乃南アサのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
過去に罪を犯して刑務所暮らしをし、
出所してひっそりと健気に生きている二人の女性の物語といえば、
『いつか陽のあたる場所で』ですが、この作品はその続編にあたります。
前作では、主人公の一人綾香が詐欺にあいます。
それまでパン屋のパートで、
コツコツためた70万円の貯金をだまし取られてしまうのです。
そんな綾香をなぐさめつつ、一緒に食事をしたりして、
友情を培っているのが、同じ刑務所暮らしをした仲間の芭子でした。
この作品は、詐欺に会って以来、
今まで以上に節約をし続けている二人が
くじ引きで当たった一泊二日の「大阪USJとなんばグランド花月で楽しむツアー」に参加するところから始まりました。
綾香は大阪で高校時代の同級生の男子と偶然に会います。
そして、彼から綾香の過去は
故郷でももう知れ渡っているということを聞きました。
前科者の自分には、帰る故郷もなく守ってくれる家族もいない。
その事実を痛いほど、綾香は感じ取ります。
一方、前作でマッサージ店の受付のアルバイトをしていた芭子は
院長のセクハラにあい、仕事を辞めていました。
新しい仕事はなかなか見つかりませんでしたが、
この作品でやっと新しい仕事が見つかりました。
ペットショップの雑用係です。
でも犬猫用のオリジナルの洋服をサイドビジネスに始めたところ、
これが大当たりします。
自分で布地を選びデザインを考えて作った洋服が、
ペットの飼い主に気にいられて徐々に売り上げも増えていく様子に
芭子は今後の人生の生きがいを見出していました。
過去を他の人から知られまいと、
ひっそりとした生活をし続ける二人ですが、
綾香と同じように夫からDVを受けている女性と
ふとしたことから知り合います。
よくないから別れなさいとすすめる二人の忠告をきかないその女性は、
ある日、二人の目の前から姿を消します。
そしてニュースで流れた彼女と夫の犯罪。
芭子と綾香は無事に一般世間で暮らしているのに、
その彼女は、あの刑務所に送られてしまうのです。
つつましやかに平凡に生きていける幸せをかみしめる二人。
職場で辛い目にあっても、生きていくしかないから、
ぐっと我慢して笑顔をたやさない綾香。
家族から絶縁されても思い浮かべる身内がいるだけでも幸せだと
自分の境遇を感じ取る芭子。
前科者物語とはいえ、当事者の視線で描かれた
なんとも平凡でサスペンスなど微塵もないストーリーです。
ときどき登場するおせっかいな警察官の高木聖大君も
一体君は何をしているの?と、言いたくなるほど、
何の役割もはたしていない、ただの通りすがりの人物となっています。
登場人物すべてがこんな調子で、
谷根千のおっとした下町の雰囲気が色濃く漂う作品でした。
このシリーズ、まだ続くようです。
芭子と綾香がどのようにたくましく生き抜いていくのか、
しっかりと見届けたいです。 -
Posted by ブクログ
ごく普通に大学を卒業し、就職した片貝耕平は、
転職した会社が倒産、派遣会社に登録するがバカにされているとか
差別されてるとか不満ばかりでどの派遣先でも長続きせず辞めてしまう。さらに、ギャンブルに手を出し大当たりした後、女に騙され有り金を奪われる。
ホームレスになりかけたところを、新聞販売店に拾われる。
これでもか、これでもかという転落人生。
しかし、それは世の中のせいにしたり、誰かが悪いと決めつけたり、
自分の身から出た錆だということに気がつかない主人公。
どこにでもいるような世の中をナメてる甘いバカな男。
もうちょっと魅力があればいいのに、
まったく共感はできない。
なのに、するすると読めちゃう。
いったいこの主人公はどうなるのか、
どこまで落ちるんだと気になってしまうのだ。 -
Posted by ブクログ
先が気になって仕方なく、一気に読み終えました。
ある事件をきっかけに失踪した婚約者を追い続ける萄子、時代背景は高度成長期、絵に描いたようなお嬢様暮らしの中では知りえなかったことを勝を追いながら経験していきます。戦後20年近くたっても、まだまだ日本には貧しさから脱却できていない部分があったことをあらためて感じました。
それにしても勝には失望してしまいました。現実とは思えない事件に巻き込まれたとはいえ、自分も被害者といえるでしょう。そして、警察官であったからこそ、逃げずに正面から事件に向き合うべきだったのでは? まだ、もどかしさが抜けません。
その後、萄子の夫となる淳もいい人ではありますが、勝の死を20年以上たってから告げるというのも、どうなのかとか、なんかすっきりしませんでした。
読後感は晴れませんが、読み応えのある小説でした。当時の風景や、米国占領下の沖縄の描写も魅力的です。