森達也のレビュー一覧

  • いのちの食べかた

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    屠殺について見たり聞いたりする機会って、確かにないよな~。そしてそれをあまり不思議に思わないってことも、考えてみれば不気味な話だよな~。あちこち興味を持って動かない個人にも非はあるかもしれないけど、それをそうと気付かせない体制の側にも大いなる瑕疵があるのは間違いない。掘り起こさないと見えてこないものを見出す視点を、これからも根気強く涵養したい。本作の感想としては、第一にそれ。

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    2021年06月15日
  • U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面

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    社会から逸脱した存在。どうしても、そう思えない気持ち悪さがあった。社会からはみ出した部分じゃないからこそ、共感する人がいた。批判する人がいた。蓋をしてしまう人がいた。

    グレーゾーン。それは社会の外部ではなくて、内部のもの。社会が作り出した二元論の狭間から、生まれ出てきたもの。だから、どこか自分の中に既視感がある。グレーゾーンで社会の欠片を拾い集めた彼は、AIみたいだな、と思った。決して他人事ではない。彼を作り出した社会の欠片であるという自覚を。

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    2021年05月18日
  • 「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい

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    正義という相対的な思想は、時に戦争という非人道的な惨劇に転化する。法のもとで人を殺す死刑制度、それが果たして正義なのか。正義をとことん疑う。メディアから溢れ出てくる情報は発信する側のフィルターがかかった偏向な事象でしかない。盲信という安易な価値基準から抜け出していく。悩まない日常に平穏は訪れない。苦悩する果てに未確定な希望が見えてくる。"安心安全" を謳う怪しさはすぐさま正義を持ち出して線引き・分断を提示する。そこに怒りをこめて打破したい。ここにも "苦悩" と "怒り" が秘められている。

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    2021年04月29日
  • FAKEな日本

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    森達也氏は同世代。同じ空気感を味わっている。
    ピーターバラカン:擬似的民主主義国家。
    つまり擬似的独裁国家。つまりフェイク。「空気を読む」ことを是とする。日本人の国民性に強く根付いている。ずっと変わらないのか?自発的な隷従。
    森氏の著作を読むにつれ、日本人として寂しさを感じてくる。

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    2021年04月29日
  • U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面

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    識者達とのインタビューを通して事件を紐解く・・否、紐解かない。どころか、あえてもつれさせる。「責任能力なし」に納得いかなくてもそれが法の趣旨。加害者に「お前が悪いんだ」と制裁を加え、溜飲を下げるために刑罰があるのではない。寛容を求めるわけではない。起きてしまった過ちをまた起こさないためには?裁判は手続きというアリバイのためにあるのではない。書くことは誰かを助けるが誰かを傷付ける。その覚悟を持つ人だけがやる。「わかり易さ」に甘んじてはいけない。「わからない」もどかしさがなければ、「わかる」ことさえできない。

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    2021年04月16日
  • U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面

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    死刑制度、陪審員裁判、メディアのあり方、障害者差別、トランプ安倍首相に代表される過剰な権威主義への傾倒、国民倫理のあり方・・・・一通り網羅されてはいるもののやはり重点が置かれるのは精神鑑定を軸とした司法の問題だ。
    だがいくらその異常性を網羅されても、つまり正常な精神状態ではなかったとされても、結局本人の内面性は不可知領域である以上論点にすべきではない。何も前に進まなくなるのだ。
    実は本書に抜け落ちている視点が被害者遺族のものだ。遺族は何よりも死刑判決に対して抗うべきではなかったか。名前や写真の公表を控えるのは心情的には理解ができるが、異なるものを排除するという点において死刑制度はまったく植松の

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    2021年02月22日
  • U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面

