【感想・ネタバレ】パイロットフィッシュのレビュー

あらすじ

人は、一度巡りあった人と二度と別れることはできない――。午前二時、アダルト雑誌の編集部に勤める山崎のもとにかかってきた一本の電話。受話器の向こうから聞こえてきたのは、十九年ぶりに聞く由希子の声だった……。記憶の湖の底から浮かび上がる彼女との日々、世話になったバーのマスターやかつての上司だった編集長の沢井、同僚らの印象的な姿、言葉。透明感あふれる文体で綴る至高のロングセラー青春小説。吉川英治文学新人賞受賞作。

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Posted by ブクログ

読書の秋ってことで積読してきた本を読んでいて、その中の一冊がパイロットフィッシュでした。
何でずっと読まずにいたんだろうと思うくらいとてもいい本でした。章ごとによって話の展開が異なるので少し頭を整理しながら読む必要はありましたが、内容も非現実的なお話ではないので、感情を重ねながら読むことができます。私の性格的に、感情移入をしがちなのですが、この本は特にそうでたくさんの登場人物に感情移入をしてしまいました。次は?次は?とどんどん内容が気になります。一つの章もそんなに長くないのでサクッと読めますが、読んだ後の余韻はしっかり重いです。
記憶を消してもう一度読みたいと思えるような本です。

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2025年10月22日

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美しい水槽で輝きを放ち、群れを成して泳ぐパイロットフィッシュ。心地良いビートルズナンバー…どこか切なく、透明感ある筆致に心を引かれる。吉川英治文学新人賞受賞作品。

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2025年08月23日

Posted by ブクログ

いつこの本を読んだんだっけな。20代の、一人暮らしの部屋、そして大学の近くのカフェ。記憶があいまいで、記憶のそこに手を伸ばすように、インターネットで検索した。なんとかフィッシュ、、タイトルが出てこない。そして、大崎善生の本作品を探し当てて、読んだ。なぜか、この本が記憶に残り、そして今なんとなく読むべきだと思った。本とは本当に不思議なものだ。
読み始めてすぐ、この本の本質、つまり出だしにびっくりした。体の中に記憶を沈めておく湖のようなものがあり、時としてその記憶に手を伸ばし、こぼれ落ちてしまう。まるで水をすくっているような感覚で記憶をとらえて、その記憶は決して戻らないこともある。本作は、こうした過去の記憶を手ですくって、こぼれ落ちていく中でも、記憶と共に生きていくしかない人間を描いているものだからだ。
 田舎から出てきた主人公の男、小さなエロ雑誌の出版社で雑誌、週刊エレクトの編集者になった彼には、川上由紀子という女性との出会い、孤独を埋めてくれた存在だった。大学一年生とは、そういう絶望的に感傷的な時期だったのかもしれない。川底から出てください。私とあなたがあった意味、付き合った意味は、そういう何か自分の中に起こるケミストリー、心臓を鷲掴みにするような感覚、失った時に呆然とぽっかりと穴が開く感じ。そして、愛が本当だったら、またどこかで出会える。そういう話だった。記憶を剥がせないシールと表現するように、ビタッと張り付いて剥がすことができないもの、忘れたくても忘れられないもの。アクアリウムの中と、部屋の中の自分、その対比の中に、記憶の水の底と船の上の自分をリンクさせている。
風俗嬢の取材を通して、痩せてしまって精神的にも追い詰められた、自分の部屋に飛び込んできた可奈ちゃんを、2週間介抱して、彼女が出て行った時に置いて行ったのが、ドッグフードとアジアンタム。アジアンタムブルーという次作にも繋がるくだりがあったりして、改めて2度目か3度目かの読書だけれど、改めて心を抉っていくような鋭さと優しさと透明感を持っていると思う。

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2025年04月01日

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ネタバレ

パイロットフィッシュ

「人は一度巡り合った人と二度と別れることはできない。なぜなら人気には記憶という能力があり、そして否が応にも記憶と共に現在を生きているからである」という文書から、この本は始まります。

