乃南アサのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
先が気になって仕方なく、一気に読み終えました。
ある事件をきっかけに失踪した婚約者を追い続ける萄子、時代背景は高度成長期、絵に描いたようなお嬢様暮らしの中では知りえなかったことを勝を追いながら経験していきます。戦後20年近くたっても、まだまだ日本には貧しさから脱却できていない部分があったことをあらためて感じました。
それにしても勝には失望してしまいました。現実とは思えない事件に巻き込まれたとはいえ、自分も被害者といえるでしょう。そして、警察官であったからこそ、逃げずに正面から事件に向き合うべきだったのでは? まだ、もどかしさが抜けません。
その後、萄子の夫となる淳もいい人ではありますが、勝の死 -
Posted by ブクログ
戦後、満州から引き揚げてきた次郎一家。父も兄も戦死、残されたのは病気の母と子どもだけという境遇。以前読んだ「秋好英明事件」を思出だしました。
貧しく無学である故、次郎は殺人を犯してしまいます。塀の中ではじめて、次郎は自らの人生を注ぐべき対象となる陶器作りに出会い、目標をもって生きていくことになります。
そんな次郎とは対照的に、塀の外では戦後復興で著しく経済成長していく日本と、それに並走するように妹の君子が女優として活躍していきます。昭和の移り変わりが随所に描かれ、実体験はなくとも懐かしいと感じられました。
出所後、次郎は自分をとりこにした汝窯を追い求め、苦しみ、最後に彼なりに昇華して亡くなって