あらすじ
数々のパラドクスに満ちた「無限」の不思議。アキレスはなぜ亀に追いつけないの? 偶数と自然数が同数って本当? 素朴な問いからゲーデルの不完全性定理まで、軽やかな笑いにのせて送る異色の"哲学教室"。(講談社現代新書)
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Posted by ブクログ
タイトルの通り、まさに「無限論の教室」が文章で表現されていた。物凄く面白く、またどこか懐かしく、どこか羨ましく……色々な気持ちが刺激されながら無限について探求ができる、大変素晴らしい本だった。タイトルを見て難しそうだと思っていたが、実際は読み進めやすいテンポ・表現・文章で構成されており、いい意味で裏切られた感があった。この本の一番の良さは、共に考える仲間がそこに在ることである。教師が一方的に教える構図ではなく、共に考える、共に掛け合いの中で生まれる思考や議論がそこに在ることである。これが自分の頭を引っ張ってくれる。共に世界に引き込み、学びを高めていってくれる。これはかけがえのない学びの体験でもある。「答え」も最後までぱっきりしないのがまた良い。「無限」を題材に誰かと考え続ける。人の中で学びを生む。これがこの本だと私は思う。
Posted by ブクログ
考え続ける日々は尽きない。それが哲学であれ、数学であれ、物理学であれ、論理学であれ、存在という宇宙を考えることが人間の性質なのだと思う。
どのような論理でもって存在に向かっていくか。存在と学問が結びついた瞬間は何にも代えがたいartsだ。学問とはそれすなわちそれを以て生きること。その為人そのものだ。無限論の世界を数学、論理学、哲学をもって進める。永井先生のアインジヒトの対話もそうだが、考えることは対話という形式をとらざるを得ないようだ。
無限ということばがあってしまう。死とか神とか無もまた同じなのかもしれない。対角線がひかれ、無限ということばがことばであるところに行きつく様は、学問、ひいては生きる人間の限界の淵へと誘ってくれる。
永井先生も言っていたが、考えること、学問は途方もない他人との距離・深みを埋めるそのひとの努力に他ならない。その学問を身に着ければ社会に役立つのでない。社会が要請するのは技術であって学問ではない。社会という集団の世界で生きていくための学問だと思う。考え続けていたら学問があって続けていただけのことだ。
一周回ったその時、世界が世界であること、その驚きでしょうがなく社会で生きてやろう、考え続けることが始まる。
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数学に関する哲学の本。
数学基礎論の本かな。
対角線論法が思いの外、適用範囲が広くて驚愕する。
実数の濃度の証明は知っていたが、ラッセル集合、ゲーデルの証明にも使われていたなんて。
まさにメタな視点が度々求められるが、自分の「脳力」を鍛えるために面白い本だった。
Posted by ブクログ
3人のキャラ造形が抜群にいい。特にタジマ先生。
読んでて理解が追いつかないなー、と思った箇所では必ずと言っていいほど和尚さんもついていけなくなってて、いったんまとめてくれるのがうれしい。
ただタカムラさんは別に不美人設定じゃなくてもよかったんじゃないかなー!?
