あらすじ
川崎、熱海、焼津、田川……わずかな手がかりをもとに、萄子は必死に婚約者の跡を追った。やがて捜査から、ある男が重要人物として浮上するが、勝が逃亡する理由は不明のまま。勝への思いが消え入りそうな萄子だったが、当時米領の沖縄・宮古島に彼がいる可能性を大阪で知る。島でわかった慟哭の真実とは? 1960年代の出来事・風俗をちりばめ、男女の一途な愛を描いた傑作ミステリー!
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Posted by ブクログ
まだ私が若かりし頃、20代の時に読みました。
今までで面白かった本は?と聞かれたら、宮部みゆきさんの「火車」と、乃南アサさんの「涙」と答えます。20年以上経ってるのに、今だに面白かった記憶が強い本。内容は忘れてますけどね。
「涙」は当時、半身浴をしながら小説を読むのが日課だったんだけど、もう本当に涙、涙で、風呂場でワーワー泣いた記憶があります。
もう、どうにもならないようなことが次から次に起こって、どうしてこんなことに〜って、泣いた気がします。
確か、帯にもピーコさんの推薦文が載っていて、涙、涙が止まらなかった!的なことを書いてありました。その通りだ!と当時は思ったものです。
再読したいけれど、今は感じかたが違うだろうし、
昔のように涙ひとつも流せなかったら、と思うと哀しいので、できないでいます。
昔の記憶は大事にとっておこうかと。
涙の真相
突然、目の前から消えた婚約者を探し求め各地を訪れ、ついに「地の果て」にたどり着いた女性。そこには、変わり果てた姿と昔から変わらない姿の両面を持った婚約者が暮らしていた。この「地の果て」でようやく愛する男性と再会することができた女性の「涙」を感じる瞬間。乃南アサさんの「地の果て」を表現する情景は透明感と寂寥感が目の前に広がり、さらに読みたくなります。
Posted by ブクログ
年の瀬、萄子(とうこ)の家に、結婚して家を出た娘の真希がひょっこり帰って来ます。軽い調子で話していますが、夫に浮気され、実は相当傷ついているようです。結局、真希は3ヶ月後に離婚しますが、友達に誘われていった沖縄から、立ち直りを示唆する明るい便りが届き、萄子はほっとします。
ただ、安堵する一方で、萄子は昔のことを思い出してしまいます。人との別れ、沖縄、これらは萄子には、できれば封印しておきたい凄絶な経験と結びついていました。
「ごめん、もう、会えない」
東京オリンピックの前日、婚約者であり、刑事の奥田勝は電話でそう告げて失踪。その後、奥田の先輩刑事の娘が惨殺死体で発見されます。萄子はわけがわからないまま、こんな状況に納得できず、彼を探す決心をします。
世間知らずのお嬢さんだった萄子は、周囲の反対に耳を貸さず、わずかな手掛かりを頼りに、川崎、熱海、焼津、大阪等を探しまわり、最後に、当時まだアメリカ領の沖縄、宮古島にたどり着きます。
東京オリンピックの頃の日本の空気がよくわかりますが、圧巻は、宮古島の台風の描写です。当時の記録を丹念に調べたのでしょう、まるでそこにいたかのように嵐の凶暴さを描く作者の筆力には脱帽です。こうした描写が、話しの進行に重みを与えているのだと思います。
この本について、「私は泣けなかった」と書いている感想を見かけましたが、私はそもそも「泣きたい」と思って本を読むつもりはないので、そんなことはどうでもいいんです。面白かったです。いい時間が過ごせました。
「一度、言い出したら聞かないじゃないか。本当に、お前によく似てる」
「あなたって、本当に辛抱強い」
プロローグに出てくる、萄子と、夫の淳とのやりとりですが、最後まで読むと、何気ないこの会話の深さがわかります。
Posted by ブクログ
泣きました。
上巻では見えなかった、登場人物の側面が見えてきて、萄子の奥田探しの旅も大スペクタクルとなり、一気に読んでしまいました。
なんで、現代から始まったのかな?と思いましたが、現代で締めくくられ、実は、昭和の事件だけでもかなりの小説だったのに、そこにある現代がまた涙をさそう。
今まで読んだ、乃南作品で一番良かった。
Posted by ブクログ
