森達也のレビュー一覧
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死刑制度、陪審員裁判、メディアのあり方、障害者差別、トランプ安倍首相に代表される過剰な権威主義への傾倒、国民倫理のあり方・・・・一通り網羅されてはいるもののやはり重点が置かれるのは精神鑑定を軸とした司法の問題だ。
だがいくらその異常性を網羅されても、つまり正常な精神状態ではなかったとされても、結局本人の内面性は不可知領域である以上論点にすべきではない。何も前に進まなくなるのだ。
実は本書に抜け落ちている視点が被害者遺族のものだ。遺族は何よりも死刑判決に対して抗うべきではなかったか。名前や写真の公表を控えるのは心情的には理解ができるが、異なるものを排除するという点において死刑制度はまったく植松の -
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日本の司法制度、メディア、社会のあり方について考察したもの。相模原の津久井やまゆり園事件を通して丁寧に考察を重ねていく。裁判員裁判制度のためか、あれほどの大事件がおよそ1ヶ月で結審し、結果としてなぜこのような事態が生じたのかは何も明らかにされなかった。「裁判で事実を明らかにする」ってのはもう期待できない。
一方で報道する側のメディアについても、メディアは社会によって規定されるものであり「メディアやマスコミがゴミ」というなら社会がゴミであるというのと同義だという。そしてゴミが選挙で政治家を選んでいるのが、今の日本なんだとする著者の言は、著者がメディア側の人間であることを差し引いても、ちょっと怖い -
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ネタバレ善と悪の二元論。その間にあるグレーゾーンから目を反らすな。世界はもっと複雑で優しい。そんな森さんの通底するテーマを、相模原の植松聖による障害者襲撃事件を題材に語る一冊。昨今の裁判は、陪審員制度が始まってから極端に描ける時間が短くなっており、極刑を前提に精神鑑定による責任能力の有無のみに終始する。刑の軽重の問題でなく、純粋に事実があいまいなまま終わらせてしまうことへの警鐘を鳴らしている。障害者施設自体に何らかの問題はなかったか。もちろん責任の所在を問う目的ではないので、そこは大きく触れられずあえて問いかけのみに終わらせている。だからこそ、疑い悩むべきはぼくら。早々に結論をくだし、逡巡しない現代社
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だいぶ前に買って読みかけていたのがいつのまにか積ん読の山に紛れ、このたび発掘されたので続きを読んだ。
森達也さんの書くものは常に葛藤にまみれている。揺れている。自分が正しいとは決して思わず迷いながらそれでもご自分が見たもの聞いたこと経験したこと調べたことを真摯に書いている。
ショッキングなタイトルは本書に収録された一コラムのタイトルだけど、この中でも筆者は躊躇なく「自分がその立場に置かれたら」と書きつつ迷う。
疑問を持ち続けること。自明とされている、報道されている、今目の前に見えるもの、それらを(自分を含めて)疑い続けること。その上でバイアスを排して物事をあるがままに認めようともがき続ける -
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メデイア・リテラシーあるいは批判的思考について学ぶのにちょうどよい本。ただし、強く歪んだメディア観もしくは認知的バイアスをすでにもっている人は、この本を読んでもメディア・リテラシーあるいは批判的思考が身につくことは期待できないだろう。だから著者が中心的に訴えかけたいのは、本書の「あとがき」にもある通り10代後半から20代前半ぐらいまでの若者なのだろうと思う。ちくまプリマー新書だし。
それにしても、この本がこの時期に出版され、出版直後にたまたま手にとって読むことができたというのは幸運だった。というのも、つい最近、次のような出来事があったからだ。
2014年12月14日に行われる衆院選の -
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ネタバレ数年前に一度読んだのですが、「忖度」という言葉が流行語となった昨年辺りから気になり、教祖の死刑執行を機に再読することにしました。
下巻の最後は以下の言葉で締めくくられていました ── “いずれにせよ麻原は、おそらく数年以内に処刑される。〔中略〕そのときに自分が何を思うのかはわからない。でもこの社会がどのような反応をするかはわかる。それはきっと、圧倒的なまでの無関心だ。”
「数年以内に処刑される」という部分はちょっと外れましたが、「圧倒的なまでの無関心」ということについては本当にそのとおりでした。
著者の主張は概ね次のとおりです。
① 目が見えず側近からの報告以外に情報源を持ち得ない -
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ネタバレ学生向けのメディア論ですが、
僕みたいなアラフォー世代が読んでもおもしろく、
恥ずかしながら、こんないい年してても「ため」になりました。
メディア・リテラシー
(情報の読み書き能力、
意訳として「読解」と「アウトプット能力」とも言えると思う)
から、メディアがどう情報を編集し演出しているかなどを、
平易で読みすい文体で、
しかし、しっかりした質感の深さでもって
読者に説明し、ではメディアとどう付き合うべきかを問いかけてきます。
テレビ、新聞、SNS、などなどから発信される、巷にはびこる情報がどうつくられていて、
どういう性質で、といったことにはあまり注意をむけない人は多いのではないか。
著