大崎善生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
無償の愛とはこの事なのか・・・
読み終えた瞬間、何かが心に住み着いている。
薄い愛でも深い愛でも厚い愛でも無い。 愛以上のもの・・・ 今の自分では言葉がない。 想いだけである。
人を想う気持ちと行動をどのようにつなげてゆくのか、言い現しようの無い気持ちである。
想いが、言えないからこそ小説で表現できるのか。
風景、色、匂いが、心に写っている。
自分に問いかける小説である。
ぜひ読んでもらいたい。
《本文より》
由香はどこへいってしまったのだろう。あの空のどこを捜しても、もう二度と見つけることはできないのだ。
「良ちゃん」
大空の彼方から声が聞こえたような気がした。
「頑張れ」 -
Posted by ブクログ
大崎善生を読むと小説の醍醐味は中身の内容だけではないことに気づかされる。
このロックンロールというなんの中身の無い小説が面白く感じるのは、1行1行の文章がとても緻密で、計算されていて、繊細で、優しくて、突き刺さるような言葉の集合体だから。
この小説の中でも語られていたが、
「なんでもいいからひとつのことを、正確で美しい、ということはつまり適切な言葉を使って表現する。その枝葉の積み重ねの先にある樹が小説なんだ。」「犬の交尾を正確に描いていても泣くね。」
とある。1つのことを洗練させる必要性。小説家でないがしろにしてはいけない要素。人にとっても何かを1つ正確に出来る人の方が、心を揺さぶるのだ -
Posted by ブクログ
スワンソング、それは白鳥が死の間際に発するおそろしく美しい声のこと――。
救いのない内容に、涙なしには読めなかった。
自分の過去と重なってしまって、途中、苦しくて、苦しくてしょうがなかった。
普通に恋愛ができないなんて。
普通に恋愛を終わらせることができないなんて。
そう思いつつ、自分だってそうだったじゃん、と自嘲的な気持ちに。
「暗闇にいる由香に手を差し伸べることはもうできない、由香が一人で抜け出すしかない」
というくだりがあったけれど、これは絶対に違うと思った。
良がしなければいけなかったことは、由香に対して誠実に向き合うことだったと思う。
それをしないで逃げていながら、よくも