支倉凍砂のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
すでに Spring Log シリーズでも触れられているように、このシリーズではロレンスとホロの娘であるミューリと、彼らとはもはや家族同然であるコルの旅と活躍が描かれることになる。 いずれは世界的な大騒動を引き起こすとされている二人だが、前作ではこのシリーズの主人公となるコルとミューリの新たな旅立ちの一歩目が記されていた。そしていよいよ本作では、彼らが引っ張ることになる宗教改革の活動が本格的に描かれるようになるようだ。
あらすじ:港町アティフでの聖書騒動を乗り越えたコルとミューリは、ハイランドからの次の依頼を受けて北の地に向かうことになる。これから予想される教会勢力との戦いでは、ウィンフィール王国と大陸の間にある大きな海峡の制海権が重要になるため、アティフの北にいる海賊たちとの関係を整理する必要があるとのことだった。
海賊たちはコルたちが信仰する神とは異なる“黒聖母”を信じていると言われており、コルは緊張しながらも北の地に向かうのだった……。
賢狼ホロの故郷である北の地ヨイツに向かうという目的がありつつも、物語全体では緩やかな方向性しか示されていなかった『香辛料』シリーズとは異なり、この『狼と羊皮紙』シリーズでは教会を立て直すという明確なゴールが設定されている。もちろんファンタジーものではよくあるような「XXを倒す」といったわかりやすいゴールではないので、物語が一直線に進んでいくということはあまりないのだが、それでも物語は大きな方向性に沿ってフラグを立てていくような展開をしていくようだ。
そして物語の実質的な最初のフラグとして設定されたのが、本作の舞台となる「北の地」にいる海賊たちとの関係性強化だった。以前のシリーズではウィンフィール王国が一度だけ舞台となったが、それも基本的には行商の一つの地域として向かっただけだった。ところが今回は、いずれ来るであろう教会勢力との戦いを見据えて、北の地で勢力を持っている海賊との関係性を明らかにすることがコルには求められる。
海賊といえば正規の権力から外れた暴力であるのだから、本来コルのような聖職者が向かう先としてはふさわしくない。しかし、その海賊たちはどうやら“黒聖母”と呼ばれる存在を信仰しているらしく、コルはその信仰が異端であるかどうかを見極めるのにぴったりであるとして北の地に向かうことになる。ウィンフィール王国と教会はいずれも「神」への信仰を持つという点では変わらず、異端な信仰を持つ存在と手を組むわけにはいかないからだ。
そしてその信仰の有様を見極めるために北の地に向かったコルは、そこで自らの信仰の強さと正しさを問い直されるような強烈な体験をすることになる。この世界においても「神」は現世の人間を助けてくれるほど寛大ではないのだが、北の地においては生きることそのものが苦痛と隣り合わせとなるような場所だった。そこでは一定の人間しか暮らすことができないため、食料を手に入れることができない、あるいは稼ぎを得ることができない人間は人減らしのために家族を奴隷として差し出さなければならない。そのような場所で果たして信仰はどのような意味があるのかということを、コルは自らに問いかけることになる。
どうやら『狼と香辛料』では中世ヨーロッパの商業に興味を持っていただけだった著者も、経験と成熟を重ねるにつれてより深いテーマを描く機会が出てきたのではないかという感じがする。もちろん全体としての雰囲気は相変わらずライトな恋愛ファンタジーという枠組みから出てこないが、それでもこの巻で描かれる解決策が一時的な回避方法でしかないという点において、これまでの作品よりもずっと重い雰囲気が漂っている。
また「人ならざるもの」の存在が今回はかなり深く物語に関わってきており、今後おそらく教会勢力とウィンフィール王国の争いが激化する中で、彼らが敵味方に分かれて何らかの影響力を発揮するといった展開も出てくるかもしれない。いずれにしても物語はまだ始まったばかりだが、これまでの『香辛料』シリーズに比べてずっと重い展開になることを覚悟して読んでいかなければならないのだろう、とそんなことを考えさせられる第二作目だった。 -
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「狼と香辛料」は、昔のアニメシリーズが気に入って当時観ていた。最近(昨年?)、リメイク版のアニメが2ターン連続で放映されて、懐かしさもあって全話を見て楽しませてもらった。
基本的には昔のシリーズの話のままで、絵は全て作り直しの感じではあるが、一部登場人物が違ったり、ストーリーにアレンジが入っていたりして面白かった。
