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Posted by ブクログ
読書の秋ってことで積読してきた本を読んでいて、その中の一冊がパイロットフィッシュでした。
何でずっと読まずにいたんだろうと思うくらいとてもいい本でした。章ごとによって話の展開が異なるので少し頭を整理しながら読む必要はありましたが、内容も非現実的なお話ではないので、感情を重ねながら読むことができます。私の性格的に、感情移入をしがちなのですが、この本は特にそうでたくさんの登場人物に感情移入をしてしまいました。次は?次は?とどんどん内容が気になります。一つの章もそんなに長くないのでサクッと読めますが、読んだ後の余韻はしっかり重いです。
記憶を消してもう一度読みたいと思えるような本です。
Posted by ブクログ
いつこの本を読んだんだっけな。20代の、一人暮らしの部屋、そして大学の近くのカフェ。記憶があいまいで、記憶のそこに手を伸ばすように、インターネットで検索した。なんとかフィッシュ、、タイトルが出てこない。そして、大崎善生の本作品を探し当てて、読んだ。なぜか、この本が記憶に残り、そして今なんとなく読むべきだと思った。本とは本当に不思議なものだ。
読み始めてすぐ、この本の本質、つまり出だしにびっくりした。体の中に記憶を沈めておく湖のようなものがあり、時としてその記憶に手を伸ばし、こぼれ落ちてしまう。まるで水をすくっているような感覚で記憶をとらえて、その記憶は決して戻らないこともある。本作は、こうした過去の記憶を手ですくって、こぼれ落ちていく中でも、記憶と共に生きていくしかない人間を描いているものだからだ。
田舎から出てきた主人公の男、小さなエロ雑誌の出版社で雑誌、週刊エレクトの編集者になった彼には、川上由紀子という女性との出会い、孤独を埋めてくれた存在だった。大学一年生とは、そういう絶望的に感傷的な時期だったのかもしれない。川底から出てください。私とあなたがあった意味、付き合った意味は、そういう何か自分の中に起こるケミストリー、心臓を鷲掴みにするような感覚、失った時に呆然とぽっかりと穴が開く感じ。そして、愛が本当だったら、またどこかで出会える。そういう話だった。記憶を剥がせないシールと表現するように、ビタッと張り付いて剥がすことができないもの、忘れたくても忘れられないもの。アクアリウムの中と、部屋の中の自分、その対比の中に、記憶の水の底と船の上の自分をリンクさせている。
風俗嬢の取材を通して、痩せてしまって精神的にも追い詰められた、自分の部屋に飛び込んできた可奈ちゃんを、2週間介抱して、彼女が出て行った時に置いて行ったのが、ドッグフードとアジアンタム。アジアンタムブルーという次作にも繋がるくだりがあったりして、改めて2度目か3度目かの読書だけれど、改めて心を抉っていくような鋭さと優しさと透明感を持っていると思う。
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