大森望のレビュー一覧
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英国の奇才バリントン・J・ベイリーの日本オリジナル短篇集は全10篇収録です。単行本初収録の作品ばかりなだけに、SF好きには待ちに待った一冊なのかもしれません。
解説曰く、「ワン・アイデアを極限まで拡大し、それを古いSFの設定に落としこむところがベイリー短篇の真骨頂」とのことで、常人においては到底考え付かないような奇抜な考えに溢れた短篇集でした。まさに「奇想、爆発」な一冊。
そんな奇想天外な10篇のなかでも、「空間の海に帆をかける船」(表題みたときに、コードウェイナー・スミスのあの作品を思い出しましたが、少しばかり似ているだけですね…)は、空間を高次の海と捉えたアイデアが刺激的で、アイデア傾注の作品の中ではとりわけ好きな一作。
しかし、一番おもしろかったのは、蟹(異星生物らしい)の半生を愉快で哀愁漂う作品に仕上げた「蟹は試してみなきゃいけない」でした。この作品かなーり好きです。
それにしても本当にワン・アイデア勝負の作品ばかりで、なんだかおもちゃ箱を開けるときのようなワクワク感につつまれながら楽しめた一冊でした。 -
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久しぶりのSF小説(といっても1ヶ月ぶりだが…)、そして久しぶりのディック作品(といっても4ヶ月ぶりだが…)ということもあって、期待以上に楽しめた本書は、ディック曰く「クズ」みたいな作品とのこと。「後半はまあまあだけど」とフォローをいれるものの、「前半はまるで読めた代物じゃない」と述べるように、ディックは本書にあまりよい思いを抱いていないようですね。その辺りは、訳者あとがきでの大森氏による推察を参照されたし。ちなみに本書は大森氏が初めて翻訳したディック作品とのことで、なんだか訳者あとがきから、大森氏の本書への愛着が感じられますね。
さて、ディックの長編によく感じる「ちくはぐ感」は本書でも相変わらず。気になったのは、登場人物のひとりのフェブス。最初は自分本位の塊として際立ったキャラであったにもかかわらず、途中から扱いに困ってしまったのでは?と思うぐらい物語からフェードアウト(最後らへんでお情け程度で役目を与えられましたが…)。その他にも「青い頭虫人間」やらヴィンセント(彼は終盤で重要な役割に変貌しましたが)などなど、なんだか、あっちいったりこっちいったりな展開でした。ただ、この展開がダメなのかと問われると決してそうではなくて、このちぐはぐ感こそがディック長編の面白さだったりするんですよね。いつもながら不思議に思うところ。 -
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「ブラックアウト」から「オールクリア1」と同2まででひとつの物語。とにかく長かった。面白かった。終盤に行くまでは少しダラダラとした感じはあるが、それらはすべてラストに向けた伏線である。最後にどんどん伏線が回収されていくのは見事。作者も苦労したと後書きにあるのだけど、特殊な時間の流れかたをする本作品においては、辻褄を合わせるだけでも大変な作業になるのは簡単に想像できる。これで意外というか、ある意味ロマンチックな結末まで用意するのだから、コニー・ウィリスはどんだけすごいんだと思わざるをえない。長くて読むのは大変だけど、読み終えた時の満足度は高い。読む価値はあった。
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vN(フォン・ノイマン)と言えば、ノイマン型コンピュータを想像する人は多いだろう。身近にあるパソコンやスマートフォン、電卓などほぼすべてのコンピュータはノイマン型だ。そんなコンピュータがAIとなり、ロボットとなった世界を描いているのかと思っていたら全然違った。巻末の解説を読んで分かったのだが、自己複製するロボットのことをフォン・ノイマン・マシンと呼ぶそうだ。それなら納得。まさにそのようなロボットの物語だ。本作品では、vNと呼ばれている。そのvNはロボットなのだが食事をする(生身の人間とは異なるものだけど)し、子供から大人に成長(食べる量で成長スピードが変わる)し、普通の人が持っているロボットとは異なる。食べた量が多ければ、男女関係なく子供を産める(生殖なしで)し、主人公のエイミー(vN)は祖母を食べてしまったりなどとてもロボットとは思えない行動をする。ノイマン型コンピュータを頭の中で想像していた人は、「何じゃこりゃ」と感じるだろう。もちろん私もそう思いました。では本作品がトンデモ本かというとそうではなく、前提条件(作品の設定)を受け入れてしまえば、ロボットと生身の人間との関わりかたなどをアクションたっぷりに見せてくれる。最後の方は恋愛もあり、ロボットの心についても提示される。物語の初期設定が多少強引だと感じるが、ストーリー展開に無茶なところはないので素直に楽しめる。
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西暦2060年の学生3人が第二次世界大戦中の英国にタイムトラベルして、そこで騒動に出くわす物語。何も起こらなければ、大戦中の出来事を実地調査して現代(2060年)に戻るだけの話である。もちろんそれではお話にならないので、タイムトラベル前から突然のスケジュール変更(変更理由は明かされていない)などもあり、何かハプニングが起こることを予感させる。当然だが、過去に送られた3人はそれぞれ想定外の出来事が起こり、現代に戻れない状況に陥る。3人がそれぞれ微妙なすれ違いがあったり、読者をやきもきさせる。「あー、出かけるんじゃなくて、そこで待ってろよ」と何度思ったことか。そんな煮え切らない状況のまま本書は終わる。続きは続編の「オールクリア」でってことだ。3人が過去に置いてけぼりにされている状況からどのように帰還できるのか、次巻を読むのが楽しみである。
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50代からのアイドル入門
- カート
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試し読み
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屍者の帝国の世界観を元にした短編集。シェアードワールドというらしい。二次創作みたいなもの?
