森達也のレビュー一覧
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ネタバレー彼らが今もオウムに留まり続ける理由、そのメカニズムは、オウムの内ではなく、オウムの外、すなわち僕らの社会の中にある。
ー真実は一つしかないと、いつから僕たちは思い込むようになったのだろう。
オウム事件関係の死刑執行があってから、村上春樹のアンダーグラウンドを読んで、被害者の言い分は理解できるけど、加害者の言い分になんかしっくりこないところがあった。そこで止まってた時間を動かしてくれた出会いには本当に感謝。オウム側にはオウム側の考えがあって、そこからみたら、私の考えの方が理解しがたいのかも。
森達也に共感できるのは、ただ、純粋に、自分が納得できるような真実が欲しいということ。マスコミが捏 -
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筆者は「売国奴」や「非国民」などと嘲笑され、誹謗中傷されることが多いといいます。
たしかに、そういった批判は浴びるだろうという主張ではありますが、筆者の主張に共感できる部分がとても多く、刺激的な1冊でした。
筆者の主張の根幹にあるものは、「暴力に暴力で対抗してはいけない」「いたずらに危機意識を煽るメディア(また、事件報道をはじめ危機感を要求する視聴者)を無批判に受容してはいけない」といったことだと思います。
近年の日本社会に溢れる「治安が悪化している」という雰囲気は、事件報道を見たがる視聴者と、それに応えたマスコミの相互作用で醸成されてきたという筆者の指摘は正しいように思いますし、具体的なデ -
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著者はドキュメンタリー映画監督の森達也氏。彼の映画は、オウム事件など社会問題を中心にした作品が多いようだ。
個々の信条と違うものもあるかもしれないが、彼が本書で伝えるメッセージは強烈であり、筋が通っている。自分の意見をメディアで発表することは、反対の立場の人からの猛烈なバッシングが予想され、とても勇気がいることだと思う。家族にも迷惑がかかるかもしれない。森氏は、社会や日本、そして世界の行方を憂う正義感から、それをあえて声高に訴えている。
例えば、森氏は死刑制度の有効性に疑問を抱いている。死刑だけでなく、終身刑や無期懲役もない国ノルウェーについて書かれた章がとても印象的だった。77人を射殺した犯 -
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タイトルは笑える。
職業がエスパーとはどういうことだ。コメディなのか? と思わせて、その実、ものすごい重い題材を取り扱っている。
書き手はドキュメンタリー映像監督。有名な作品はオウムを取り扱った「A」シリーズだそう。
エスパーというものについて、当人以外、いや、もしくは親しい人がエスパーでもない限り、「あ、うんSFとかに出てくるアレだよね」となる。
私は、信じる信じないでいうと、信じてない。
著者も信じる信じないでいうと、そこははっきりとしない。信じるとは言い切れないというスタンスである。
エスパーを職業とする彼らのドキュメンタリーを撮りたいとして、まず、企画書を作り、お金 -
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あるテレビの仕事の取材でベトナム青年がふともらした「僕らの王子は、日本に殺されたようなものなのに、日本人は誰もこのことを知らない」という一言をきっかけにして、戦前の文献などを調べることとなったベトナムの王子クォン・デについての伝記。日露戦争で欧米列強の一国であるロシアに勝ったことはアジアからの期待は大きく、当時フランスの支配下にあったベトナムの人々にとっても憧れの国でもあった。クォン・デは、フランスからの祖国解放のために妻子を置いて、革命家のファン・ボイ・チャウらとともに来日した。しかし、結局は大きな貢献をすることもなく、最後までベトナムに帰ることなく日本の地で亡くなった。
本書はクォン・デ -
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森達也の本も新鮮さがなくなった。
それは、森達也の主張に共感することがなくなったということではなく、その逆に彼の主張がほとんど摩擦なく腑に落ちるようになったからなのかもしれない。
タイトルからして、2015年9月に採決された安保法制についての話かと思うかもしれないが、本書はそれ以前に書かれた森氏のエッセイをまとめたものである。単純に時系列に並べたものではなく、2008年から2014年に書かれたもの(ほとんどは13年から14年)を次の4つの章のテーマにそれぞれを振り分けて編集されたものだ。見ればわかる通り、戦争についてのことだ。
第一章 すべての戦争は自衛意識から始まる
第二章 「自分の国は -
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見えにくいから、見ようとする。聴こえにくいから、聴こうとする。分からないから、考える。自ら取る行動のひとつだったとは。そんな一歩の無い、ものすごくスムーズで分かりやすくするテレビ・メディア。メディア。悲劇も喜劇も日常。
163頁〜引用、
ベトナム戦争において米軍が敗退した最大の理由は、国内外に高まる反戦の世相に抗しきれなくなったからだ。そのきっかけの一つは、そもそもの戦争介入が米軍の謀略によって始まったことを暴くペンタゴン・ペッパーズの存在やソンミ村事件などの実態を、メディアがスクープしたからだ。
ところが存在しない大量破壊兵器を大義として始まったイラク戦争に対しては、なぜか世相に火がつか