乃南アサのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
めっちゃ面白い。最高。主人公の女が計算高くて自尊心高くて泥臭くて最高。聖人君子が出てくるとすぐに「こんな人現実には~」ってへそを曲げちゃう永遠の反抗期な自分にとって、良い子の表面化にヘドロが渦巻くような主人公、大好きです。「自分に似てるからじゃん」と言われましたが、滅相もない。私はあそこまで計算して行動できませんし、イケメンのためにお酒タバコを我慢できませんわ。
そういえば、一人称で語るのは主人公の翠と不倫相手の荻原だけだから、メインは二人だったのか。翠の印象が強烈すぎて荻原は霞んでしまった感じがする。と言うか、若い弾けるエネルギーと老いて萎みゆく人間だから、必然的に翠のほうが印象に残るわな -
Posted by ブクログ
ネタバレ読み終わりました。言葉がグサグサ刺さりました、途中ほんとしんどかった…。未来の自分かもしれないと思うと笑えないっていう。この主人公の人生が悲惨すぎて、逆に自分が安心してしまったりね。だからどうなっていくのか目が離せないっていうのもあったけど。
うーん、「今日のことだけを考えて生きなさい」ってあのタイミングで言われたら、どうなんでしょうねぇ。自分が耕平だったらとりあえず泣き崩れるかも。なんか刺さる言葉ではあるよね…。
あとは非正規雇用について自分が考える意味でも、今読むべき作品だったと思います。正直な感想、上下で重い内容だった。笑 -
Posted by ブクログ
職人や伝統工芸をテーマにした、これはブラックショートというんでしょうね。短編が6つありました。線香職人、染工芸、酒造、歯科技工(ジュエリーも)、能面職人、提灯職人、外側からしか知らないその職人さんの仕事ぶりも興味深く読める。そしてそれぞれに、ぞっとするオチが!わかってしまうオチもあったけどそれはそれとして。個人的には能面職人がある踊り手の注文のために何度も何度も何度もうち直しした「泥眼」(嫉妬や怒りの情念が正に正気を失わせようとしている瞬間の女の顔。女が執念の鬼、怨霊の化身となる寸前の、最後の人間の表情。)に引き込まれました。一番アサさんらしいと思いました。