大崎善生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
これは実際に起きた事件を基にしたフィクションである。
また同時に、強く、賢く、生き抜いた女性の記録である。
私はこの本を読んで決して泣いてはいけないと思った。
無残に殺されたかわいそうな女性の話ではない。
強く誠実に人生を生き抜いたひとりの女性の姿と
その女性がどうして強くあれたか、をつまびらかにしてくれている。
その女性は決して特別な人ではなく、
ごく普通に壁にぶち当たり、
それを乗り越え、日々を過ごしてきた
私と変わらない人だったことに驚きを隠せない。
また、その最後の瞬間まで
彼女のように私は強くあれるか。
いや、強くありたいと勇気をもらえた。
事件の生々しさ、犯人や被害者が守られない
理不尽さに憤りを覚えた。
裁判の意味のわからない前例、
被害者を苦しめる環境の中、
強く戦う母と恋人、
それに賛同して活動する周りの方々に
私もそんな風に強く強く生きたいと思った。
当たり前の明日が約束されてると
なぜ私たちは考えているのだろうか。
考えさせられる良書。 -
Posted by ブクログ
この夏一番の出来事は、この小説との出会い。
こんなにもノンフィクション小説に心が揺さぶられるとは。
限られた命であることは長短あれど誰もが同じである。1番のポイントは、人生に目標があるかないかで、ここまで人生の濃さは変わるということ。カッコいい。
そして、もうひとつ。貪欲さ。
限られた体力と人生の時間を自覚しているからこそ、なにごとにも貪欲である。遊びも趣味も。
その姿勢はすぐにでも学ばなければいけない。
そして、魅力的な人間、村山聖さん。
ユーモラスでいることがいかに周りを幸せにするか。
好かれる、愛される。とても眩しい。
フォスター制度で支援していたことにも、感銘を受けた。
イメージが壊れては嫌だから映画はすぐには見たくないと思った。
でも、冷静に考えれば、映像で見ることでまた違う角度で村山聖さんの人生を追体験できるかもしれないので、やはり見たい気もする。 -
Posted by ブクログ
単行本刊行時から気になっていて、ノンフの文庫化はハードルが高かな、とか思ってたんだけど、まずは無事文庫になって良かった。はらわた煮えくり返る胸糞悪い内容だけど、より汎用性の高い形で読み継がれるのは歓迎すべき。
注意していれば避けられたというようなものじゃなく、災害とでも呼ぶしかない凶事には、心底慄然とさせられる。愚者が群れることによって無駄に膨張した負のエネルギーが、何の罪もない平和を踏みにじる惨状は、戦時における無辜の市民にも重なる。極刑然り。そして最後のメッセージが"2960"。本当はその何倍も、感謝の意を遺したかったであろう無念を思うと、我がことのように胸が痛む。
謹んでご冥福をお祈り申し上げます。 -
Posted by ブクログ
大崎善生『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』角川文庫。
真面目な前途ある女性が犠牲になった極悪非道の悲惨な事件をテーマにしたノンフィクション。前半を読み、事件から10年以上も経過し、可哀想な女性被害者の人生を克明に掘り起こす理由が自分には見当たらず、少し違和感があった。しかし、犠牲になった磯谷利恵さんが死の目前にあっても毅然とした態度を貫いたこと、母親との強い絆を培っていたことを知り、犯人たちを絶対に許せない、許してはならないという強い怒りが沸々と湧いてきた。
2007年8月24日の深夜、名古屋の高級住宅街の一角で帰宅中の磯谷利恵さんが3人の男に拉致され、金品を奪われた挙げ句に惨殺される。犯人の3人、神田司、堀慶末、川岸健治は携帯電話の闇サイトで3日前に知り合ったばかりだと言う。余りにも身勝手な冷酷無比なる悪魔の所業……
未成年者でもあるまいし、こんな悪魔は全員死刑にしてしまえば良いのに、司法というのは判例だとか社会への影響だとか余計なことを考えて躊躇するものだから、次々と悪魔は産まれるのだ。死刑になったのは3人のうちの1人。無期懲役になった2人はいつの日か社会に復帰し、のうのうと生を享受するのだろう。最後まで生きたいと願う磯谷利恵さんの希望も、未来も、全てを奪った悪魔が野に放たれると思うと、何とも遣り切れない。
本体価格720円
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Posted by ブクログ
★五つです。しかし・・・。
大崎善生さん、どう捕らえるべきか未だに悩んでいます。
個人的にはビシッと嵌ってしまうのですが、世の中一般から見てどうなのか?純文学なのか大衆文学なのか(余り意味の無いことですけど)、女性から見てどうなのか?