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    日本の司法制度、メディア、社会のあり方について考察したもの。相模原の津久井やまゆり園事件を通して丁寧に考察を重ねていく。裁判員裁判制度のためか、あれほどの大事件がおよそ1ヶ月で結審し、結果としてなぜこのような事態が生じたのかは何も明らかにされなかった。「裁判で事実を明らかにする」ってのはもう期待できない。
    一方で報道する側のメディアについても、メディアは社会によって規定されるものであり「メディアやマスコミがゴミ」というなら社会がゴミであるというのと同義だという。そしてゴミが選挙で政治家を選んでいるのが、今の日本なんだとする著者の言は、著者がメディア側の人間であることを差し引いても、ちょっと怖い

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    2021年02月14日
  • 「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい

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    ネタバレ

    死刑の話かと思ったら、色んなジャンルの事が書かれてた。
    約10年程前に書かれたものもあり、懐かしいニュースもある。
    テレビの言ってる事に違和感を覚えたのは高校生の時。その時の自分の感覚は正しかったのだと再認識!
    やっぱり鵜呑みにしないで、きちんと自分の頭で物事を考えないと!

    印象的だったのは、朝鮮語の翻訳者の話。
    私も英語やけど字幕と実際に言ってる事の意味合いが微妙に違うと思ったことが何度かあった。

    信頼できるニュースやメディアを探すのって大変ね。

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    2021年02月04日
  • いのちの食べかた

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    「たべる」ことについてだけではない、「考え、生きる」ことについて、大人だってわかっているつもりで忘れてしまうことについて、再度気づかされる本。

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    2021年01月13日
  • U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面

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    ネタバレ

    善と悪の二元論。その間にあるグレーゾーンから目を反らすな。世界はもっと複雑で優しい。そんな森さんの通底するテーマを、相模原の植松聖による障害者襲撃事件を題材に語る一冊。昨今の裁判は、陪審員制度が始まってから極端に描ける時間が短くなっており、極刑を前提に精神鑑定による責任能力の有無のみに終始する。刑の軽重の問題でなく、純粋に事実があいまいなまま終わらせてしまうことへの警鐘を鳴らしている。障害者施設自体に何らかの問題はなかったか。もちろん責任の所在を問う目的ではないので、そこは大きく触れられずあえて問いかけのみに終わらせている。だからこそ、疑い悩むべきはぼくら。早々に結論をくだし、逡巡しない現代社

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    2021年01月04日
  • 定点観測 新型コロナウイルスと私たちの社会 2020年前半

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    コロナ禍の中で世の中の変化が加速されている。取り残される人々も出てくるだろうし、人と人との関係も変わってくるだろう。その変化を定点観測しようという試み。集められたのは哲学者、社会学者からブロガーまでさまざまだけど、いわゆる左派に属する人が多い。2020年7月頃に書かれたものが多く、その後の変化を先取りした内容も多い。現在第3波の中で先が見えない閉塞状態だが、半年ごとにまとめるそうなので次作も期待。

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    2021年01月02日
  • 「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい

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    発売された当時に購入して、その時は途中までしか読めなくて、でも大事なことが書いてありそうだったからずっと持っていた本。
    最近、世の中のことや、人の心と社会の動きのつながりのようなものが気になりはじめていて、その考えを深めてくれそうだなと思いもう一度手にとった。
    今度は、最後まで一気に読んでしまった。
    森さんがこの本を上梓したときから、世の中はますます共同幻想的な傾向が強くなっていると思う。
    実態のない恐怖にみんなが怯えていて、そのこころが解きほぐされなければ、みんな優しくなれない。

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    2020年08月30日
  • 「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい

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    だいぶ前に買って読みかけていたのがいつのまにか積ん読の山に紛れ、このたび発掘されたので続きを読んだ。

    森達也さんの書くものは常に葛藤にまみれている。揺れている。自分が正しいとは決して思わず迷いながらそれでもご自分が見たもの聞いたこと経験したこと調べたことを真摯に書いている。
    ショッキングなタイトルは本書に収録された一コラムのタイトルだけど、この中でも筆者は躊躇なく「自分がその立場に置かれたら」と書きつつ迷う。

