大崎善生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この夏一番の出来事は、この小説との出会い。
こんなにもノンフィクション小説に心が揺さぶられるとは。
限られた命であることは長短あれど誰もが同じである。1番のポイントは、人生に目標があるかないかで、ここまで人生の濃さは変わるということ。カッコいい。
そして、もうひとつ。貪欲さ。
限られた体力と人生の時間を自覚しているからこそ、なにごとにも貪欲である。遊びも趣味も。
その姿勢はすぐにでも学ばなければいけない。
そして、魅力的な人間、村山聖さん。
ユーモラスでいることがいかに周りを幸せにするか。
好かれる、愛される。とても眩しい。
フォスター制度で支援していたことにも、感銘を受けた -
Posted by ブクログ
単行本刊行時から気になっていて、ノンフの文庫化はハードルが高かな、とか思ってたんだけど、まずは無事文庫になって良かった。はらわた煮えくり返る胸糞悪い内容だけど、より汎用性の高い形で読み継がれるのは歓迎すべき。
注意していれば避けられたというようなものじゃなく、災害とでも呼ぶしかない凶事には、心底慄然とさせられる。愚者が群れることによって無駄に膨張した負のエネルギーが、何の罪もない平和を踏みにじる惨状は、戦時における無辜の市民にも重なる。極刑然り。そして最後のメッセージが"2960"。本当はその何倍も、感謝の意を遺したかったであろう無念を思うと、我がことのように胸が痛む。
謹 -
Posted by ブクログ
大崎善生『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』角川文庫。
真面目な前途ある女性が犠牲になった極悪非道の悲惨な事件をテーマにしたノンフィクション。前半を読み、事件から10年以上も経過し、可哀想な女性被害者の人生を克明に掘り起こす理由が自分には見当たらず、少し違和感があった。しかし、犠牲になった磯谷利恵さんが死の目前にあっても毅然とした態度を貫いたこと、母親との強い絆を培っていたことを知り、犯人たちを絶対に許せない、許してはならないという強い怒りが沸々と湧いてきた。
2007年8月24日の深夜、名古屋の高級住宅街の一角で帰宅中の磯谷利恵さんが3人の男に拉致され、金品を奪われた挙げ句に惨殺される -
Posted by ブクログ
正直言うと腎ネフローゼという病気もよく知らないし、棋士村山聖の事も、ニュースか何かで目にした事がある程度で、将棋に特別な興味があるわけでも無い。それなのに何故この本を手に取ったのだったか。生きる事に必死になった一人の人生を味わいたかったからだ。それこそがドラマだと思うし、数時間でその人の一生を体験できる読書の味わいの一つだと思うのだ。死ぬかも知れないという恐怖は誰しも感じはするが、迫り来る死の影に追われるような日々を将棋のような特殊な世界にのめり込んで過ごした青春。誰よりも生きる力を感じさせ、しかし、若くして尽きた一流棋士。生き様から、そしてその素直さからは、学ぶ事が多い。また、彼を導いた師匠
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★五つです。しかし・・・。
大崎善生さん、どう捕らえるべきか未だに悩んでいます。
個人的にはビシッと嵌ってしまうのですが、世の中一般から見てどうなのか?純文学なのか大衆文学なのか(余り意味の無いことですけど)、女性から見てどうなのか?
前作「パイロットフィッシュ」と同じ主人公ですが、つながりはありません。アダルト雑誌の編集者を務める主人公・山崎が、水溜りばかり写している写真家・葉子と出会い、恋に落ち、同棲。しかし、葉子が進行性の癌に罹っていることが判り、最後の地として選んだニースで葉子の死を看取る。そんなお話です。
文章は清冽です。そして、主人公の二人はもちろん、葉子を紹介するSMの女 -
Posted by ブクログ
5歳のときに発覚した重い腎臓病と闘いながら、29年という若さで亡くなった天才棋士・村山聖の生涯を描く。
本来は兄や友達と全力で外を走り回っていたはずの時期を、病院のベッドで過ごさなくてはならなかった少年のもどかしさや苛立ちは言葉には出来ません。病床で偶然手に取った将棋の本が彼の人生を決定付けます。水を得た魚のように将棋の技巧を会得していく聖少年。
その後は将棋界の階段を字の如く駆け上がっていきますが、見事な功績の背景には常に体の不調が取り巻いていました。彼の意見を尊重し支え続けた家族や、特に献身的に彼を世話した師匠の存在が際立ちます。
命を削るように最期まで将棋に打ち込む――全力投球の生き方 -
購入済み
切なさという不思議な感覚
彼の小説は、疲れ果てた時に飲む一杯のウイスキーによく似ている。心地よい倦怠感、そんな独特の感覚が読了した自分を包むのである。この小説は短編集であるが、全ての話が日常の切なさを切り取ったような形をしている。戻らぬ少年時代の思い出、疎遠になった友人の現状、死にゆく者が残したものなど、誰もが経験したであろう切なさが一冊に纏められている。日常生活に疲れ、心がくたびれてしまった、そんな方に読んでもらいたい一冊。
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鬱病だった長女が自殺、それが遠因となり妻と離婚、その後会社を早期退職した主人公が、咄嗟の思いつきでウラジオストクからリスボンまで、鉄道を乗り継いでユーラシア大陸を横断。
ユーラシア大陸の最西端で自殺をするために、主人公よりも5日間早く同じ経路を進むエリカの存在をウラジオストクで知り、エリカの自殺を止めるためにその後を追う物語です、やっぱり一文では書けない。。
>学生時代からそう大きな問題意識も持たず、ただ流されるように就職し結婚し家庭を設け、二人の娘を育て、ほとんど何も考えることなく会社や派遣先と自宅を通う生活を三十年近くも続けてきた。
>その生活は人間らしい感覚のどこかの神経を圧迫しブ -
Posted by ブクログ
ネタバレ大崎善生さんの書くものが好きだ。
読むのは12冊目になる。
熱帯魚、出版業、環状線をぐるぐると回る、ヨーロッパ、音楽…
そういう繰り返されるモチーフの中に、はっとする言葉がある。
キャラクターとか関係性とか心情とかそういう物語の在り様ではなくて、
言葉拾いをしながら読むような感じ。
安定して流れる物語の中で、安心して自分のための言葉を探せる。
小説の中で扱われたような意味合いでは見たことの無い言葉。
今回は「くもの巣の修繕」、「窓」、「掘削機」がわたしに差し出された。
「鍋」や「ノシイカ」、「ロバ」、「小石」、「中指」、それだって良かった。
読みながら、沢山の知人を想起したこともおもし