森達也のレビュー一覧
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ネタバレ善と悪の二元論。その間にあるグレーゾーンから目を反らすな。世界はもっと複雑で優しい。そんな森さんの通底するテーマを、相模原の植松聖による障害者襲撃事件を題材に語る一冊。昨今の裁判は、陪審員制度が始まってから極端に描ける時間が短くなっており、極刑を前提に精神鑑定による責任能力の有無のみに終始する。刑の軽重の問題でなく、純粋に事実があいまいなまま終わらせてしまうことへの警鐘を鳴らしている。障害者施設自体に何らかの問題はなかったか。もちろん責任の所在を問う目的ではないので、そこは大きく触れられずあえて問いかけのみに終わらせている。だからこそ、疑い悩むべきはぼくら。早々に結論をくだし、逡巡しない現代社
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だいぶ前に買って読みかけていたのがいつのまにか積ん読の山に紛れ、このたび発掘されたので続きを読んだ。
森達也さんの書くものは常に葛藤にまみれている。揺れている。自分が正しいとは決して思わず迷いながらそれでもご自分が見たもの聞いたこと経験したこと調べたことを真摯に書いている。
ショッキングなタイトルは本書に収録された一コラムのタイトルだけど、この中でも筆者は躊躇なく「自分がその立場に置かれたら」と書きつつ迷う。
疑問を持ち続けること。自明とされている、報道されている、今目の前に見えるもの、それらを(自分を含めて)疑い続けること。その上でバイアスを排して物事をあるがままに認めようともがき続ける -
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メデイア・リテラシーあるいは批判的思考について学ぶのにちょうどよい本。ただし、強く歪んだメディア観もしくは認知的バイアスをすでにもっている人は、この本を読んでもメディア・リテラシーあるいは批判的思考が身につくことは期待できないだろう。だから著者が中心的に訴えかけたいのは、本書の「あとがき」にもある通り10代後半から20代前半ぐらいまでの若者なのだろうと思う。ちくまプリマー新書だし。
それにしても、この本がこの時期に出版され、出版直後にたまたま手にとって読むことができたというのは幸運だった。というのも、つい最近、次のような出来事があったからだ。
2014年12月14日に行われる衆院選の -
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ネタバレ数年前に一度読んだのですが、「忖度」という言葉が流行語となった昨年辺りから気になり、教祖の死刑執行を機に再読することにしました。
下巻の最後は以下の言葉で締めくくられていました ── “いずれにせよ麻原は、おそらく数年以内に処刑される。〔中略〕そのときに自分が何を思うのかはわからない。でもこの社会がどのような反応をするかはわかる。それはきっと、圧倒的なまでの無関心だ。”
「数年以内に処刑される」という部分はちょっと外れましたが、「圧倒的なまでの無関心」ということについては本当にそのとおりでした。
著者の主張は概ね次のとおりです。
① 目が見えず側近からの報告以外に情報源を持ち得ない -
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ネタバレ学生向けのメディア論ですが、
僕みたいなアラフォー世代が読んでもおもしろく、
恥ずかしながら、こんないい年してても「ため」になりました。
メディア・リテラシー
(情報の読み書き能力、
意訳として「読解」と「アウトプット能力」とも言えると思う)
から、メディアがどう情報を編集し演出しているかなどを、
平易で読みすい文体で、
しかし、しっかりした質感の深さでもって
読者に説明し、ではメディアとどう付き合うべきかを問いかけてきます。
テレビ、新聞、SNS、などなどから発信される、巷にはびこる情報がどうつくられていて、
どういう性質で、といったことにはあまり注意をむけない人は多いのではないか。
著 -
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相変わらずどきりとする森達也の著作である。本書もそうだ。「これ、
私のことじゃん」と思う指摘もちらほら。でも、森さん、少々拗ねてる?
ネットで叩かれ過ぎたから?それとも日本の現状に匙投げちゃった?
それでも、きっとこれからも書き続けるんだろうな。「非国民」「売国奴」
「ブサヨ」なんて言葉を投げかけながらも。
某所で私も時にそんな書き込みをされることがあるんだけどさ。なんだ
ろうね、「日本人サイコー」「日本サイコー」って言わない人間はぜ~んぶ
非国民で売国奴でブサヨなのかな。
「飽きた」と言われようと、ウォルター・クロンカイトの言葉をまたまた引く。
「だいたい、愛国主義 -
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森達也の書く内容には毎回どきりとさせられる。本書もそうだ。
それは私にとって都合の悪いことが書かれているからだ。
「当事者のことを慮れ」「当事者の身になってみろ」。大きな事件・
事故・災害等があるとこんなことを書き散らしていることがある。
当事者への共鳴が正義であると思ってるからだ。だが、正義には
もれなく危険が付きまとう。正義だと思い込んだものを振りかざす
時、人は違う意見を排除しようとする。
「まったき正義」はないと思っている。それでも自分の意見が、思想が
正義であると思ってしまうことがある。
だから、森達也が書く文章は耳に痛い。自分の思い上がりを指摘
されるか -
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『A』『A2』『A3』でオウム真理教の内部からドキュメンタリを撮った森達也。『神さまってなに?』というタイトルの本を出していたので手に取った。
タイトルから類推できたのかもしれないけれど、中高生に向けて書かれたような文体になっている。キリスト教、仏教、イスラム教の成り立ちがわかりやすく書かれている。それらの事実についてはある程度知っていることだが、中高生が読むとへぇーそうだったんだと思う程度にまとまっている。
自分が初めて宗教に向き合ったのは、シリア人の学生と同じ研究室に入ったときかもしれない。時間が来るとお祈りをしないといけないその人と一緒にいて、少し面倒だなあと軽いカルチャーはありなが