森達也のレビュー一覧
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忘れてはいけない大切な言葉がたくさん書いてある。
命をいただくことによって、私たちは生きることができていること。
けれどもその過程の作業をする人は、穢れていると差別されてきていたこと。
差別の心からいじめや戦争は起こること。
事実を知ることの大切さ、考えることの必要性。
若者向けの、とても読みやすい本だけれど、油断すると付箋だらけになってしまう。
最初のほうにこんな文章がある。森達也自身の言葉として。
“たとえば公害。たとえば原発の事故。そしてたとえば戦争。最初の段階ならこれらを回避する方法はいくらでもあったはずなのに、誰かが思考しなくなり、その誰かが少しずつ増え、やがて皆の思考が停まり、そして最悪の事態が起きる。多くの人が苦しむ。多くの人がなく。そして多くの人が死ぬ。でももう遅い。もう間に合わない。すべてが終わってから、誰かが言う。「どうしてこんなことになっちゃったんだ?」そこで皆で顔を見合わせる。責任者を探すけれど見つからない。それはそうだ。責任者は全員なのだ。でも誰もが、いつの間にかそれを忘れている。”
終りのほうには映画監督伊丹万作の文章が引用されている。
“つまりだますものだけでは戦争は起こらない。だますものとだまされるものとがそろわなければ戦争は起こらないということになると、戦争の責任もまた(たとえ軽重の差はあるにしても)当然両方にあるものと考えるほかはないのである。
そしてだまされた者の罪は、ただ単にだまされたという事実そのものの中にあるのではなく、あんなにも造作なくだまされるほど批判力を失い、思考力を失い、信念を失い、家畜的な盲従に自己の一切をゆだねるようになってしまっていた国民全体の文化的無気力、無自覚、無反省、無責任などが悪の本体なのである。”
私たちは私たちが食べたものによってできている。
そのことすら考えようとしないで、事が起こってからだまされていたと怒ることの愚かさと無責任。
菜食主義だって、植物の命をいただいているわけで。
命をいただかなければ生きていけないことを自覚し、苦しみ、それでも食べて生きて行かねばならないその業を、もっときちんと考えようと。
命を奪うことなく生き物からいただける食品は、乳だけだと荒川弘は言った。
命を繋ぐことの意味。痛み。責任。 -
Posted by ブクログ
森達也の言ってることに概ね賛成。
しかし、ノルウェーが厳罰化しないことは、宗教的基盤もあるのではないかな。日本人は因果応報という考えが根強いから、殺したのならそれ相応の報いを受けるべき、と思うだろう。だから、こういうことって、法学者やジャーナリストだけでなく、他の学者なんかも交えて日本人全員がもっと真剣に考えるべきだと思う。
ネット右翼みたいな人たちより、森達也の方が勉強し、取材し、真剣に考えていることは間違いないわけだから、反対の考えの人こそ読んでみるべき本だと思う。
確かに、当事者じゃないから冷静に考えられるってことはあるわけだし、当事者の気持ちは当事者にしか理解できないとも思う。
それにしても、吉田茂は立派なことを言っている。孫に聞かせてやりたいね。 -
Posted by ブクログ
もともとは子供向けに書かれた本。
一般的にはあまり知られていない食肉市場、特に「と場」の紹介が主題。
その「と場」がなぜ知られていないのか、あるいはなぜ意識的に忌避されて来たのかということが、文化的背景や歴史的背景も含めてわかりやすく説明されている。
それだけではなく、そういった集団的な「思考停止」がもたらす恐ろしい状況についても言及。
題名の『いのちの食べかた』を起点に、著者が若い世代に熱く語りかける作品だった。
子供向けということもあって、あっという間に読み終わった。
…とはいえ、遅読なので2時間くらいはかかってしまったけど(^^;; -
Posted by ブクログ
毎年、楽しみにしている夏の文庫フェア…
角川文庫から選んだのは、この一冊。
小学校高学年から中学生向けに書かれた本書だけど
年層を問わず…いや、大人こそ読むべき…と思った。
幼少の頃を思い返すと、なにかにつけて、
「なんでそうなるの?」と思ってた…
理由がわからないものは覚えられなかったし、
ラジオや時計も、ばらばらにしては怒られてた…
「なんでそうなるの?」を日常意識しなくなる…
大人になるというのは、そういうことかもしれない。
でも、それは、なんとも寂しいことだ…
それにとどまらず、多くの社会の問題はそこにある。