アダルト雑誌の編集者をしている主人公山崎のもとに、真夜中に電話がかかってくる。声だけで誰かを理解する主人公。それは大学時代の彼女である由希子だった。
由希子は、かつて山崎が就職で苦労していた頃に、編集者として勤める文人出版を探してきた女性であった。また、大学に馴染めず、アパートの一室で沈んでいた山崎を救い出した女性でもあった。
電話の話の中でパイロットフィッシュの話を由希子にする山崎。パイロットフィッシュとは、水槽の環境づくりのために一番最初に水槽に入れる魚のこと。
由希子と電話から、かつての自分を想起し、いろいろなことを思い出す山崎。
2人はプリクラを取るために新宿駅南口で待ち合わせをすることになる…。

個人的にはとても難しくて、残酷な結末の本だな、と思いました。一度巡りあった人とは二度と別れられない。時として、バイカル湖のように、心の深いところから記憶が湧いてくることがある。それが懐かしい記憶であったり、心の支えだったりすることもある。場合によっては、パイロットフィッシュのように誰かが環境を支えてくれていたことに気づくこともある。
でも、時として誰かが作り出した生態系から逃げ出せず苦しむこともある。由希子のように。
人は巡りあった人と二度と別れることはできない。そう尻尾とちぎれた犬が尻尾を追いかけるように、いつまでも同じところを回り続けているのかもしれない。
どうしても、人は同じ過ちをしたり、過去の辛い記憶や人間関係から抜け出せないことがある。
そのことをこの小説は想起させます。

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2025年03月30日

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自分にとって手放しで褒めれる1冊。一度出会った人とは二度と別れることは出来ない という言葉、人は人に影響を与え、影響を与えられ続けていく言わば相互補完的な役割で構成されているということを気付かされる一節やった。
他にも、飲食店でやっていくにはタダで出す水こそ大事 みたいな言葉が本質を突いているなと思った。
煙草酒女音楽の盛り合わせでたしかに一昔前の村上春樹みたいやった

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2025年03月02日

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村上春樹さんの『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を読み終えて、村上春樹さ?に似た作風の別の作者の小説を読んでみようと思い、見つけたのが本書でした。
私は村上春樹作品とは大分別のものだなと思いましたが、出会いと別れを繰り返す人生のやり切れなさやそこに灯る微かな光明のようなものが物凄く丁寧に描かれていると感じました。
読み終わった後には寂しい気持ちと優しい気持ちが同時に湧いてくるような、不思議な感覚になりました。

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2024年09月23日

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素晴らしい。

愛読書にしたい。
何度も読み返したい。

アジアンタムブルーも読破したので、エンプティスター、いきます。

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2023年12月19日

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なんとなくタイトルとジャケットに惹かれて手にした初読みの作家さんでしたが、全体が村上春樹作品に似ている感じで、それをライトにした印象というか雰囲気でした。ライトだから読んでいてもしんどくない。そして読んだあとの感覚も程よくいい。
なんか、とてもよかった。

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2023年06月02日

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最近読んだ中で一番のヒット。ストーリーは、主人公がエロ雑誌の編集者という時点でアダルトな部分も多いが、表現や話の進み方や、登場人物の発する言葉など、とても自分の好みだった。他の作品も読みたい。

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2023年03月01日

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面白いです。
ボリュームも多くなく、ちょうどいい構成
ありきたりな物語でもなく読めば読むほど展開が気になる

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2025年09月14日

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現代日本の作家である大崎善生(1957-2024)による作品。2001年。本書を読み終えてから、作者がすでに他界していることを知った。



いまの自分というのは、これまでに出会ってきたいろんな人たちや文物たちや体験たちといった諸々からなるモザイク画のようなものではないか。自分の中にいろんな誰かたちが生きているだけではなくて、自分もいろんな誰かたちの中に生きていて、そうやって自分と誰かたちとは互いに浸透しあっている。「一度出会った人間は二度と別れることはできない」というのは、なるほどそうだと思う。

