読み終わった後、感情の整理が出来なかったのですが、落ち着いてきた今感想を書いてみようと思います。
読んでいる途中で、何度も泣きスポットがありました。
将棋のプロを目指すべく奨励会に入ったものの、プロになることはできずに奨励会を去っていた瞬間。
それ以上に胸を熱くさせるのは、奨励会を後にした後にどうや
...続きを読むって人生を立て直ししていくかの過程です。
涙なしには読むことができません。
成田という一人の男性を中心にストーリーは進みますが、それ以外のかつてはプロを目指していた人についても書かれています。
奨励会を退会しても将棋を別の世界で続ける者、将棋の世界とは別の世界で生きる者。
夢破れても人生は続いていきます。
私は夢が破れるタイミングが悲惨に感じました。
十代(早いと)、二十代で自分の一生をかけて努力してきたものの結果を突き付けられ、その道を絶たれてしまう。
普通の人はこれから人生の目的に向かって歩き出そうとしている時期に、人生賭けて目指していたものの道を絶たれてしまうのです。残酷です。
文中に下記のフレーズがあります。
”これまでの人生で、将棋のほかのことは何もしていない。こんな自分が将棋をやめていったい何ができるというのだろう。”(抜粋)
夢を目指している時には考えもしなかった不安が諦めの気持ちを持ち始めた瞬間に押し寄せてきます。
人生が狂ってしまうのもわかる気がします。
しかし、人生賭けて何かを頑張ってきたという事実は消えることはありません。
それに気づけたときに、人生が開けていきます。
それは夢を追いかけていた世界では報われなかったのかもしれません。でも、長い目で見るとこの時期があったからこそ、今の自分が存在している。この時期こそが生きる原動力であり、自分の人格を形成している全てであることが理解できると、次のステージに進むことができるのかもしれません。
成田の言葉に以下のフレーズがありました。
”「いや。これだけはさあ。これだけは置いていけなかったんだ。だからポケットにつっこんでさぁ、持ってきたんだ。だって、これがこっちの人生のすべてなんだもの。これがなきゃ、こっち何やってきたのかもわからなくなっちゃう、何も証明できなくなっちゃうもの」”(抜粋)
訳あって、借金取りから逃げて生活していた成田ですが、逃げる際に母親の写真を置き去りにしても奨励会を退会した時にもらった駒は持ち続けていました。
奨励会を卒業してプロになれなかった。その一点を見れば「負けた」という事なのかもしれません。しかし、人生は長い。その先もずっと続いていきます。
目指した世界では勝てなくても、自分の勝てる場所を見つけることは誰にもチャンスが与えられています。
死にたくなるくらい辛い経験をしても、生きていれば勝てる時がくる。
たとえ夢破れたとしても、人生を賭けてやりきった先に見えるもの、そこからでないと見えない景色は絶対にあるのだと思います。
その経験をした人はやっぱり強い。
そういう人ってGRITっていうのかな?やり抜く力が尋常じゃないと思うんですよね。
将棋の話というよりは、人生再生の物語といったほうがいいかもしれません。
個人的には江越のストーリーが好きです。