森達也のレビュー一覧
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森達也の本は、自分の「立ち位置」や「考え方」を振り返るときの助けになる、と感じます。
森がオウム真理教の信者に取材したドキュメント「A」シリーズを手がけたことで、オウム真理教を擁護するのか、という批判を浴びた(あるいは今もなお浴びている)ことは事実ですし、当時の「オウム=悪/カルト/殺人集団=その存在を許すことができない」という世論に冷や水を浴びせる作品であったことから、作品だけでなく森自身が拒絶されることはある意味で想定できる展開だっただろうと思います。
本書でも根底にあるには、「地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教の信者は本当に残酷な悪人なのか」という問いや、他に世界各地で度々繰り返さ -
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これは大作。クォン・デがフエ出身(というかグエン朝の王族)だということで、フエ旅行のお供に丁度よいと思ったわけだが、とても面白い。
もちろん完全なノンフィクション(ドキュメント)ではなく歴史小説といった類の書で、(テレビ人らしく?)読者を引き込むための脚色や演出も豊かなのだろうけど、それさえも不可欠に感じるほどにドラマチックな展開は、良質の大河ドラマをみているよう。
ファン・ボイ・チャウやクォン・デの人柄や喜怒哀楽が目に浮かぶ。
仏領時代の圧迫も、家族(クォン・デの妻トランや二人の子)との別れも、つらさが十分伝わる。
一方で、時代背景としてベトナムの歴史がわかりやすくの述べられてよく頭が整 -
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ネタバレ多くの著者による「ガザ虐殺」に関する論考を集めたもの。
今、起きていることについて、現場感覚を持って語られている。多様な視点から語られているが、今、起きていることは、ジェノサイドであるということ、そしてそれを傍観しているのは、それに加担することになるということは、明確に浮かび上がってくる。
とは言っても、何ができることはあまりないが、「イスラエルがこれまでパレスチナでやってきたことはアパルトヘイトである。今、ガザで行われていることはジェノサイドである」ということを明らかにするということを発言することはできる。そして、それがスタート地点であると思う。 -
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メディア・リテラシーを持つことがいかに重要か、具体例をたくさん挙げつつわかりやすく説明してくれる本。
視点や解釈の違い、情報はすべて誰かの視点であり解釈であることを意識してメディアに触れたい。
メディアと社会と政治は三位一体
ドイツの戦争のメモリアルディの日本との違いについても知った。戦争の始まりと自分たちの加害をメモリアルにしたドイツと戦争の終わりと自分たちの被害をメモリアルにした日本。
一人称の主語を持つことの大切さ
過ちや失敗の記憶を継承し、忘れないでいることの大切さ
What are your thought and beliefs made up of ? -
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森 達也
1956年、広島県生まれ。映画監督、作家、明治大学特任教授。98年にオウム真理教信者達の日常を映したドキュメンタリー映画「A」を公開、ベルリン国際映画祭などに正式招待される。2001年、続編「A2」が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。16年、作曲家・佐村河内守に密着して撮影した「FAKE」が大きな話題に。19年公開の「i-新聞記者ドキュメント-」は、キネマ旬報ベストテン(文化映画)1位を獲得。作家としては、10年に刊行した『A3』で第33回講談社ノンフィクション賞を受賞。他にも『放送禁止歌』『いのちの食べかた』『ドキュメンタリーは嘘をつく』『死刑』『「 -
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負の歴史を見つめること。記憶すること。
メディアリテラシーを身につけること。
メディアの弊害を覚えること。
世界は多面的で多重的で多層的であり、どこから見るかで景色は全く変わる。
情報において事実はなく、すべては解釈だ。
=情報の本質。
集団に帰属しながらも、しっかりと一人称単数の主語を保つこと。
これができたら世界が変わる。
それまで見えなかった領域が見えてくる。
集団化が起こる要因、その功罪を人類の歴史とともに分かりやすく教えてくれる1冊。
特に日本は集団による同調圧力が強い社会だからこそ、周りに流されたり、メディアからの情報に振り回されるのではなく、自分自身の頭で考え、いろんな角 -
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映画『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』の全国公開を前に、井上淳一さんのプロフィールからこの本のことを知って買い、読みました。4人(5人)の映画人の対談形式で読みやすかったので、あっという間に読み終わりました。映画に携わる人たちの率直なお話を知ることができてとても面白かった。ここ何ヶ月かの間に、4人がそれぞれに監督した映画を観ていたので、作品を思い返しながら読みました。
荒井晴彦:花腐し
森達也:福田村事件
白石和彌:青春ジャック 止められるか、俺たちを
井上淳一:青春ジャック 止められるか、俺たちを2…
井上さんは、脚本を描いた「あいときぼうのまち」を10年以上前に観て、世の中を捉 -
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タイトルからSF作家伊藤計劃の「虐殺器官」を連想し、手に取ってみた。作者は映画監督・作家の森達也。関東大震災直後に朝鮮人と間違えられた行商人らの虐殺事件を描いた「福田村事件」が、今年公開されている。
善良な人々が善良な人々を殺す。虐殺を司る器官 (強いて言えば脳)が人間に備わっているわけではないだろう。何故、どうやってそうなってしまうのか。我々は考え続けなければならない。
大量虐殺の防止を目的とするNPOの創設者が、良識ある人々が虐殺に手を染めるまでを8段階の過程で示してる。
1. 人々を「我々」と「彼ら」に二分する
2. 「我々」と「彼ら」に「こちら側」と「あちら側」に相当する名 -
購入済み
大変面白かったです。
クォン・デの最期から現代の場面に戻ったときの、1本の映画観終わった感。物語の中に入り込んでました。
他の方のレビューでドキュメントというより小説とあり、筆者もあえてそうした面もあると後書きにありましたので、物語と書かせてもらいました。
ただ、人物の感情描写はフィクションでも大まかなエピソードは実際のことだと思いますし、現代に戻ってからの展開はドキュメントですよね。そちらもやるせなさがいっぱいですが、子孫に会えて誤解を解けたことは慰めでした。 -
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読むべき本。
読んでよかった本。
まもなく森達也の映画「福田村事件」が公開される。福田村だけでなく、他の土地でも同様の事件が起こったことが最近の新聞記事に掲載されていた。
関東大震災で6000人の朝鮮人がら虐殺されたことはよく知られている。その時、訛りのある地方出身者が同様に虐殺された。その一つが「福田村事件」だ。
普段は善良な隣人がなぜ大量殺人の歯車になるのか。
その謎を解こうとする本だ。
先日「キエフ裁判」という映画を見た。ウクライナのバビ・ヤールでのユダヤ人とウクライナ人の大量虐殺を指導したドイツ兵の裁判記録だ。ドイツ兵士たちは(アイヒマンがそうだったように)一様に、命令に従っただけ -
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食卓にのぼるお肉。それはもちろん生きていた牛や豚や鶏だった。のは誰でもわかる。では、生きていた動物はどうやってお肉になるのだろう。食卓から見つめる構造的暴力。
いわゆる食育的な、「いのちの授業」的な本を、森さんが書いたんだろうか?という疑問と、森さんなら食肉の問題をどういう視点で書くんだろうか?という好奇心があって手に取ったのは、実はこちらより前に出版されたよりみちパンセ版。
半分は予想通りで、森さんは食肉加工業者の歴史をたどって現代まで生きる差別に切り込んでいて、森さんを知らない人が読んだらけっこう頭を殴られたような衝撃なんじゃなかろうかと思った。この本で語られる差別というのは、実は非常に