その新アニメの冒頭と最後に、主人公であるホロとロレンスの娘と思われる女の子が、ホロらしい母親から昔の冒険談(お話)を聴くシーンが挿入されていた。
私自身、「狼と香辛料」の小説は興味は、あったものの未読のままなのだ。ただ昔のアニメシリーズが途中で終わっており、小説の完結まで行っていないことは知っていた。今回の新シリーズアニメで、二人の娘がいるらしいことから、狼と香辛料はハッピーエンドだったんだなと知ったぐらいだ。
で、今回の「狼と羊皮紙」ですが、、、。このホロとロレンスの娘と「狼と香辛料」の後半に登場するらしいコル(成長して聖職者を目指している)が一緒に旅をする冒険談のようだ。
この1巻からすると、主人公二人の年齢が若いこともあり、怖さや緊張感が少く優しさに溢れたストーリーが展開されていた。暫くこのシリーズを読み続けてみたい。 -
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南北で争う街の権力者同士の商戦に巻き込まれたロレンス。
行商人としてはそれなりの経験を積んできた一人前の商人であっても、街ひとつを取り仕切る商会の上役たちのまえには単なる歯車、手先の一人にしかなれません。
ですが、大きな流れに巻き込まれつつもホロとコルの支えを頼りに今回も無事に難局を乗り切ることができました。コルの「素直さ」が、ひねくれているホロとロレンスの心情を照らし出す場面も多く、二人の関係性もさらに親密になっているように感じます。
ホロの心中は穏やかではないと思いますが、エーブ・ボランと培った絆はこの後も何かしらの形でロレンスたちの旅路の力になってくれるのではないでしょうか。
奮闘の甲斐あって「狼の骨」の有力な手掛かりを手に入れた一行が、次に訪れる街でまた一歩目的に近づくことができるよう、祈りたいと思います。 -
Posted by ブクログ
狼の化身であるホロと旅の行商人ロレンスの冒険を描く『狼と香辛料』シリーズが17巻で完結した後の後日談を描くSpring Logシリーズも、順調に物語が進み、あっという間に5冊目となった。前巻で二人が新たな冒険の旅に出ることが決まり、今回はいよいよ旅を始める二人が描かれる。
ただしSpring Log Vの感想にも書いたように、今回は二人には明確な目的があるわけではなく、「二人が幸せでい続けるため」の旅なので、旅の進み方もかなりゆっくりしている。最近ではホロもだいぶ受け入れているように見えるが、ほぼ悠久の命を持つホロと違い、ロレンスは人としての命の長さしか持っていない。そのためホロはいつかロレンスがいなくなったときのことに備えて、二人の思い出を書き記すということを続けている。前の巻から始まった二人の旅も、行ってみればその残しておくべきエピソードを追加するための旅であり、旅を続けることこそが、むしろ目的であると言っても良いのかもしれない。
まず最初の「狼とどんぐりのパン」では、かつて二人が出会った修道女のエルサとのエピソードが描かれる。最初に現れたときには、ずいぶんと堅物だった彼女は、10年の月日を経る中で現実との折り合いを見つけるようになり、助司祭の地位につくようになったらしい。その彼女が自分の本拠地を離れて遠く北の方まで来たのは、とある教会領の資産整理のためだとのこと。
ほとんどの資産は問題なく有償で処理できそうなのだが、ただ一つだけ巨大な木々が生える山があり、その資産をどのように対応すべきかが彼女の悩み事らしい。ホロとロレンスはその財産を調査する中で、かつてのホロと同じく愛する人の帰りを待つ“人ならざる者”が存在することに気が付く。森を愛し、かつ自分と同じような境遇にいる“人ならざる者”を救うためにホロが狼の姿となって活躍するのが、この最初の作品の特徴だろう。
“人ならざる者”が少し寂しげに描かれているのは、この『狼と香辛料』シリーズの全体の特徴ではあるが、この作品にあたっても、やはり同じように長く生き続けることの寂しさが描かれているところが、ひたすらに幸せな物語であるはずのSpring Logでも変わらないのが、印象深い。とはいえ、培った人脈と能力で、最後にはハッピーエンドになるのでご安心を。
そして、次の「狼と尻尾の輪舞」では、その山を無事に売却した財産を使って、近くにある市場での揉め事を解決するのが主なストーリーとなる。ロレンスがまるで行商時代に戻ったかのように知恵を巡らせて問題を一つ一つ解決していくのを見て、ホロがなぜか悲しがるというところが、この作品の大きなトピックだろう。10年も湯屋を経営し、すっかり一緒にいることに慣れてしまったはずのホロだが、自分の運命によってロレンスの人生を変えてしまったというひけ目を感じているところが意地らしい。……とは言っても、ロレンスにとってはホロとの人生の方が、行商人として大きな商会を持つことよりもはるかに重要だったわけで、10年経っても夫婦にはそれなりのすれ違いがあるのだなという、微笑ましい気持ちになる。
