人は誰でも必ず老い、死に至る。平凡な人生なんて一つもない。だから誰の人生でも、数奇な人生なのである。
著者のマンガ作品は読んでいるが、エッセイを読むのは初めて。
これだけ特徴的な人生を送っている著者ならではの死生観が表れている。
人は人生の経験が深みとなって、言葉に重みを加えていくのだと改めて感じた
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著者の若い頃の体験も記載があったが、なかなか普通の人生ではない。
今となればマンガで成功した大先生と言えるが、経歴からすれば遅咲き。
決して若いとは言えない年齢での成功だった。
つまり、この成功を掴むまでは、相当な苦労をしたのだと思う。
こういう人生を送っていること、そのものを運命と言ってしまってよいものか。
基本的にお母様の死について記した本書であるが、まさにこの母にしてこの子あり。
子は、親の影響からは逃れられないものだと改めて思う。
お母様の子育ての影響が、著者の人生を形作っているのは間違いない。
全員が全員そうではないかもしれないが、お母様の著者への愛、そして著者のお母様への愛が溢れていて、読んでいてすごく心地が良かった。
「この親の子どもに生まれてよかった」
そう思える人生を送りたいし、自分の子どもにも少なからずそんな風に思ってもらえると幸せだろうと思う。
人は必ず老いて、そしていつか死ぬ。
人間とはそういうものなのだから、拒絶感を持つことは間違っている。
若者は老人を敬えばいいし、老人も節度を持って、人生を送ればいい。
なぜ日本人は老人を老害として扱うのかという記述があった。
これは単純に日本では老人の人口が増え過ぎているという問題もある。
誰だって好き好んで他人に迷惑をかけたい訳じゃない。
しかしながら、人は一人では生きていけないのが本来なのだ。
野生動物には老いがないのに、人間にはある。
野生動物は、死期を悟ると群れから離れ、一人静かに死ぬという。
人間と言うのは、そういう意味では、動物の中でも特に不便な生き物であると言える。
だからこそ、自分も50代になって感じるのだが、「善く生きる」という意識が大切なのだろうと思うのだ。
日々を一生懸命生きればいい。
楽しく、朗らかに。
そして、清く、正しく、美しくか。
「夕焼けは雲があるほど美しい」
夕焼け空を見ただけで、感動したり、生きていることを実感したり、そういう人生を送れれば良いのだと思う。
何歳になっても、今この瞬間を一生懸命に生きることが大切なのだ。
(2023/8/12土)