大崎善生のレビュー一覧
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甥っ子がなんとか本を読んでくれないかと思い、チェックの意味を込めて読みました。
原作はかなり前に読んだことがあり、感動しました。それのジュニア版ということですが、文章の作り自体は変わってないと思います。ただ、村山が「女を抱きたい」と言った部分や、酒や麻雀についての一部分がカットされています。たぶん。
全編にルビがふってあり、ジブリ風の挿絵もあり(ちなみに村山も、その師である森も似ても似つかぬ絵ではあります)、子どもでもおもしろく読むことはできると思います。また、村山聖自身の独特の子どもっぽさも共感しやすいでしょう。
言うまでもなく、最後は村山聖の死によって話も終わるわけで、少なくとも小学校の高学年以降あたりの年を迎えた子が読むのがいいもしれません。 -
Posted by ブクログ
キレイすぎる、という感想を持つ人もいらっしゃるかもしれないけど私は好きな作品です。
主人公の山崎のところにかかってきた、19年前に別れた由希子からの一本の電話。
学生時代、二人が出会い、別れるまでの過去と、別れた後からこれまでの山崎の生活、そして由希子との再開が、交互に書かれていますが、非常に読みやすい構成です。
所々、うまく理由を説明できない涙が流れました。
レビューが難しい作品。
時間の経過、時間の積み重ねは記憶の集合体であり、それが人を形成している。
記憶は忘れることはあっても完全に消滅することはなく、だから出会った人と別れることは、決してない。
この考えを、或いはきれい事だと感じる人もいるかもしれませんが私は救われた思いでした。
この考えは、捉えようによっては自分を傷付けることもあると分かっていても尚。
人の心の弱さと優しさ、誠実で正しくあることの難しさ、意図せずに人を傷付けてしまうこと、悲しくないのに、不意に涙が出ること優しいけれど、優しい故に痛々しくて、自分や他人を傷付ける感情 …それらが巧みに描かれていて、胸がきゅっとなりました。
水槽の中の、整えられた空間の美しさ と 曖昧であやふやな世界の対比の描写も好きでした。
ふわふわとした、もしくは他愛のない状況や感覚を描写する表現力とその方法、文体が非常に好み。
読み終わった後は決して爽やかではありません。
むしろちょっと、疲労感を覚えるほど。
けれど、しっとりとした強さみたいなものが、じわりじわりと心に生まれてくる作品でした。 -
Posted by ブクログ
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重い腎臓病を抱えつつ将棋界に入門、名人を目指し最高峰リーグ「A級」で奮闘のさなか生涯を終えた天才棋士、村山聖。名人への夢に手をかけ、果たせず倒れた“怪童”の生涯を描く。第13回新潮学芸賞受賞。
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大崎善生が描くノンフィクション。
嗚咽するほど泣いた。
限られた時間の中で、目標を目指すこと。壮絶なまでのストイックさ。将棋に対してだけでなく、遊び、病気、人生そのものに真っ直ぐに向き合う姿が眩しい。少しくらい苦しみから逃げたってバチは当たらないのに、とも思う。
「その薬は名人への翼をも溶かしてしまう」
頑固で不器用な真っ直ぐさ。
森師匠をはじめ、周りの人々がとても素敵。たくさんの人達に愛されていたんだなと思う。愛想はよくなく、その振る舞いはわがままにさえ見えるが、何か周りを惹き付ける魅力がある人だったんだと思う。かわいくて、面白くて、純粋。
最後、両親にあれが食べたいこれが食べたいとわがままを言う聖の姿がグッとくる。愛される天才だな。 -
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「八月の傾斜」
「だらだらとこの坂道を下っていこう」
「孤独か、それに等しいもの」
「シンパシー」
「ソウルケージ」
の5つが収録された短編集。
順番が先にあるほど面白かった。
つまり、「八月の傾斜」が一番良かった。
「4」という評価は、ほぼこの作品のものだ。
ただ、その前に「だらだらとこの坂道を下っていこう」の感想を。
タイトルがほぼすべてを語っている作品だったが、他の4つの作品と比べてとても柔らかい雰囲気を持っていてよかった。
「僕が感じている違和感は(中略)周りの風景自体が変わりはじめていることに原因がある」という言葉は、人間関係に深く悩んでいないと出ない言葉だと思った。
こういうときは、周りに振り回されずに自分たちのペースを保つことが重要なのだろう。
続いて、「八月の傾斜」。
ピアスの穴をあけると「大切な何かをなくしてしまう」というのは、私には感覚的にではあるがよくわかることだった。
私の友人たちがピアスをあけると、なんとなく違和感を感じたものだ。
「親にもらった体を…」とかそういうこともあるが、それだけでなくピアスをあけることでその人の何かが変わってしまうような気がしていた。
こういう話を20代そこそこの同じ世代の人に話すと、煙たがられる。
私が堅いだけなんだろうかと思っていたところに、良き理解者と共感できる人を得られた気分だ。
実際に、登場人物が私と全く同じことを感じているのかははっきりとわからないが、読み進めると私と同じものを大切にしていることはわかった。
もう一つ、気になった言葉があるが、多少ネタバレになるかもしれないので以下ご注意を。
「二度と取り戻すことのできない記憶の堆積物に、私は勝手に大久保君という名前をつけて呼んでいるだけなのかもしれない」というものだ。
いい思い出、悪い思い出が、一緒にいた人の印象や記憶に結びつくということはよくある。
大切な人を失うとその人だけでなく、思い出までもごっそりなくなるような気さえするし、嫌な人がいるとその人と関わっていた時間すべてが嫌な思い出になったりする。
「私」にとって大久保君はそれだけ大切だったということだが、「私」はそれを忘れようとする。
大切だから、忘れようとし、でもその方法は大切だった人が言っていたもの。
その複雑さというか、どこかまだ大切だった人に囚われている感じがとても人間らしい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこんな風に純粋に思い出に浸り、人を愛せることの幸せ。そんな風に愛した人を失ってからの空虚な日々。これ以上巻けないねじを巻き上げなければならない苦悩…それでも、前を向いて生きていかなくては、と感じる主人公の苦しみの隙間に、心が少しずつ溶かされていくようでした。言葉や表現が、優しさに溢れていて、じん…っと染み渡る。。
以下、メモ。
・アジアンタム・ミクロソリウム
・概念には定義というものが必要で、そしてその定義は要するに自分が気に入ったり、ある程度納得できればなんでもいいんだということが分かりました。
・キース・ジャレット
フェイシングユー
・言葉が氾濫している
・アジアンタムブルーを乗り越えた株だけが冬を超え、活きいきと生きていく。そうなればこっちのもので、その後は二度と、アジアンタムブルーは訪れない。
・どんなにきつく体を重ね合わせても、埋めることができない隙間。その隙間に思いを馳せることが愛するということなのかもしれない。
・エルトンジョン ユアソング
・シャルルドゴール空港 野ウサギ
・ニース