情景描写、心理描写、内容、すべてが萄子、韮山、関係する人達の気持ちを強烈に感じさせ涙腺崩壊を何度も我慢しながら読み進めたが最後の章はこらえきれない。
押し殺すことも納得することもできない気持ちをエネルギーに萄子は勝の姿を追い続ける、同じように勝を追っていた韮山は見えていなかった事実に気づく、それぞれの気持ちの揺れは読んでいるこちらの気持ちも最後まで揺り動かされ続けまさに「涙」。
読後は穏やかな気持ちになれる、しばらく間をおいて再読しようと思う。
Posted by ブクログ
久しぶりに泣いた本。
自分の生まれる前の日本の様子に驚きながら、登場人物の心境に頷いたりしながら、結末が早く知りたくてぐいぐいと引き込まれるように読みました。
萄子が真実を求める気持ちに共感しつつも人はあれほど強く変わっていけるのだろうか、と妙に感心したりもしました。
事件そのものは、かなり惨いものだったけど最後は本当に切なくて色々なことを考えさせられました。
それにしても、のぶ子は…。
Posted by ブクログ
主人公は刑事である婚約者と東京オリンピック後に式を挙げる予定だったが、オリンピック直前に電話で自分のことは忘れるよう言われ姿をくらましてしまう。混乱する主人公に彼が殺人事件の容疑者であるということも知らされる。しかも被害者は婚約者とコンビを組んでいた老刑事の娘だった。
主人公は婚約者の潔白を信じながら、彼を自力で探し出すことを決意。細い糸をたどりながら川崎、熱海、焼津、筑豊と彼を追うがすんでのところで会えず仕舞いでいた。
一方、その後の捜査で彼は嵌められただけということがわかる。しかし黒幕を裁くためには何としても彼の証言が必要。そのことを知った主人公はさらに彼の足取りを辿るが、ある偶然から彼の居場所をつかむ。向かったのはアメリカ占領下の宮古島。そこで彼と再会し事の真相を知るのだが、それはあまりにも理不尽で耐えがたいものだった。
追っては逃げられ追っては逃げられの追走劇。向かったあちこちで親切な人に出会ったり、たまたま情報を持っている人に出会ったりなど、人探しするのにこんなに簡単にいくかなとは思うものの、婚約者を追う執念は漂ってくる。
主人公もそうだが、娘を殺された老刑事側から事件に迫っていくのだが、娘の知らなかった一面を目の当たりにした親の心情や情けなさなど風采の上がらない刑事であるが故に迫るものがある。
そして今までの全ては最後の章に向けての助走のような感じで、それが最後の章に活きてくる。
この作家さんは痛みや悲しみ、背負ったものによる苦悩を描くのがうまい。
Posted by ブクログ
R様オススメ本下巻
まあこんなひどい悪党がいたものだと、今更ながらにひどい事件だったと思わされる。
まだ沖縄へ行くのにパスポートがいる時代のお話。
下巻は一気に読ませる内容でした。
すごく悲しいお話なのに、最後はじんわりときました。
Posted by ブクログ
うちにあった本を再読。でも内容をすっかり忘れていたので、引き込まれて読みました。上下巻のけっこうなボリュームの長編。
東京オリンピックの年、結婚を控えていた萄子の前から「もう会えない」という電話一本で突然姿を消した刑事の奥田。
何があったのか、奥田はどこにいったのか、失意の中で奥田を追う萄子。川崎、熱海、焼津、田川。あちこちであと少しというところで会えない。
そして最後にたどり着くのが宮古島。驚愕の真実が明かされる。
萄子の気持ちが丁寧に描かれていて、引き込まれる。
結末はつらい。どうしようもなかったのか、奥田の正義感が招いたことなのか、萄子も奥田も悪くないのに。刑事の韮山も印象的。萄子も奥田も韮山も被害者で犠牲者だ。やるせない。
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萄子よ、いや勝よ、日本中いろんなとこ行くなあと思いましたが、きっと乃南さんは、この当時の色んな日本を描きたかった、見せたかったのかな。
まさに萄子と同世代の人なら懐かしさを感じるだろうし、知らない人なら賑わっていた熱海とか、パスポートが必要だった沖縄に旅行するとこんな感じだったんだということがわかるし。