それは必ずしも思い出だとか記憶だとかということではない。忘れてしまったからといって、すでに深く浸透してしまっている誰かたちが自分の中から消えてしまうことはないだろう。誰かたちの影は突然ヌッと出現するのである。それが元は誰かのものであったということを忘れてしまっていることはあるかもしれないが。例えば何かの拍子に、誰かの言葉が突然思い浮かぶかもしれない、それが元は誰かたちの言葉であると思い出すことのないまま。例えば何かの拍子に、誰かの口癖が突然口を突いて出てくるかもしれない、それが元は誰かたちの口癖であると思い出すことのないまま。例えば何かの拍子に、誰かの趣味が突然自分の好みになって現れてくるかもしれない、それが元は誰かたちの趣味であると思い出すことのないまま。例えば何かの拍子に、誰かの思想や選択や決断が突然自分の生き方として選び取られるかもしれない、それが元は誰かたちの思想や選択や決断であると思い出すことのないまま。

言葉だとか感情だとかいうものは、実は自分のオリジナルであるなどと言えるようなものではなくて、どこまで行っても伝聞的なものでしかないのかもしれない。誰かの言葉、誰かの感情、というように、もはや人称代名詞でもって限定することができない、いわば不定人称的な言葉であり感情であり、しかもその不定人称が、実はいつかのどこかにおける自分の痕跡でないとは言い切れない。いつかどこかの自分が、誰かたちを経由して、また出会い直されたのかもしれないではないか。時間によって雑多な諸々の重なり合いがいっそう混淆されて、もはや何が誰のものであったか遡行することも無意味になり、ついに人称が抹消されていくのかもしれない。

しかしそれは、自分が自分の外部にある何かに支配されてしまっているというのとも違う。その何かには、すでにその何かに浸透してしまっている自分も含まれているかもしれないから。自分と自分の外部との対立、という構図が、たぶん違うのだと思う。

時間を生きるということは、自分がそうした雑多な諸々による細密なモザイク画になっていくことであり、そこには生きられた時間が跡づけられている。



これは、以前読んだ平野啓一郎の分人主義の考え方と通じるところがあるように思う。

自分というのは、一見すると何か純粋な唯一無二のもののようでいて、その実は、こういった、それ自体ですでに雑多な諸々同士の、さらなる重なり合いのことではないかと思われてくる。にもかかわらず、本当はそんな雑多な諸々の重なり合いであるはずのものが、妙に凝り固まって、何を勘違いしたのか純粋という観念を遡及的に作り上げて、アイデンティティなどと名乗り始めるあたりから、話がややこしくなるのではないだろうか。



どんなに深い絶望であっても、それが言葉だとか音だとか色だとか運動だとかによって再現前されると、ともかくもそうやって再現前されたという事実だけによってすでに、幾分か救われる思いになる。おそらくそれは、そうやって名前が与えられて、その名前によって他の誰かに呼ばれる可能性に開かれたからであり、それによって、なるほど依然として絶望には違いないが、少なくとも絶対の孤立ではなくなったからであろう。ここに、友や文学の存在理由があるのではないか。

そしてその友的なるもの、文学的なるものは、自分を構成する無数のモザイク、誰かたちの言葉として、すでに自分の中にいてくれているのではないか、という気がする。自分の中にいる他者たちが、孤立した自分をどこかへと開かせてくれている、という気がする。



「年月とともに失っていくものがあるのと同時に、それとともに生まれてくる感覚だってあるのではないだろうか。」(p245)

「自分を信じろ、そして由希子と子供をつくれ」(p126)