    疑問を持ち続けること。自明とされている、報道されている、今目の前に見えるもの、それらを(自分を含めて)疑い続けること。その上でバイアスを排して物事をあるがままに認めようともがき続ける

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    2020年06月18日
  • はじめての政治哲学

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    ハンディだけれども、しっかり読むと、とても重厚。「哲学」を延々と書いてあるわけでもなく、論点をロジカルに紹介してくれており、現在の多数派がどう考えてるか、もなんとなくわかる。巻末の参考書リストは、とても興味を惹く。

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    2019年09月26日
  • 「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい

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    (日本的)自由主義者によるコラム集
    内容は、かなり偏っているけれど、自分の考えが偏ってきた時に読むと、アタマがほぐれる。

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    2019年05月21日
  • たったひとつの「真実」なんてない ――メディアは何を伝えているのか?

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     メデイア・リテラシーあるいは批判的思考について学ぶのにちょうどよい本。ただし、強く歪んだメディア観もしくは認知的バイアスをすでにもっている人は、この本を読んでもメディア・リテラシーあるいは批判的思考が身につくことは期待できないだろう。だから著者が中心的に訴えかけたいのは、本書の「あとがき」にもある通り10代後半から20代前半ぐらいまでの若者なのだろうと思う。ちくまプリマー新書だし。

     それにしても、この本がこの時期に出版され、出版直後にたまたま手にとって読むことができたというのは幸運だった。というのも、つい最近、次のような出来事があったからだ。

     2014年12月14日に行われる衆院選の

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    2019年01月22日
  • 死刑のある国ニッポン

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    死刑存置派と死刑廃止派の二人が手加減なしで語り合う。
    お互いの主張を聞き、同意するところは同意し、反論するところは反論する。当たり前のことだけど、これができない人が横行している世の中で、この二人のやりとりは貴重だと思う。

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    2019年01月03日
  • 「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい

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     著者は、一般の人やメディアが無自覚に持つ信念に潜む偽善や虚勢に、敏感でその無自覚に恐怖すら感じるのだろう。死刑に関する著書を読んだ時も、納得し、自分の無自覚を反省したはずだが、だらだらとニュースと新聞を受け取っているうちに、いつの間にか死刑容認を身につけている。人間は、錯覚を持つことで自己を保っているところがある。そんなどうしようもなさへの警鐘は、明らかにし続けなければならないでしょう。地下鉄サリン事件にかかわる死刑囚が、全員執行されたことを、著者はどう思っているのでしょう。

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    2018年12月26日
  • 世界が完全に思考停止する前に

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    著者は、大抵の人がそのまま聞き流したり、当然のことと感じてしまうさまざまな事に、はっとするような角度から主張を始める。もちろん、著者の主張が全て納得いくものではなかったが。先の『ドキュメンタリーは嘘をつく』でも感じたのだが、森達也という人は本能的に多数の人と同じ方向を向くことができないようだ(違う方向を見るというより多数の視線を逆方向から見返すような感じ)。

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    2018年10月24日
  • A3 上

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     数年前に一度読んだのですが、「忖度」という言葉が流行語となった昨年辺りから気になり、教祖の死刑執行を機に再読することにしました。

     下巻の最後は以下の言葉で締めくくられていました ── “いずれにせよ麻原は、おそらく数年以内に処刑される。〔中略〕そのときに自分が何を思うのかはわからない。でもこの社会がどのような反応をするかはわかる。それはきっと、圧倒的なまでの無関心だ。”
     「数年以内に処刑される」という部分はちょっと外れましたが、「圧倒的なまでの無関心」ということについては本当にそのとおりでした。

     著者の主張は概ね次のとおりです。
    ① 目が見えず側近からの報告以外に情報源を持ち得ない

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    2018年09月23日