野矢茂樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「考えさせない時代に抗して」というタイトルに惹かれた。
自分に考える能力が乏しいということには薄々気づいていたが、避けて生きてきた。30も半ばを超え、目を背けられなくなってきた。遅い、遅すぎる。こうも怠惰な人生を送ってきたが故に、今更「考えろ」と言われても到底無理な話である。
まずは知覚する。まずは第一歩を踏み出す。
そんな一歩目として手に取ってみた本書である。
なぜ本書に至ったかというと、「考えることは哲学である」と初めて知ったからである。いうなれば”哲学”なんてものに近寄ろうとしたことなんてなかったので、「哲学とは何か」なんてことをそもそも考えたことがなかった。
哲学=考えること、を知ら -
Posted by ブクログ
頭を捻りながら読んだが、決して難しい訳ではない。
この本を読んで『読む』という行為には付帯して『思考』というものが必ず存在することに改めて気付かされた。
野矢先生は全部お見通しかも知れないが“考えずに読む“ことを拒否する文章が優しそうな顔をして並らべてある。
数式や記号をほぼ使わずに対話として語られる「無限論」
分かりやすい論理学の本を沢山お書きになっている野矢先生ならではの文章だと思う。
全て理解したかと言うと自信は全く無い。
同じ内容を他人に説明出来るとも思えない。
しかし、カントール、ラッセル、ゲーデルへと続く無限に対する思考法には馴染めたような気がする。
「そんな気がするだけ」かも知 -
Posted by ブクログ
ネタバレ社会人になると「論理的に考えろ」・「頭を使え」とよく言われるが、そもそもとして「考える」とは何かを優しく諭してくれる、そのような本です。
本書の中で語られる「考える」とは、頭の片隅に問題を留めておくということ。
経験から得た常識や枠組みに対して、非常識や枠外の出来事に違和感や課題を感じ、それを頭に残しておく。そうすることにより、ふとしたタイミングで、違和感への理解や課題解決方法がパッと閃くことがある。
個人的には、それこそ「アハ体験」なのではと思う。本書では「ヘウレーカ」と呼ばれている。
日々の中で感じ取った異変(自分が理解できないこと)を頭の片隅に留めながら、生活を送って行きたいと思わ -
Posted by ブクログ
本来は難解な問題が気楽に面白く読めるのは、とても良いと思う。
ただ個人的には、最初に批判されている一般観念説が何故ダメなのか、いまいち分からなかった気がする。太郎君とお父さんの会話のような事態はどの説でも起こり得て、会話を重ねることで差は埋まっていくけど完全一致したかどうかは分かりようがないのでは..? 文の意味よりも先に語の意味(心の中の一般観念)は決まらない、というのは分かる。でも語が心の中の一般観念を指すということ自体をなぜ否定できるのかは分からない。否定というより不要なんだろうけど、そうなのかな..? 言葉が心の外の対象を指せることの方が不思議で、説明が必要のようにも思える。