森達也のレビュー一覧
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収められているすべての論考がISによる後藤さんらの殺害が起こる前に書かれている。したがって、ISに対する論考はない。しかし、この本からわかることは、あるいはこの本が思い出させてくれるのはISの行為が、僕らが知ることのできないような特別なものでは決してないということである。
この本は思い出させてくれる。原爆による大虐殺があったこと。ホロコーストのこと。カンボジアでポル・ポト政権がやったこと。ルワンダで隣り合った住民が斧や鉈で殺しあったこと。今もまだスーダンで悲惨が続いていること。そして、かつて日本が東アジア、東南アジアで行ったことを。
人間というのはこういうことをするものなんだ、というと -
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当然にしてあるべき食肉加工(=家畜の屠殺)というプロセスがあり、それがあえて目に付かないようにされているということを、子どもに語るように説明した本。この本では、家畜を食べる、ということと、差別について語られれている。著者である森さんはTV向けの映像作成の仕事をしていたときに、家畜を殺して食べる、ということをテーマにして番組作成を企画したが、結局テレビ番組にはならなかった。その理由が、屠殺シーンの問題もさりことながら、それよりも大きかったのが被差別部落の問題だ。
食肉加工という職業が「穢れている」とされて、部落差別の対象となっているということは事実としても知っていた。実際に自分の親も、ときにあ -
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ドキュメンタリー作家 森達也が、様々な媒体に書いたエッセイをまとめたもの。
複数の媒体にまたがっているが、各章のタイトルとサブタイトルを見ると著者の意図がわかってくる。
第一章 加害者と被害者 - 加速する厳罰化と発せられる罵声
第二章 無知と自覚 - 外なる「悪魔」、内なる「善」という思い込み
第三章 憎悪と報復 - 加虐的に、とめどなく
第四章 同調圧力 - 集団は敵を探し、強い管理統制とリーダーを求める
第五章 覚悟 - 表現するということは
全体としてなかなかまとめづらいので、ここでは、いくつか印象的なフレーズを取り上げる。
・第一章で取り上げられた『苦界浄土』は高橋源一郎にも最 -
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忘れてはいけない大切な言葉がたくさん書いてある。
命をいただくことによって、私たちは生きることができていること。
けれどもその過程の作業をする人は、穢れていると差別されてきていたこと。
差別の心からいじめや戦争は起こること。
事実を知ることの大切さ、考えることの必要性。
若者向けの、とても読みやすい本だけれど、油断すると付箋だらけになってしまう。
最初のほうにこんな文章がある。森達也自身の言葉として。
“たとえば公害。たとえば原発の事故。そしてたとえば戦争。最初の段階ならこれらを回避する方法はいくらでもあったはずなのに、誰かが思考しなくなり、その誰かが少しずつ増え、やがて皆の思考が停まり -
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森達也の言ってることに概ね賛成。
しかし、ノルウェーが厳罰化しないことは、宗教的基盤もあるのではないかな。日本人は因果応報という考えが根強いから、殺したのならそれ相応の報いを受けるべき、と思うだろう。だから、こういうことって、法学者やジャーナリストだけでなく、他の学者なんかも交えて日本人全員がもっと真剣に考えるべきだと思う。
ネット右翼みたいな人たちより、森達也の方が勉強し、取材し、真剣に考えていることは間違いないわけだから、反対の考えの人こそ読んでみるべき本だと思う。
確かに、当事者じゃないから冷静に考えられるってことはあるわけだし、当事者の気持ちは当事者にしか理解できないとも思う。
それ -
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もともとは子供向けに書かれた本。
一般的にはあまり知られていない食肉市場、特に「と場」の紹介が主題。
その「と場」がなぜ知られていないのか、あるいはなぜ意識的に忌避されて来たのかということが、文化的背景や歴史的背景も含めてわかりやすく説明されている。
それだけではなく、そういった集団的な「思考停止」がもたらす恐ろしい状況についても言及。
題名の『いのちの食べかた』を起点に、著者が若い世代に熱く語りかける作品だった。
子供向けということもあって、あっという間に読み終わった。
…とはいえ、遅読なので2時間くらいはかかってしまったけど(^^;; -
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毎年、楽しみにしている夏の文庫フェア…
角川文庫から選んだのは、この一冊。
小学校高学年から中学生向けに書かれた本書だけど
年層を問わず…いや、大人こそ読むべき…と思った。
幼少の頃を思い返すと、なにかにつけて、
「なんでそうなるの?」と思ってた…
理由がわからないものは覚えられなかったし、
ラジオや時計も、ばらばらにしては怒られてた…
「なんでそうなるの?」を日常意識しなくなる…
大人になるというのは、そういうことかもしれない。
でも、それは、なんとも寂しいことだ…
それにとどまらず、多くの社会の問題はそこにある。
本書は、そういうことを思い返させてくれる。
スーパーには、野菜も魚も全 -
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雑誌『経』に掲載された著者の40編ほどの連載を、加筆修正してまとめたもの。
古くは2007年のものから、2011年の東日本大震災直後に書かれたもの、本書刊行の直前(2013年夏)に書かれたものまである。
実は印象的なタイトルにひきつけられ、死刑制度についていろいろ著書のある著者の本であることもあって、そのあたりを掘り下げた本かと思い手にしたのだが、タイトルはあくまで連載の一つにつけられたものだったようだ。
よって、話題はオウムはもちろん、国際社会の在り方から司法、思想、現代社会の暗部などなど多岐にわたっており、本来のテーマとしては、サブタイトルがそれを集約しているものと思われる。
人々が集