この当時の沖縄のことが書かれた本とか読みたくなりました。
勝の話でなぜ姿を消したのかはわかったど、やっぱり誠意がなかったよなあ、という気持ちは拭えません。
でも別れのシーンは切なくなりました。
ここに出てくる中で誰の役をやりたいかといえば、断然淳です。性別違うけど。一番おいしい。
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ある日、突然愛する人と会えなくなる切なさ 恋人・親子 そんな事はあるはずがないと思っているから、唐突な別れに誰もが戸惑うのだろう。だからこそ、今の日常をだいじにせねば、と思う。次回東京オリンピックが騒がれている中、半世紀前の東京オリンピックを背景に事件は進むが、どちらの時代にも思いがある私が感慨深いものがあった
Posted by ブクログ
ハイスピードで読み終えました。
辛い辛い毎日。ずーっと辛いばっかりで苦しいストーリーです。
昔、まだ成人していない頃、好きだった人の住んでいるところにはるばる訪ねていったらすでに婚約者と一緒に暮らしてたという場面を思い出して本格的に息苦しくなりました。
また、石垣で本格的な台風にあい、1日延泊してコテージに隔離された事、翌朝に軽トラックが仰向けになっていた事など思い出しました。
この物語は結局、想像できないほど辛くても生きるという事を訴えたいのでしょうか。
でも最初から最後まで辛いばっかりなんて、それじゃああんまりなので、なんとか楽しくなる様に頑張ろうと思います。
Posted by ブクログ
一本筋の通った主人公と婚約者。
昭和の時代を感じます。
人生ハプニングがあっても、自分の芯をきちんと持っていれば、ふと気がづいたとき助けてくれる人がそばにいてくれて、それなりに幸せに暮らしていいける。
切ないけれど、希望も感じるお話でした。
奥田の最後は悲しかったけど、それまでは幸せだったと思いたい。
Posted by ブクログ
萄子がこれだけ世間知らずで、頑固で、甘ったれたお嬢さんなのは、これはやはり乃南アサの作戦なのであって…。こんな娘さんだからこそ、川崎や熱海や九州の炭鉱町や、そして宮古島までも勝を追いかけて行くし、そこですっかり浮いてしまって自己嫌悪にも陥る。いく先々で出会う女性たちや、のぶ子とも、そして再会した勝とも違う人生を生きていくしかないことを、はっきり分からせる人物設定なのだと思った。読者である私は「こんなにまでして勝を追いかけて。周りに迷惑をかけて。淳を傷つけて。私ならこんなことはしない。」と思いながらも、結局はこの世界に引き込まれていくのだ。
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先が気になって仕方なく、一気に読み終えました。
ある事件をきっかけに失踪した婚約者を追い続ける萄子、時代背景は高度成長期、絵に描いたようなお嬢様暮らしの中では知りえなかったことを勝を追いながら経験していきます。戦後20年近くたっても、まだまだ日本には貧しさから脱却できていない部分があったことをあらためて感じました。
それにしても勝には失望してしまいました。現実とは思えない事件に巻き込まれたとはいえ、自分も被害者といえるでしょう。そして、警察官であったからこそ、逃げずに正面から事件に向き合うべきだったのでは? まだ、もどかしさが抜けません。
その後、萄子の夫となる淳もいい人ではありますが、勝の死を20年以上たってから告げるというのも、どうなのかとか、なんかすっきりしませんでした。
読後感は晴れませんが、読み応えのある小説でした。当時の風景や、米国占領下の沖縄の描写も魅力的です。
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東京オリンピックの警備をおこなう警察官の行方を、その婚約者がわずかな手がかりをもとに追いかけていく。苦しい、切ない、信じたい、そうした思いが伝わってくるストーリー展開。沖縄で嵐に見舞われたラストシーンは悲しくも美しい。
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一気に読みました。
