大崎善生のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
キレイすぎる、という感想を持つ人もいらっしゃるかもしれないけど私は好きな作品です。
主人公の山崎のところにかかってきた、19年前に別れた由希子からの一本の電話。
学生時代、二人が出会い、別れるまでの過去と、別れた後からこれまでの山崎の生活、そして由希子との再開が、交互に書かれていますが、非常に読みやすい構成です。
所々、うまく理由を説明できない涙が流れました。
レビューが難しい作品。
時間の経過、時間の積み重ねは記憶の集合体であり、それが人を形成している。
記憶は忘れることはあっても完全に消滅することはなく、だから出会った人と別れることは、決してない。
この考えを、或いはきれい事だと感じる -
Posted by ブクログ
忘れられない恋愛、忘れられない人を持つ人には「お守り」になるような1冊。
物語の空気感は村上春樹に似ています。
「感性の集合体だったはずの自分がいつからか記憶の集合体になってしまっている」
「今、自分にある感性も実は過去の感性の記憶の集合ではないかと思って、恐ろしくなることがある」
「記憶は自分自身の一部だし、俺たちは否応なしに記憶とともに生きているから」
「人は、一度巡り合った人と二度と別れることはできない。なぜなら人間には記憶という能力があり、そして否が応にも記憶とともに現在を生きているからである。」
過去に愛した人も含めて自己を形成しているからこそ、その比重が大きければ大きいほど「 -
Posted by ブクログ
--------------------
重い腎臓病を抱えつつ将棋界に入門、名人を目指し最高峰リーグ「A級」で奮闘のさなか生涯を終えた天才棋士、村山聖。名人への夢に手をかけ、果たせず倒れた“怪童”の生涯を描く。第13回新潮学芸賞受賞。
--------------------
大崎善生が描くノンフィクション。
嗚咽するほど泣いた。
限られた時間の中で、目標を目指すこと。壮絶なまでのストイックさ。将棋に対してだけでなく、遊び、病気、人生そのものに真っ直ぐに向き合う姿が眩しい。少しくらい苦しみから逃げたってバチは当たらないのに、とも思う。
「その薬は名人への翼をも溶かしてしまう」
頑固で不器 -
Posted by ブクログ
「八月の傾斜」
「だらだらとこの坂道を下っていこう」
「孤独か、それに等しいもの」
「シンパシー」
「ソウルケージ」
の5つが収録された短編集。
順番が先にあるほど面白かった。
つまり、「八月の傾斜」が一番良かった。
「4」という評価は、ほぼこの作品のものだ。
ただ、その前に「だらだらとこの坂道を下っていこう」の感想を。
タイトルがほぼすべてを語っている作品だったが、他の4つの作品と比べてとても柔らかい雰囲気を持っていてよかった。
「僕が感じている違和感は(中略)周りの風景自体が変わりはじめていることに原因がある」という言葉は、人間関係に深く悩んでいないと出ない言葉だと思った。
こういうと -
Posted by ブクログ
ネタバレこんな風に純粋に思い出に浸り、人を愛せることの幸せ。そんな風に愛した人を失ってからの空虚な日々。これ以上巻けないねじを巻き上げなければならない苦悩…それでも、前を向いて生きていかなくては、と感じる主人公の苦しみの隙間に、心が少しずつ溶かされていくようでした。言葉や表現が、優しさに溢れていて、じん…っと染み渡る。。
以下、メモ。
・アジアンタム・ミクロソリウム
・概念には定義というものが必要で、そしてその定義は要するに自分が気に入ったり、ある程度納得できればなんでもいいんだということが分かりました。
・キース・ジャレット
フェイシングユー
・言葉が氾濫している
・アジアンタムブルーを乗り越えた