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2025年08月22日

Posted by ブクログ

10年以上ぶりに再読、あらためて良かった。
たんたんとしているようでロマンチックというか物語的な言葉を持っている主人公に惹かれる。
言葉って美しいなと感じる、
水や、静けさ、明るさや、記憶、色んなものを浮かび上がらせる流暢なことばにストーリーとは別で癒される。
ストーリーは少し寂しさもあり、少し希望もあり、優しく、現実的。
友達に貸そうと思う。

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2025年05月08日

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出版勤める主人公山崎はある夜19年前に別れた由希子から電話を受け、翌週再開することを約束する。19年前のこと、その後の19年のこと、様々な人との出会いと別れを経て、さらに何者かであろうとする、そんな山崎の思い巡らす様子を丁寧な文章で語った秀作と思います。
星4つです。

#美文

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2024年12月04日

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山崎はいつも、過去を思い出している。
パイロットフィッシュは循環する水の中で、新しい生態系を作る。

過去を思い出し、過去の中で生き、要らないものを捨てていくのではなく、すべてを蓄積していく。
もう思い出すこともなくなった過去でさえも、ため込んで、山崎という人間が出来ている。
そこから逃げ出すことはできない。
逃げ出す時は、死ぬ時だ。
新しい生態系を作り終えて、不要になったパイロットフィッシュが捨てられるように。

目に見えない糸で織られているかのように、すべての事象が繋がっているのかもしれない。
不要だった過去は一つもない。
だから人間は生き、傷付きながらセックスをするのだろうか。

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2024年11月01日

Posted by ブクログ

学生の時に読んだ本です。もうストーリーはあまり覚えていないけど、今思えば小説にハマるきっかけを与えてくれた本な気がします。切なくて綺麗という印象が残っています。

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2024年10月06日

Posted by ブクログ

面白かったーー!色んな人がいる、色んな人生がある、それは全部続いていてる。そういうことが、静かにしなやかに書かれていて、内容は結構ざわざわしてもおかしくないのに、とても落ち着いた感じになる。雨の日に家で雨音を聞きながら読みたいようなそんな話やった。

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2024年09月04日

Posted by ブクログ

自分にとってはちょっと表現がロマンチックすぎる1冊だったけど、それも良かった。細かい伏線回収が多いので短期間で読み切るのがお勧めです。

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2024年06月24日

Posted by ブクログ

「一度出会った人間は二度と別れることはできない」
当たり前だけど考えてみると深い言葉。
ストーリー然り、透明感のある雰囲気然り、村上春樹の“ノルウェイの森”を思い起こさせた。

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2023年06月11日

Posted by ブクログ

キレイすぎる、という感想を持つ人もいらっしゃるかもしれないけど私は好きな作品です。

主人公の山崎のところにかかってきた、19年前に別れた由希子からの一本の電話。
学生時代、二人が出会い、別れるまでの過去と、別れた後からこれまでの山崎の生活、そして由希子との再開が、交互に書かれていますが、非常に読みやすい構成です。
所々、うまく理由を説明できない涙が流れました。
レビューが難しい作品。

時間の経過、時間の積み重ねは記憶の集合体であり、それが人を形成している。
記憶は忘れることはあっても完全に消滅することはなく、だから出会った人と別れることは、決してない。
この考えを、或いはきれい事だと感じる人もいるかもしれませんが私は救われた思いでした。

この考えは、捉えようによっては自分を傷付けることもあると分かっていても尚。

人の心の弱さと優しさ、誠実で正しくあることの難しさ、意図せずに人を傷付けてしまうこと、悲しくないのに、不意に涙が出ること優しいけれど、優しい故に痛々しくて、自分や他人を傷付ける感情 …それらが巧みに描かれていて、胸がきゅっとなりました。

水槽の中の、整えられた空間の美しさ と 曖昧であやふやな世界の対比の描写も好きでした。

ふわふわとした、もしくは他愛のない状況や感覚を描写する表現力とその方法、文体が非常に好み。
読み終わった後は決して爽やかではありません。
むしろちょっと、疲労感を覚えるほど。
けれど、しっとりとした強さみたいなものが、じわりじわりと心に生まれてくる作品でした。