なかなか良質な小編が多かったなぁ。宮部さんの語りはやはりうまい。山月記やくまのぷーさん、アルジャーノンに花束をなど他作品のネタを混ぜ混むのが流行りなのかお手前なのか?とりあえず好き勝手ぶちこんどけーみたいなノリもある。
特に好きだったのは「神の御名は黙して唱えよ」と「ジャングルの物語、その他の物語」かなぁ。宗教観や文体・展開など、伊藤先生へのリスペクトの現れ方が好み。
編集者や円城先生の裏話なんかも楽しく読めた。ノリ的には同人的な、商業性の薄い話だったんだね。そりゃ賛否あるだろうけど、そういう悪巧み的なノリは好きです。 -
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「屍者の帝国」の世界観を共有したアンソロジー(シェアードワールドというらしい)。津原泰水、たぶん初読でちょっと苦手。坂永雄一、元ネタへの知識がないせいか入り辛い。この2篇がちょっとオイラには合わなくて、後は割と好きな部類。
藤井太洋、戊辰戦争と南北戦争をムリヤリつないでる感はあるけど、そこ含め単純に冒険活劇としてノリがいい。
高野史緒、「カラマーゾフ」を食わず嫌いで読んでないんだけど、他あちこちから拾ったネタをどんどん放り込むスタイルは好きだ。
仁木稔、伊藤計劃本線の匂いが一番する中央アジアもの。伊藤計劃アンソロジーでウィグルの話書いてたのこの人だっけ?
北原尚彦、屍者の帝国のキャラを使いつつ、ホームズノリもありつつ。
山田正紀、何か屍者の設定がこれだけ違う気がする。マジモンのゾンビやん。
宮部みゆき、さすが、上手い。設定自体が「そこへもっていくか」ってのもあるし、破綻させることなくきっちりまとめてるし。 -
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ネタバレ屍者の帝国の世界観で、8人の作家陣が新作短編を競作する書き下ろしアンソロジー。
様々なジャンルで屍者の物語を紡がれている。
ほとんどの作品で感じられるのは、屍者を運用しているのが当たり前の世界となっていて、現代のロボットが日常に広がっていく感じとダブって面白い。
皆んなそうだろうが、中でもやっぱり北原尚彦の「屍者狩り大佐」がワトソンたち一行が出てくる物語でテンション上がる。
他にも宮部みゆきや山田正紀らベテラン陣も執筆していてどれも一読の価値あり。
最後に円城塔の「屍者の帝国」を完成させた時のインタビュー記事も載っていて、もちろん本当は違うのだろうが、「必要以上に思い入れることなく程よく肩を抜きながら」という感じが、よりこの作品における伊藤氏と円城氏二人の想いが表されているようで、なんかジーンとくる。
こういう感じのアンソロジー、他の作品でもやってくれないかなぁ。 -
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久しぶりのF.K.ディック。短編集。
しかもPSYCHO-PASSを読んだ後での「シビュラの目」はなかなか運命的な出会いと言わざるをえない。
「地図にない町」は三崎亜記を彷彿とさせるテーマ。地図にない町に住んでいるという乗客から、世界の境目が次第に揺らいでゆく。
「新世代」「ナニー」のような、ロボットを用いたシニカルなSFも面白い。
子供の教育を完全にロボットに任せ、それが最善と信じて疑わない社会。そんなバカな、と当時の読者が思った以上にはリアルに近付いている。
またタイトル「人間以前」も衝撃的。
人口増加率をゼロにするためにとられた積極策。それが12歳以下の魂のない子供を「人間以前」と見なし、不必要の烙印を押された者は、収容所で殺されてしまうというもの。
このストーリーが非常に恐ろしいのだが、「人間以前」と「どう判断するのか?」という線引きへの問いかけは我々の喉元に突き付けられる。
ディックの発想、ユニークさ、ヤバすぎる。
一冊を終えると、また次に、と手を出したくなるからまた厄介である。
そして、もう次に買う作品は決めている。