谷津矢車のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
兄と慕う人物を軍に殺された林逸平は、謂わば復讐のために入隊、憲兵隊の軍曹となる。精神的な病で一年休職後、二.二六事件の首謀者の1人と見做されている山口一太郎大尉の取調べをするという任務に就く。初回の取調べで山口一太郎大尉は黙秘を宣言。そこで、過去に関わりのある人物を調べて、その人々の証言を集め、外堀から攻める方針がとられた。
林軍曹の任務遂行の日常と、証人たちの告白が交互に語られる形式の物語だ。
昭和史のターニングポイントともなる大きな事件だが、私自身詳しいことはよく知らない。史実とフィクション、虚実織り交ぜた内容であろうと想像する。
憲兵隊という仕事に誇りを持ち、真実を突き止めようとする熱意 -
Posted by ブクログ
ネタバレ3.5くらい。
面白いと聞いたのと、二・二六事件には興味があったので期待して読んだけど、自分には合わなかった。
肌が合わない。
山口一太郎を取り調べる憲兵の目線と、山口を知る人間からの証言や思い出話から二・二六で山口が何を思ったのか探る話。
また、主人公を狙う統制派からの横やりや石原莞爾の思惑など、ミステリー小説さや歴史小説の醍醐味等はあるけれど、あまり楽しめなかった。
山口が何を考えていたのか迫るという視点は面白いけれど、その大儀さを大事に思えなかった。
それでも、と思う、足掻くカタルシスさが自分には物足りなかったんだと思う。
山口がどんな結末を迎えたのかなど歴史的事実を曲げずに、真摯 -
Posted by ブクログ
商売の基本(いろは)は『神速を尊ぶ』だ。
重三郎は金儲けがしたいわけじゃない。新しいものを作りたい。吉原から江戸を驚かせたい。金は、その結果としてついてくるものだと考えている。この男にかかれば、今を保つことすらも後退を意味するのだ。ただ、新しいものは、頭の固い向きには塵芥だ。そういうものを先物買いするお客さんもいるにはいるけども、それじゃあ大売れとはいかない。十歩先に行ったものじゃあ新しすぎる。かといって、一歩二歩先じゃあ誰も驚かない。五歩くらい先を走るものを作りたいと思ったのだ。世の進歩は、一歩一歩、着実な積み重ねの上に成り立っている。浮草稼業の本屋や絵師や作者の界隈とて同じである。五歩先 -
Posted by ブクログ
今年の大河ドラマに取り上げられている蔦屋重三郎の話をいくつか読んでみようということで、借りた本。
以前読んだ、泉ゆたかさんの『蔦屋の息子』では豪快で猪突猛進な重三郎が描かれていたが、こちらでは重三郎が買い取った日本橋の元地本問屋の元店主・丸屋小兵衛を番頭に据えるという荒業で商売を行うバディものとして描かれている。
物語の山は老中・松平定信との闘い。
戯作者の山東京伝や恋川春町らと追い詰められていく様子などはこの時代ならではとは言え、理不尽な思いでいっぱいになった。
歌麿の立ち位置がこれまで読んできた作品とは違っていて新鮮だった。
歌麿こそ重三郎のバディなのかと思いきや、意外にも途中で喧嘩別