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2022年10月12日

Posted by ブクログ

ストーリーとしてはよく出来ているし、描写もスマートでセンスの良さを感じる。
単純な恋愛話ではなく、登場人物の幾層にも重なる複雑な心情も、読み手に複数の解釈を仮想させながら物語が進行する。
ただ、主人公の男が優柔不断でじれったい。まあ、この主人公がいろんな局面でズバズバと決断できるタイプだったらこの物語自体が成立しなくなるけど…
不思議な切なさと、大人の諦観が心に残る作品だった。

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2023年10月29日

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出てくる音楽とかが自分の趣味だった
人は一度出会ったら別れることができない
記憶の中を錯綜する不思議な感覚のストーリー

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2022年01月30日

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忘れられない恋愛、忘れられない人を持つ人には「お守り」になるような1冊。
物語の空気感は村上春樹に似ています。

「感性の集合体だったはずの自分がいつからか記憶の集合体になってしまっている」
「今、自分にある感性も実は過去の感性の記憶の集合ではないかと思って、恐ろしくなることがある」
「記憶は自分自身の一部だし、俺たちは否応なしに記憶とともに生きているから」

「人は、一度巡り合った人と二度と別れることはできない。なぜなら人間には記憶という能力があり、そして否が応にも記憶とともに現在を生きているからである。」

過去に愛した人も含めて自己を形成しているからこそ、その比重が大きければ大きいほど「忘れられない」、というよりは「忘れたくない」記憶になるのではないか。
今の自分を形成しているのも、あの人との恋愛があってこそなのだなと、読みながら自分の気持ちに整理をつけられた。

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2021年10月17日

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ネタバレ

まず、鈴木成一さんの装丁がとてもきれいで目がひかれる本。

主人公の山崎はエロ雑誌の編集者。
ある夜中、19年ぶりに大学生の時の恋人・由希子からの電話が鳴る。

「出会い」と「別れ」が人生において、いかに交錯しているかが描かれている。
そして、「出会い」にも「別れ」にも意味があるのだということを教えてくれる。
もっと読み終わったら落ち込んだりするかと想像していたので、妙に心がじんときてしまい、びっくり。
多少、自分の中で「えっ、あのひとはどうなったの、結局」と未消化といえば、未消化なところもあるけれど、それはそれで良しなのかなと・・・。
何か、目頭熱くなった。

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2024年08月05日

Posted by ブクログ

帯にもありますが『人は一度巡りあった人と二度と別れることはできない』というお話です。19年前、大学に失望した山崎は由希子と出会い、恋に落ちた。しかし彼らはその後、別れることなり、また再び再会する。彼は「別れても、その人やモノとの思い出、記憶がある限り、いつでも会える」という境地に達します。「読んでよかった〜」と思える一冊です。

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2023年07月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

森本
札幌の高校時代からの山崎の友人。東京の同じ大学に進学。大手のカメラメーカーの営業マンになった。有能な社員として日本全国を転勤して営業マンになった。一九九八年の夏頃から様子がおかしくなる。朝であろうと真夜中であろうと、いつも泥酔している。ある日警察官と大立ち回りを演じ、そのまま精神病院に運ばれてそのまま入院した。重度のアルコール依存症。

山崎隆二
四十一歳。由希子が電話帳で上から順番に片っ端らから電話して空席を見つけた文人出版に就職した。アダルト雑誌『月刊エレクト』の編集長。ロングコートチワワのクーとモモを飼っている。沢井の死後、編集長になる。

