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ドキュメンタリー作家森達也氏の「悪役レスラーは笑う」、岩波新書、2005.11発行です。1911年生まれ、1973年没のグレート東郷を描きながら日本のプロレス界を一望した秀作だと思います。アメリカでは卑劣なジャップ、日本では売国奴、守銭奴などと呼ばれたグレート東郷ですが、力道山は東郷の悪口を一回も言わなかったそうです。力道山はノースコリア、東郷はサウスコリア、共にコリア出身の二人が日本のプロレスの礎をつくり、そのファイトに日本国民は熱狂し、自信と誇りを取り戻した。誰も気づかなかった哀しい国威発揚と。
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岩波新書がプロレスを扱うというのは意外だったが、『悪役レスラーは笑う』は何か面白そうだぞという期待はあった。刊行と同時に購入していたにもかかわらず、読まずにいた。しかし最近の打ち続く雨のために電車通勤を余儀なくされ、それを機に読み始めた。いやあ、まいった。これは会心のドキュメンタリーではないか! グレート東郷の出自をめぐって、やれ中国系だいや韓国だと、情報は錯綜する。日本のプロレス界の実は立役者でありながら、その男の生年も出自もなぞに満ちているなんて、なんと言うか、おおらかな時代だったんだと思う。今ではありえないことではないか。それはまさに、筆者の言うとおり、あいまいな領域を残すプロレスに似て、一種のロマンともなりうるわけだ。 筆者の森達也のていねいで執拗な取材も好感が持てる。 読んでいる途中で気づいたのだが、森達也は自主制作映画『A』『A2』をつくった人ではないか! 偶然いがいの何ものでもないが、僕はこの映画を数日前に見たばっかりだったのだ。これらのドキュメンタリー映画についてはいろいろ語りたいことは多いのだが、たしかに森達也という人の人間を見つめる眼には何か共通するこだわりを感じる。それは何だろう。「自分なりに理解したい・自分なりに把握したい・自分なりに納得したい」こう思うことは良くあるが、あきらめようとするときの自己納得にも似たようなその感覚・・・とでも言おうか。ともかく、この本はまぎれもなくおもしろい。テレビ放送黎明期のプロレスの位置づけについてもイメージが湧いた。森達也は注目だ。
グイグイ引き込まれる
特にプロレスファンという訳では無いのですが、森達也の作品がわりと好きで、立読みしたところ面白そうだったので購入しました。
本作は、戦後の日本とアメリカで、観客と関係者の憎悪を一身にニヤニヤとわらいながら浴び続けた悪役レスラー、グレート東郷に視点を当てたドキュメントですが、読んでいるうちに、当時の「社会」が見えてくるような気がします。
それと同時に、グレート東郷という人物にだんだん興味が湧いてきて、活字に吸い込まれました。
文章や内容としては、いつもの森達也らしく終盤の絶妙な尻切れトンボ感はありますが、作家のスタイルなのかな、と、慣れてしまったので気にはなりません。
間違いなく良作です。
街灯テレビに熱狂した世代から、若い世代まで幅広く読んでもらいたい作品です。
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稀代の悪役レスラー「グレート東郷」とは何者なのか?という問いかけを追跡する旅。
数年前、著者が監修?してNHKで特集していたプロレスラー列伝から本書を知り、東郷に興味を持った。その後、DVDで試合も初めて観た。試合内容はともかく、登場から最後までの雰囲気がとても怪しく大いに楽しめる。大観衆の中で1人憎まれるためには、大いなる勇気と恍惚が必要であっただろう。
日本に対し敵国意識が旺盛であった戦後アメリカマット界に君臨し、一世を風靡した大悪役東郷。お約束な世間のコードにのって分かり易い「悪」に徹することで巨万の富を築いたが、また、プロレスラー力道山を育てた一人でもあり、その後、日本マット界へ執着し続けることにもなった。
東郷の半生をその活躍と心理面から辿り、東郷の実体に迫ることで、形成されたコードの根源を探る社会派ミステリーでもある。
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プロレス好きに向けたエッセイではなく、社会的な視点から「プロレス」という土壌を見たルポといった印象。
このジャンルは不得手で全く知識もないが、読みやすく興味深い内容のように思う。
ショービズの世界はいつも好奇の目にさらされて、そしてその実は見ている側は何も理解できていないんだなあと、うわべだけでも熱狂してしまう何かがあるんだということを改めて感じた。これは、プロレスだけではなくって、いろんなことに対していえることなんじゃないでしょうか。
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グレート東郷という存在は、日本プロレス史に欠くことのできない存在。力道山が東郷と組まなければ、外人選手の招聘は力道山の限られたコネクションに頼らざるを得ず、日本プロレスという組織が存続できたかどうか怪しいと思う。
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≪目次≫
プロローグ
第1章 虚と実の伝説
第2章 伝説に隠された<謎>
第3章 笑う悪役レスラー
あとがき
≪内容≫
日本のプロレスの創生期に活動していた「日系レスラー」グレート東郷の
ノンフィクション。何かしっくりこない結論(出自は結局わからない)だが、
プロレス界の様子や戦後すぐの時期の社会の様子などが垣間見えて意外と面白かった。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
第2次大戦直後のアメリカ・プロレス界にて、「卑劣なジャップ」を演じて巨万の富を稼いだ伝説の悪役レスラー、グレート東郷。
さまざまな資料や証言から浮かび上がるその男の素顔は、現代に何を問いかけるのか。
[ 目次 ]
プロローグ――ある<記憶>をめぐって
第1章 虚と実の伝説
第2章 伝説に隠された<謎>
第3章 笑う悪役レスラー
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