一回読んだだけでは最後までは理解できず、再読するたびに理解が少しずつ深まっていくのがなんかトンネルを掘り進めているようで快感。
Posted by ブクログ
とある架空の大学ゼミのお話。
小説形式で進行し、「無限」というものを数学者たちが如何に扱ってきたか、その議論の歴史、要点を教えてくれる。
数学の専門知識がなくても楽しんで読める本だと思う。
「無限とは何か?」に興味を持ったことがある人には絶対お勧め。
Posted by ブクログ
哲学的な話題で始まるがかなり数学的。タジマ先生が現代数学の常識とされる実無限を否定するところから論旨を始めるのが刺激的だった。結局可能無限か実無限かは読者の判断に委ねる形となるが、そこまでたどり着くのに、無限集合の濃度、ラッセルのパラドックス、ゲーデルの不完全性定理を通過するのでかなり難しい。その分読みごたえがある。
どう考えても本の展開には関係ない、タジマ先生と男女二人の学生の雑談が本をなじみやすいものにしている。さすが今年度(2012年冬学期)単位がこない座禅の授業をやろうとした野矢先生らしい。
Posted by ブクログ
「可能無限」か「実無限」かをめぐる無限論。かなり、数学的には高度な話題だが、学生二人に講師の三人の対話形式で進み、なんだか分かったような気にはなれる。まぁ、まさに大学の講義でその議論の「さわり」を学んだというような感じだろうか。「可能無限」、「実無限」の議論を歴史的な感じで追っていき、最後は、ゲーデルで一応の落ちがつく。
本書の形式としては、多分、『数学ガール』なんかが近いのだろう(といいつつ、こっちは読んでないが)。それが楽しめたひとなら、本書も楽しんで読めると思う。
ところで、なぜ、ぼくは、そもそもこの本を手に取ったかが謎だ。数学には縁遠く、ちょっとした数学ネタ本ならまだしも、対話形式の新書とはいえ無限論などという高度なものを扱っているのに。「無限」という言葉の深遠な響きに導かれてしまったのかもしれない。その意味では、その期待には応えてくれる本である。
Posted by ブクログ
ひと癖もふた癖もあるタジマ先生に導かれて、無限論の世界へ。
大学時代、哲学の授業の教科書がわりになった本。
無限論ってなにさ!?って遠い世界のことのように思っていた人でも、
物語に引き込まれてしっかり楽しく学べる一冊。
この授業、受けなきゃ損。
Posted by ブクログ
新書にしては珍しく物語調。控えめなライトノベルといった趣のある良書。
意図的なのか、先生のキャラがやや陰険で素っ頓狂なのが徐々にツボに入った。『数学ガール』よりも読みやすくてコストパフォーマンスが高い。
アキレスと亀、ゼノンのパラドクスを取っかかりとした「実無限」と「可能無限」の話は、示唆に富んでいる。
本が好きな人ならば、読むことと書くことのあいだにも、「無限」を見つけるのではないだろうか。
授業1コマが1話という形式で、全12話。この授業はぜひ受けておくべき。
Posted by ブクログ
もう最高。センス抜群。
無限がなにかなんて「聞かれる前はわかってたけど聞かれた瞬間わからなくなる」ような例のアレ的なものだけど、突き詰めて考えていけばそれこそ話題としてもどこまでも広がっていく。
自然数論自体魅力的なだけに、一つ一つのトピックスが面白く、けっこう頭を使ったりしてとても心地よい。しかも、田jおっとタジマ先生のどこかひねくれた立場が、いや全くもって健全だとは思いますが、分かったつもりになっているコチラの常識的ななにかを尽く粉砕してくれるのがとても良い。対角線論法に文句言う辺りちょっとハラハラしたりします。
更には、3人の登場人物が妙に魅力的なんだよなあ。下手な小説なんかよりずっと面白いんじゃないかと思える。しかも随所に笑いが散りばめられていて、なんかすごく読むのが楽しい。すごいなあ。
Posted by ブクログ
笑える文章で楽しく読めますが、理解が難しかったので2回読みました。
実無限派と可能無限派のせめぎ合い。結局勝ち負けはつかないのだけど、
無限の捉えどころのなさというのを実感できました。
√2やπ(パイ)は数字ではなく、その数を導き出すための法則である。
すべての偶数を足したものは偶数ではない、自然数でもない。
カントール的な考えでは人間が概念を作るのではなく、すでに存在している概念を発見することになってしまう。とか面白い。