本書は、そういうことを思い返させてくれる。
スーパーには、野菜も魚も全体の姿を見せて
売られているのに、肉は違う…パックされて
商品になるプロセス…「あいだ」が見えない。
そんな素朴な疑問から説きおこされる…そして、
話は差別の問題へと移ってゆく…生きてゆく上で
忘れてはならないこと、欠かしてはいけないこと…
それを、本書は、繰り返し訴えている。
-大切なのは「知ること」
知って「思うこと」
人は皆、同じなんだということを、
いのちはかけがえのない
存在だということを。
政の場での暴言がかますびしい…
やってることは暴挙とも思われる。
初心に帰る…と云うならば、
前の一節の精神に立ち返るべき…と思う。 -
Posted by ブクログ
雑誌『経』に掲載された著者の40編ほどの連載を、加筆修正してまとめたもの。
古くは2007年のものから、2011年の東日本大震災直後に書かれたもの、本書刊行の直前(2013年夏)に書かれたものまである。
実は印象的なタイトルにひきつけられ、死刑制度についていろいろ著書のある著者の本であることもあって、そのあたりを掘り下げた本かと思い手にしたのだが、タイトルはあくまで連載の一つにつけられたものだったようだ。
よって、話題はオウムはもちろん、国際社会の在り方から司法、思想、現代社会の暗部などなど多岐にわたっており、本来のテーマとしては、サブタイトルがそれを集約しているものと思われる。
人々が集団になったとき、実体のない「共同幻想」(吉本隆明氏の造語らしい)にとらわれ暴走する。その論理が、社会で起きている様々な現象に当てはまっていることを、著者は危険視している。
「国家は前提であり実体はない」という言葉は印象的だ。一見唐突なようだが、国というものを端的に表している。国際社会という視点で物事を考えるとき、常に頭の隅に意識しておいたほうがいいのかもしれない。
さて、やはりというべきか、本書の中でニルス・クリスティの修復的司法の本『人が人を裁くとき』について言及されている。著者はご本人にも会われたらしい。
クリスティの本、ずっと積読のままだなあ、読まねば。 -
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新聞で見かけたのがキッカケだったように思う。
タイトルが印象的で。
すべてこの話なのかと思ったら、連載の単行本化だったので、一表題だったことを読み始めてから知りました。
どれも興味深いものだった。
善意は暴走しやすい、というくだりは、某弁護士ドラマを思い出し。
印鑑文化の話はその通りだとも思うが、印鑑を作っている人のことを考えるとなぁとも思ったり。
テレビがうるさい、というのは同意見だ。
真実を解明し切れていないことに対する不安感の欠如はあるように思った。
推定無罪の有名無実化については、何とも。。。だから誤認逮捕の場合でも周りから犯人であるかのような目を向けられてしまうのだと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルは、死刑制度廃止の意見への反論に対してのもので、訊きたいのは「被害者遺族のための死刑制度ならば、遺族が存在しない天涯孤独な人が殺されると刑は軽くてよいのか?」ということ。
死刑制度、刑罰の厳罰化、犯罪やテロ対策、竹島や尖閣など、世間の常識や期待、正義などの危うさ(暴走)、それにおもねるメディアの実情に意識を向けさせられる。
著者の意見は、自身が気にしないといいながら何度も触れるようにブサヨ(ぶさいくな左翼の意?)、お花畑満開(理想論の意?)という批判もあるように、一面的な意見だと感じられるが、問題意識の切り口としては必要な情報だと受け止めた。
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Posted by ブクログ
「推定無罪の原則」や「残酷な刑罰を禁じる」憲法や世界人権宣言・・・その他の諸権利を獲得するまでに世界中で流された血と、その時間を考えれば、死刑制度や日本のマスコミの犯罪報道に違和感を感じるのは当然であろう。その違和感の正体を著者は考え抜いていく。紹介されるノルウェーの現実はすごい。ノルウェーには死刑も終身刑も無期懲役もない。望めば刑務所内で大学教育まで受けることが出来、出所の際には住居と仕事が提供される。11年71月のオスロの政府庁舎の爆破、郊外の島で起きた銃乱射事件を経てもなお、死刑の復活や厳罰化を望む声はないのだという。「罪を憎んで、人を憎まず」ということか。これもまた、人類が到達した地平なんだけど・・・・。