるのか、次巻を読むのが楽しみである。