大崎善生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
読書の秋ってことで積読してきた本を読んでいて、その中の一冊がパイロットフィッシュでした。
何でずっと読まずにいたんだろうと思うくらいとてもいい本でした。章ごとによって話の展開が異なるので少し頭を整理しながら読む必要はありましたが、内容も非現実的なお話ではないので、感情を重ねながら読むことができます。私の性格的に、感情移入をしがちなのですが、この本は特にそうでたくさんの登場人物に感情移入をしてしまいました。次は?次は?とどんどん内容が気になります。一つの章もそんなに長くないのでサクッと読めますが、読んだ後の余韻はしっかり重いです。
記憶を消してもう一度読みたいと思えるような本です。 -
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癌闘病の中で書かれた作品
幼い妹との思い出
いつも2歳違いの兄の後をついて
同じことをやりたがった元気な子
不治の病で入院し
兄と同じ中学校に行きたいと
泣いた妹の為に医師である父親に
抵抗しついに通えるようになる
その間兄は毎日車椅子の妹に付き合う
再入院した時も毎日見舞いに行く
何だか切ない
姉からプレゼントされたビートルズ
妹にも聞かせて
彼女もファンになり
習いたての英語で訳詞を試みる
作家となり
イギリスの取材旅行を終え思い立って
リバプールへ向かう
セントピーターズ教会で思いがけない
エリナ・リグビーの墓を見つける
札幌で育った著者の感性が育まれた
風景が絡んで
過去を思い -
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プロローグ
盤上には、初手とは思えぬ重苦しい空気が漂っていた
相手の顔を一瞥し、ゆっくりと右手を駒へと伸ばす
その一手に、数十通りの読みが詰まっている
指先が駒に触れた瞬間、部屋の空気が微かに揺れた気がした
本章
『聖の青春』生命賛美の★5
皆様は、ご存知だろうか?
あの天才、羽生善治の裏にもう1人の天才がいたことを、、、
プロデビュー当時、東の天才、羽生善治に対し
西の怪童、稀代の棋士、村山聖という漢がいた!
彼は、5歳の時、腎ネフローゼを発症し、29歳という短い生涯を全うするまでその病と晩年に発症した癌そして、将棋と闘った
病を抱えながら、14歳で故郷広島を離れ、師匠森信雄がいる -
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第2回広島本大賞
第13回新潮学芸賞
素晴らしい棋士がいたのですね。
命懸けで将棋に向き合い、真っ直ぐで、頑固者で、でも憎めないキャラクターの村山聖さん。
多くの人から愛されて支えられていたことに胸が熱くなりました。
特に師匠の森さんが献身的に世話をしていたことには驚きましたし、村山さんを大切に思っている様子がよく伝わってきました。
子供時代の入院生活の辛さは計り知れませんが、病気だったからこそ、将棋だけを追求する時間をとことん過ごせたことで才能を伸ばせた一面はきっとあると思います。
子供の強みを伸ばす子育ては理想だけど、現実的には好きなことだけをやらせているわけにはいきません。だけど、 -
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いつこの本を読んだんだっけな。20代の、一人暮らしの部屋、そして大学の近くのカフェ。記憶があいまいで、記憶のそこに手を伸ばすように、インターネットで検索した。なんとかフィッシュ、、タイトルが出てこない。そして、大崎善生の本作品を探し当てて、読んだ。なぜか、この本が記憶に残り、そして今なんとなく読むべきだと思った。本とは本当に不思議なものだ。
読み始めてすぐ、この本の本質、つまり出だしにびっくりした。体の中に記憶を沈めておく湖のようなものがあり、時としてその記憶に手を伸ばし、こぼれ落ちてしまう。まるで水をすくっているような感覚で記憶をとらえて、その記憶は決して戻らないこともある。本作は、こうした -
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ネタバレパイロットフィッシュ
「人は一度巡り合った人と二度と別れることはできない。なぜなら人気には記憶という能力があり、そして否が応にも記憶と共に現在を生きているからである」という文書から、この本は始まります。
アダルト雑誌の編集者をしている主人公山崎のもとに、真夜中に電話がかかってくる。声だけで誰かを理解する主人公。それは大学時代の彼女である由希子だった。
由希子は、かつて山崎が就職で苦労していた頃に、編集者として勤める文人出版を探してきた女性であった。また、大学に馴染めず、アパートの一室で沈んでいた山崎を救い出した女性でもあった。
電話の話の中でパイロットフィッシュの話を由希子にする山崎。パイ