Posted by ブクログ
無限について。
この先生がうざい。
でも、無限に対しての考え方をいろんな角度からわかりやすく解説してあり、最終的にゲーデルの不完全性定理まで持っていく。
とても分かりやすかった。
でも先生がうざい。
Posted by ブクログ
頭を捻りながら読んだが、決して難しい訳ではない。
この本を読んで『読む』という行為には付帯して『思考』というものが必ず存在することに改めて気付かされた。
野矢先生は全部お見通しかも知れないが“考えずに読む“ことを拒否する文章が優しそうな顔をして並らべてある。
数式や記号をほぼ使わずに対話として語られる「無限論」
分かりやすい論理学の本を沢山お書きになっている野矢先生ならではの文章だと思う。
全て理解したかと言うと自信は全く無い。
同じ内容を他人に説明出来るとも思えない。
しかし、カントール、ラッセル、ゲーデルへと続く無限に対する思考法には馴染めたような気がする。
「そんな気がするだけ」かも知れないけれど…
巻末に紹介のある『無限ーその哲学と数学』と『無限集合』は、今後時間を掛けて読んでみる予定。
Posted by ブクログ
無限が実在でなく思考の産物にすぎないこと、集合とは概念であるということ、そこから生まれるパラドクスをどう回避するか、等々について、軽妙に、しかし手数をかけて解説してくれている。対角線の話にはなるほどと思いつつ、最後の2章(ゲーデルの不完全性定理)は話についていききれなかった。また読んでみます。
Posted by ブクログ
かつてアリストテレスの時代から現代まで議論されている「無限」についての問題。その問題を大学の講義物語形式でわかりやすく学べる一冊。
無限はもとから存在する立場をとる実無限の立場と無限という可能性が存在する可能無限の立場。そういったものから無限を証明するための対角線論法や排律中など驚きや好奇心に満ちた新書!
Posted by ブクログ
カントールからゲーデルまでの集合論がたどった歴史を、小説形式で分かりやすく解説している本です。「和尚さん」と呼ばれることになる、冴えない大学生の青年が、彼とタカムラさんという女子学生の2人しか受講者がいない、タジマ先生の無限論のゼミに出席することになり、毎週タジマ先生の研究室で、集合論の歴史と先生の反実在論の主張について学んでいきます。
数式はまったくと言っていいほど使われておらず、フォーマルな議論をすっとばして、集合論のいちばんおもしろい話題を分かりやすく説明しているところが、本書の魅力だと思います。
Posted by ブクログ
対角線論法、濃度の概念、、からゲーデルまで。これだけの内容の超アウトラインを、軽妙な、それでいてちょっと物悲しい感じの対話編で書いてしまうというセンス。
Posted by ブクログ
無限論についての話を大学のゼミを舞台にした寸劇形式で解説している。無限論にはまだまだ議論の余地があるのかな。
ゲーデルの不完全性定理もどこまで正確かどうかわからないのだけど、何となくわかりやすくなっている気がする。
Posted by ブクログ
無限集合の話なのだけど、ゲーデルの不完全性定理まで触れています。
厳密な数学的な手順は省いているけれど、何かと誤解されやすい不完全性定理のざっくりした概念を知るには良いのではないかと思います。
数学カテゴリに入れるか迷ったけれど、とりあえず哲学カテゴリに分類。
Posted by ブクログ
「無限」とは何か、をテーマに、教授と二人の大学生が講義を進めていく形で話が展開します。抽象的で難しいテーマでしたが、かなり丁寧に解説されている印象を受けます。数学が苦手な僕でもストレスをあまり感じませんでした。
ベキ集合のところの感覚を掴むのが少し大変でしたが、非常に興味深く読むことが出来ました。特に、可能無限という考え方(実無限の考え方が頭から離れなくてなかなか考え込んでしまいましたが、一度しっくり来てからはこちらのものですねw)やそれに基づいた実数の捉え方、対角線論法、ヒルベルトプログラムについてが面白かったです。
高橋昌一郎先生の「限界シリーズ」にもゲーデルの不完全性定理が出てくるのですが、ヒルベルトプログラムの詳しいところは書かれていなかった(ハズ^^;)ので、その背景を読むことが出来てよかったです。
タジマ先生と二人の学生のやりとりも、ユーモアがあってクスッと笑ってしまいました。
本書からの引用