前作「パイロットフィッシュ」と同じ主人公ですが、つながりはありません。アダルト雑誌の編集者を務める主人公・山崎が、水溜りばかり写している写真家・葉子と出会い、恋に落ち、同棲。しかし、葉子が進行性の癌に罹っていることが判り、最後の地として選んだニースで葉子の死を看取る。そんなお話です。
文章は清冽です。そして、主人公の二人はもちろん、葉子を紹介するSMの女王・ユーカも、ライターの高木も、高校時代の先輩・美津子も、登場人物はみな心優しく、そしてどこか哀しい。そこに猛烈に惹かれてしまいます。しかし、どこか騙された感じもあります。
まあ、何はともあれ、自分の感覚を大切にして★5つにしておきます。
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購入済み
切なさという不思議な感覚
彼の小説は、疲れ果てた時に飲む一杯のウイスキーによく似ている。心地よい倦怠感、そんな独特の感覚が読了した自分を包むのである。この小説は短編集であるが、全ての話が日常の切なさを切り取ったような形をしている。戻らぬ少年時代の思い出、疎遠になった友人の現状、死にゆく者が残したものなど、誰もが経験したであろう切なさが一冊に纏められている。日常生活に疲れ、心がくたびれてしまった、そんな方に読んでもらいたい一冊。
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Posted by ブクログ
鬱病だった長女が自殺、それが遠因となり妻と離婚、その後会社を早期退職した主人公が、咄嗟の思いつきでウラジオストクからリスボンまで、鉄道を乗り継いでユーラシア大陸を横断。
ユーラシア大陸の最西端で自殺をするために、主人公よりも5日間早く同じ経路を進むエリカの存在をウラジオストクで知り、エリカの自殺を止めるためにその後を追う物語です、やっぱり一文では書けない。。
>学生時代からそう大きな問題意識も持たず、ただ流されるように就職し結婚し家庭を設け、二人の娘を育て、ほとんど何も考えることなく会社や派遣先と自宅を通う生活を三十年近くも続けてきた。
>その生活は人間らしい感覚のどこかの神経を圧迫しブロックし続けていたに違いない。
>自分の人間としての感情豊かなどこかの部分が完全に痺れて、やがて疼痛も感じなくなってしまっていった。
何も感じない考えないようにしてきたサラリーマン生活、それでも長女を死なせてしまったことへの絶望と後悔。
長い長い鉄道旅に相応しく、これらを振り返り、折り合いや意味をつけていく過程がゆっくりとゆっくりと描かれています。
本文は非常に長く、とにかくゆっくり進んでいきます。
大崎さんのファンや、大崎さんの表現を受け入れられる人じゃないとつらいかもしれません。
とは言え、自身の再生や再出発のために長女の自殺を見つめ直し、エリカに相対する主人公の姿は心に迫るものがあります。
なお驚くほど唐突に性描写が出てきます、その唐突さが全体を通して唯一解せないポイントです。
でも私はリアリティ一辺倒ではない大崎さんの表現が大好きです。
>まるでそこから何かが溶け出てしまうのではないかと思えるほどのキスをした。
>それはキスというよりも粘液と粘液の融合といってもよかった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ大崎善生さんの書くものが好きだ。
読むのは12冊目になる。
熱帯魚、出版業、環状線をぐるぐると回る、ヨーロッパ、音楽…
そういう繰り返されるモチーフの中に、はっとする言葉がある。
キャラクターとか関係性とか心情とかそういう物語の在り様ではなくて、
言葉拾いをしながら読むような感じ。
安定して流れる物語の中で、安心して自分のための言葉を探せる。
小説の中で扱われたような意味合いでは見たことの無い言葉。
今回は「くもの巣の修繕」、「窓」、「掘削機」がわたしに差し出された。
「鍋」や「ノシイカ」、「ロバ」、「小石」、「中指」、それだって良かった。
読みながら、沢山の知人を想起したこともおもしろかった。
それから、イッセー尾形さんの解説もぴたり。
これでまた、大丈夫になった。
きっと、次読むときに見つかるのは別の言葉だろうっていう予感。