川上由希子
四十一歳。山崎が大学時代に三年間付き合ったかつての恋人。二人の子供がいる。上は小学三年生よ健太、下は五歳の綾子。

沢井速雄
隆二が入社した当時の文人出版専務取締役編集長。現在は肺癌で入院中。

五十嵐
四十六歳。文人出版の編集者。編集者のくせに本はろくに読まない、漢字を知らないので校正はしない、昼過ぎに編集部に来て大いびきをかいて寝てばかりでほとんど仕事らしい仕事をしないが、読者が求めるエロ写真を選別できる特技があり、「勃起羅針盤」と呼ばれる。長年連れ添った妻と子供に逃げられた。

野口早苗
文人出版が出している『月刊エレクト』のデザイン担当。

浅川七海
隆二の十九歳年下の恋人。西荻窪のコンビニでアルバイトをしていて、週に二度は夜通し働き、その後隆二の部屋を訪ねてくる。可奈の友人。

伊都子
由希子の親友。友達の彼氏と寝る癖がある。

トム
隆二が小学校のころから飼っていた雑種の犬。

大沼
『月刊エレクト』のベテラン校正マン。

洋子
沢井の娘。

渡辺
隆二が大学生時代にバイトをしていた新宿のロック喫茶のマスター。大学生だった隆二と由希子を週に二度、新宿御苑の傍に建つマンションに招いていた。妻の聡子、冬花、秋菜、生まれて半年になる男の子。大韓航空機撃墜事件で亡くなる。

高木正也
風俗ライター。隆二が『月刊エレクト』をゼロから再構築に立ち上げた企画“新宿風俗嬢ストーリー”の立役者。

可奈
歌舞伎町で一番人気だった風俗嬢。「新宿風俗嬢ストーリー」の最終回を飾った。その号が発売さらてから、可奈の名声が沸騰した。客が殺到し、体を張って全ての客の望みにこたえようとしだ。深夜テレビにも引っ張り出されるようになり、画面に映る可奈の瞳は正気を失い体は見る影もなく痩せ細った。精神的に参ってしまい、隆二の部屋で一ヶ月ほど住む。クーとモモとアジアンタムの鉢植えを残して姿を消す。

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2025年09月30日

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リアルで自分の身に起きたら大きく心が揺れるであろう出来事が淡々と描かれているところに怖さを感じた。
ゆらゆらとした不思議な感覚になる作品。

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2025年08月22日

Posted by ブクログ

なんだか読んでいて寂しい気分になるのは、自分の精神状態が原因しているのか、どうかは分からない。

つまらなくはない。
二重否定。

なんだろうか。悲劇でもないし、暗い作品でもないだろうけど、自分には重かった。

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2025年04月06日

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ネタバレ

アジアンタムブルーを先に読んでしまっていた!
文章がやはりきれい。
今回でてくる由希子より、アジアンタムブルーの葉子に惹かれるなあ。

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2024年09月06日

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パイロットフィッシュというテーマがすごく面白いなと思いました。このテーマはいろんな人間の生き方に当てはめることができるので、いろんな物語に派生できる可能性があるなと感じました。

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2024年02月09日

Posted by ブクログ


前々から表紙の透明感とタイトルのバランスの良さが本屋でも目に入って読んでみたかった作品です。

物語の冒頭の一行
「人は、一度巡りあった人と二度と別れることはできない」

一度人の中に染み付いた「記憶」は奥底に隠れていようとも決して消えることはなく一緒に行き続けるんだってこと。
無意識のまま昔愛した人のために生きていることもあるんだってこと。
この広い世界の中で人と巡り会うことの大切さがとてもわかりやすく伝わってくる作品でした。

文体は何だかゆらゆら浮いている感じ。
そうですね、現実感があまりなく、感情移入できなかったかなぁ。
ここに出てくるような物分りのいい大人で素敵な女性になれたら素敵だけどまず無理よね・・・って、村上春樹の作品に出てくる女性をちょっと思い浮かべました。

重いようでいて、とてもさらりと読めます。
何かがちょっと物足りない。
でも、全体的には透明な表紙のままの雰囲気の作品でした。

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2022年08月04日

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