「どうも数学っていうのはわれわれのちゃちな想像力を越えて自然連動していくところが、なんとも面白いですねえ。」
Posted by ブクログ
先生と学生2人、合計3人の問答で話が進んでいく本。
もう一冊野矢さんの本は持ってるけど、それも3人芝居だったな。好きなんだろうな。
読むの二回目ですが、やっぱり難しいです。
対角線引いて”えいや!!”とするところは爽快です。
Posted by ブクログ
場が主流で、でも著者は可能無限の立場であると述べています。
『無限の可能性が秘められている』と言われれば希望的観測が持てますが、『無限の可能性なんて実は無いんだよ』と言われれば何だかちょっと実も蓋もない感じがして肩を落としたくなります(笑)
数学を用いて無限の可能性を解いています。まず、そもそもその出発点が怪しいんじゃないのか、というのが率直な疑問です。数学以外でも、何か取っ掛かりがあるような『気がします』。
僕も可能無限派になるのかな?例えばリーマン問題やゴールドバッハの問題なんかも、何か法則性が見付かるんじゃないか、と淡い希望を持っています。
未来の事は分からないですが、大抵の事は、過去の出来事に依存しているので、それらを考えると、可能性としては、未来予測の精度は上がっていくだろうと思いますし。
永劫回帰とか輪廻転生とか、仏教では実無限派の立場にあり、宗教によって無限についての見解も考えると面白いかと思います。確か、ダンテの神曲では、死後、地獄・煉獄行きの人間は永久の責め苦を受ける……だったかな?折角、哲学的に「無限」を考えるなら、様々な見地からアプローチすればいいのに……なんて思いました。
僕の評価はA-にします。
Posted by ブクログ
高校の時担任の薦めで買って、挫折した本を改めて読んでみました。
積み上げてぶっこわす感じがなぜか心地よく思われます。久々に頭の中掻き回された気がして楽しい。
Posted by ブクログ
駒猫を手懐けているという駒場の重鎮、野矢先生の無限論に関する一冊。生徒二人と先生だけという授業の様子が軽快に描かれている。「無限とは何か」そんな問いに哲学的に立ち向かっていく。自分もその教室の一室にいるような気持ちで楽しく読み終えることができた。本当にこんな授業があったらいいのにな。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
アキレスと亀から不完全定理まで、かろやかに笑う哲学講義。
「無限は数でも量でもありません」とその先生は言った。
ぼくが出会った軽くて深い哲学講義の話。
[ 目次 ]
第1週 学生が二人しかいなかったこと・教室変更
第2週 気まずい時間・アキレスと亀・自然数は数えつくせない
第3週 チョコレートケーキ・パラドクスへの解答・可能無限と実無限
第4週 全体と部分・キリンとカバ・次元の崩壊
第5週 実数・独身製作器としての対角線論法・喫茶店のネコ進法講義
第6週 実数とは何か・ピタゴラスと豆大福・余興
第7週 マジタ・ベキ集合と概念実在論・羊羹の思い出
第8週 一般対角線論法・無限の無限系列・カントールのパラドクス
第9週 土手の散歩・ラッセルのパラドクス・嘘つき・自己意識の幻想
第10週 直観主義・パラドクス断罪・虚構と排中律・ブラウアーの手袋
第11週 暑い部屋・形式主義はいかにして排中律を取り戻そうとしたか
第12週 ゲーデルの不完全性定理・G・インドのとら狩り
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
数学ではなく、哲学方向からの「無限」を理解しようとする話です。最初は「アキレスと亀」など読者が親しみやすいところから、無限を考える際の不思議さ、難しさを説いてくれるので入りやすいとは思いますが、中盤以降はなかなか考えさせられる構成になっています。
数学での無限はカントールが「濃度」という概念で無限であるものにも大きさの違いが存在することを打ち出しましたが、哲学の世界ではさらにさらに進んでいきます。
そういった、人間の思考力の強さを感じられる一冊でした。
Posted by ブクログ
20160715
リブロ池袋で店員オススメの本として紹介されていたため、購入した一冊。
後半の方は正直難解で理解が追い付いていない部分があるが、理系の考え方、空中戦と呼べるような理論のぶつけ合いはいい頭の体操になった。