森達也のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
オウムのドキュメンタリー映画があると聞いて、どこかで気になっていたけれど、見る機会が持てずにいた。その映画、『A』の舞台裏を監督自身が語ったこの本も、しばらく前に買っていたのだが、忙しさに紛れて本棚に放り込んだままだった。今、読む気になったのは、ある意味、『1Q84』で何となくオウムのことを思い出したから。そういう意味ではやはり、『1Q84』でいろいろ考えたということなのだろう。1995年という年は大変な年で、年明けから阪神淡路大震災、そして3月には地下鉄サリン事件があって、どうもあの頃から日本の安全神話ががらがらと崩れた感がある。それはともかく、オウム自体にはずーっと「わからない」感がつきま
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Posted by ブクログ
<―オウムの中から見ると、外の世界はどう映るのだろう?一九九五年。熱狂的なオウム報道に感じる欠落感の由来を求めて、森達也はオウム真理教のドキュメンタリーを撮り始める。オウムと世間という二つの乖離した社会の狭間であがく広報担当の荒木浩。彼をピンホールとして照射した世界は、かつて見たことのない、生々しい敵意と偏見を剥き出しにしていた―!メディアが流す現実感のない二次情報、正義感の麻痺、蔓延する世論を鋭く批判した問題作!ベルリン映画祭、山形国際ドキュメンタリー映画祭をはじめ、香港、カナダと各国映画祭で絶賛された「A」のすべてを描く。>
松本死刑囚は死刑を待つ状態にあり、オウム事件は過去のことになりつ -
Posted by ブクログ
本書は、物・事の見方を変える方法論だったり、思考方法だったりを期待して
読み始めると、ちょっと期待はずれになる場合があります。内容は、そうなんですが
科学的、学術的な感じではなく、筆者自身の経験を元に、さらに、短編集のような
感じなので、エッセイを読んでいる感じに似ています。その中で、視点をずらす方法
仕方を学び取るって感じですね。
内容は、上記にも記載しましたが短編集の形態をとっていますので、一貫性を
述べる事は難しいと感じていますが、それでも、ベースとなっているのは、
オウム真理教問題を発端にした、メディア批判でしょう。つまり、視点をずらす
という事の最初の階段は、メディアを信用しない事 -
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Posted by ブクログ
偶然にも今話題のピーター・バラカンによるBABYMETAL批判の話題から始まる。随分前から引っ張ってる話なんですね。
それはそうと、この冒頭対談のテーマとも言える「個が確立し民主主義の根付いた欧米」と「集団主義的な疑似民主主義の日本」という手垢のついた(だからこそ疑う人の少なかった)対比が本書全体を貫くテーマとも言える。それがわずか5年でここまで反転する状況を誰が想像し得ただろうか?個が主張すればするほど民主主義が活性化するのはその通りかもしれないが、それは同時に分断のリスクを孕む。反体制とも言える話者にとって国家という共同体が余りに自明な存在であったことの証左だろう。
繰り返し指摘される日本 -
Posted by ブクログ
好きなライターなので、どんな新しい解釈を提示してくれるのかと期待しながら読み始めた。次々と著作も発表されているためか、1冊1冊の構成の吟味や内容の整理が十分行われないままに発表されているような気がした。「相模原に現れた世界の憂鬱な断面」を、独特の視点で深掘りしてくれることを期待していたのに、実際は日本の裁判の問題点と、被告の責任能力有無の判断にかかわる問題点に、紙面の大半が割かれていた。裁判員制度の開始に伴い、裁判資料が大幅に削減され、裁判が極めて短期に終了することが求められるようになった。その結果、裁判自体が動機や背景に関わる真実の追求の場ではなく、単なるセレモニー化している。こういった問題