人生には何が起こるかわからない。
ただ、救いがないなーと思う。
それもその人らしい人生と言ってしまうのはあまりに悲しい。
一番凄いのは淳。
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胸が締めつけられる思いになる小説でした。
生きていくこと、そこに価値があり、涙することもある。
大きな喜びも、小さな喜びも、大きな悲しみも、小さな悲しみも
年齢を重ねる事で、同じように喜べるようになり、同じように悲しむ事ができるようになる。物事の価値は他の人の評価だけで決まるのではない。歳月は、人に何かを教えてくれる。
Posted by ブクログ
東京オリンピックを直前に、主人公・萄子の婚約者・勝は突然、姿を消してしまう。わずかな手がかりをもとに、川崎、熱海、焼津、そして最後、沖縄、宮古島へ向かう。
当時の出来事や風俗も踏まえつつ、戦後復興期の日本の光と闇も見事に描いている。
失踪モノとしては、松本清張の「ゼロの焦点」と並び、実に読み応えある一冊。
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戦後、高度成長期の日本。婚約者の刑事である勝が突然失踪し、勝の先輩の娘が無惨な形で殺害される。萄子は、容疑者としての疑いをかけられた勝をどうしても諦められず川崎、熱海、焼津、田川、、と小さな手掛かりを手繰って捜し求め彷徨う。
結末は、正義感と自らを顧みず人のために自己犠牲を惜しまない勝の人格と、刑事特有の逆恨みに対する輩からの制裁に巻き込まれた凄惨な事件。
事件の展開が非常にゆっくりであるが、最終章である「涙」はやっと再会出来た勝と萄子の抗うことができない嵐と人生を絡めた壮大なクライマックス!
結末が気になり上下一気読みした物語だった。
Posted by ブクログ
上巻の前半読んでいるときは、どうも萄子のお嬢様特有のわがままさや自己中さが少し鼻について感情移入しにくかったが、婚約者の謎の闘争を調べていくうちに大人になる彼女にはひきこまれた。
60年代の日本の描写もよく描かれており、その点でも興味深い。
警察が追えてないのに素人がたどり着ける違和感はともかく、
奥田の最後はなんともやるせない。
切ない話だった。
Posted by ブクログ
辻村さんらしい話。
世間知らず、周りに無興味、だからこそ魅力的な人と、その人の感情的な部分が振り回す周りの人たちの話。
イライラする可愛らしさと、対照的に、痛いほどわかる愚かな人間らしさ。
Posted by ブクログ
思ったとおりの展開で驚きはなかった。
それにしてもこの作家は、登場人物に好意を持っているのかな。魅力のある人物が少なすぎる。
涙一滴も流れず。
Posted by ブクログ
結果が見え見えなものを追いかけて読み込む作業はしんどかったかな。
ひとつの偶然から歯車が狂っていくことはあるかもしれないけれど、
このお話は
誰も救われない。
虚しさだけが去来した。
Posted by ブクログ
この人の作品は好きじゃないけど、初めて泣けた。
主人公がついに婚約者を見つけて、真実を知って、本当に別れる時、泣けた。婚約者との過ごした思い出と一緒に、その時の感触やその時のせつなさやその時の空気まで思い出す、あの感覚。この小説の主人公がどうとかいう感情ではなくて、自分の経験のその感覚を思い出して泣けた。あの時の、あの感覚は、もう、二度と手に入らないだろうと知って悲しかった。
Posted by ブクログ
追い掛けて、追い掛けて、未練でなく。
という、最後のおすぎさんによる解説の言葉がグッときた!
物語の内容はあんまりグッと来なかった。
「やはりそうであったか・・・に、してもだ」という感じです。あとさ、萄子以外の登場人物の女性がほぼ水商売って、これはいかに?
Posted by ブクログ
勝が何故全てを棄てなければならなかったか、正義感が強いが故に起こった出来事。
現実世界でもここまではなくてもあるんだろうなと思ってしまう。
しかし、大人しそうな母でも女なのである…ということか。