最後に収められている「狼たちの結婚式」は、その二人が追うコルとミューリのある街での活躍を描く作品。二人のメインストーリーは、このシリーズの姉妹シリーズと言っていい『狼と羊皮紙』シリーズで進んでいるはずなのだが、サイドストーリーということで、こちらに入ることになったようだ。もしかしたら、『狼と羊皮紙』シリーズのパブリシティなのかもしれない。
ストーリーとしては「古くから続いている家の当主たちの結婚式をめぐるドタバタ」で、いかにも『狼と香辛料』シリーズに出てきそうな話ではある。コルとミューリがいらない気を回しすぎて物事をぐちゃぐちゃにしつつ、最後にはきれいに収まるというのは、かつてホロとロレンスが歩んできた道そのものということで、世代が変わっても二人がやっていることはあまり変わらない。この作品を読む限りでは、ミューリの熱烈なアタックがコルに届くのはかなり時間がかかりそうだが、いずれはコルとミューリが結ばれるという未来が描かれれば、幸せが続く物語も何世代にも渡るということで、大団円を迎えるのではないだろうか。 -
Posted by ブクログ
ウーバンでの騒動は前巻で一段落と思ったけど、なかなか余波は収まらない様で。
そりゃあ薄明の枢機卿の名前があれだけデカくなっていた上にあの活躍じゃそうですよね。
そんな中で公会議は着々と開催の日が迫ってきている。
そうなるとそれに関わる人の周りは騒がしくなるのは間違いない。
コルとミューリはもちろんの事、王国も商人も教会も自身の思惑を通したいし、相手の思惑に踊らされる事も…
そんな中でも若い二人は着々と成長します。ただ、その成長度合いはミューリの方が上で。さすがは賢狼の娘と言えるような感じになってきました。
しかし、自身の感情はなかなかそれについていけない。その戸惑いは上手にお姉さん方がフォローしていたのはいいなぁ。
今作ではディアナの存在感がなんやかんや大きい。お姉さんポジションは美味しい。
教会中枢部の人が出てきたり、そろそろクライマックスが近いのかな?
行商人賢狼コンビとの邂逅を楽しみにしているんだけどどうなるんだろう。
それにしてもタイトル通り羊だらけだったな。
王国だったり羊のような人だったり文字通り羊だったり。
下巻ではハスキンズとイレニアの活躍が読めるかな?
次は夏の終わりまでには刊行されるようので楽しみに待とうと思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレいやあますますおとぎ話みたいになってきたなあ笑
前巻から続く月を狩る熊が塞いだ南への道を巡るお話。
更なる選帝侯も登場してシリーズで一番権謀術数が繰り広げられた気がする。
二転三転の展開が面白かった。
クライマックスのそう来たか感とおとぎ話感がすごい。
それにしてもコルは成長したよなあ。
初期のオロオロした感じはすっかりなくなり貫禄が出てきた。
薄明の枢機卿と言う地位が人を育てたという所だね。
異教の神々の伝承編と銘打たれた本作では初めて月を狩る熊の実態の一端が語られて、今までとは異なる解釈が出てきたわけだけど、この先、どこかで月熊そのものが姿を現す可能性はあるだろうか?
個人的には半々かなと思う。
さて、コルの冒険譚に北の冷たい海での遊泳、燃え盛る屋敷の中からの生還に、夜空の飛行が加わったわけで、確かにどんな物語の英雄ですか?と言いたくなる^^
次はなにが起こるのかな。楽しみ -
Posted by ブクログ
ネタバレシリーズ回を追う毎に段々スケールがデカくなってきたなあ。
いや、面白かった。
今回は月を狩る熊をめぐるミステリーと天文学者の追跡劇と夜の海での海戦と言う、なかなか盛りだくさんで贅沢な内容。
前回、薄明の枢機卿の名前に伴う責任から逃げずに果たす事を決めたコルが益々頼もしくなってきている。
追ってきた商会の船にミューリの背に乗って飛び移るとこなんか、もうヒーローだよね。
そういう意味では段々ミューリとの力関係も変わってきているように感じる。
それはそれで頼もしいのだけど、コルにはいつまでもミューリの我儘に付き合わされてため息を吐く関係でいてほしいなと思ったり笑
それにしても天文学者奪還に集まった面々がコル以外は、狼と羊と鼠と大鷲の化身という全部人以外なところは笑った。集まりすぎだろ!
次回は今回の続きが描かれるのかな。それともまた別の話が始まるのだろうか?
いずれにしても楽しみ