あらすじ
憂鬱にとらえられ、傷つき、かじかんでしまった女性の心を繊細に映しだし、灰色の日常に柔らかな光をそそぎこむ奇跡の小説、全五篇。豊平川の水面に映る真っ青な空。堤防を吹き抜けるつめたい風。高校三年の九月のある日、ピアスの穴を開けようとする私に向かって、かつての恋人は言ったのだ。「大切なものを失くしてしまうよ」と。
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2020年2月2日日経朝刊 文化欄に大崎さんが書いていて、中学生の受験問題に取り上げらる件から息子さんとの会話がある。作者本人にここで何を示唆しているのかという問いに、本人に聞いてみたいよと、回答にバツがついて…国語の授業が楽しみになるといいだが。著者の生き様に感化され、作品に浸る
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大崎さんの短編集。
この人が書きたい方法・ものごとが少し分かった気がする。
そして、それが好きだと思う。
多分、何度か読み返すだろう本です。
なぜだか勝手に、この人は男性を書くと思っていたので、「八月の傾斜」の語り手が女性だと気づいたとき慌てて最初から読み直した。
「ソウルケージ」が凄く良くて、『ラバーソウル』を今すぐに買いに行きたいと思ったくらい。
これだけのページでこんなに沢山のことが起きて、人が傷ついて癒され始めたりする。気温だとか美しい景色だとか、そういうのと同じくらい痛みとか不快さだとかが迫ってくる。
ドラマティックが過ぎると普段なら思うかもしれないけど、今わたしが読みたかったのはこういう本でした。
不思議なのは、連作でもなんでもないのに、今まで読んだ大崎さんのストーリーが想起されることで、ぜんぶ引っ張られて広がり始めてしまうこと。また次も読みたい人です。
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5作のストーリーが収録されてます。
この著者の作品は、私には余韻が残りすぎて、一話が終わっても次の話になかなか進めなくて困った^^;気持ちをなかなか切り替えることが出来なかった。
どのストーリーも好きだけど、表題作が一番心に残りました。
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「八月の傾斜」
「だらだらとこの坂道を下っていこう」
「孤独か、それに等しいもの」
「シンパシー」
「ソウルケージ」
の5つが収録された短編集。
順番が先にあるほど面白かった。
つまり、「八月の傾斜」が一番良かった。
「4」という評価は、ほぼこの作品のものだ。
ただ、その前に「だらだらとこの坂道を下っていこう」の感想を。
タイトルがほぼすべてを語っている作品だったが、他の4つの作品と比べてとても柔らかい雰囲気を持っていてよかった。
「僕が感じている違和感は(中略)周りの風景自体が変わりはじめていることに原因がある」という言葉は、人間関係に深く悩んでいないと出ない言葉だと思った。
こういうときは、周りに振り回されずに自分たちのペースを保つことが重要なのだろう。
続いて、「八月の傾斜」。
ピアスの穴をあけると「大切な何かをなくしてしまう」というのは、私には感覚的にではあるがよくわかることだった。
私の友人たちがピアスをあけると、なんとなく違和感を感じたものだ。
「親にもらった体を…」とかそういうこともあるが、それだけでなくピアスをあけることでその人の何かが変わってしまうような気がしていた。
こういう話を20代そこそこの同じ世代の人に話すと、煙たがられる。
私が堅いだけなんだろうかと思っていたところに、良き理解者と共感できる人を得られた気分だ。
実際に、登場人物が私と全く同じことを感じているのかははっきりとわからないが、読み進めると私と同じものを大切にしていることはわかった。
もう一つ、気になった言葉があるが、多少ネタバレになるかもしれないので以下ご注意を。
「二度と取り戻すことのできない記憶の堆積物に、私は勝手に大久保君という名前をつけて呼んでいるだけなのかもしれない」というものだ。
いい思い出、悪い思い出が、一緒にいた人の印象や記憶に結びつくということはよくある。
大切な人を失うとその人だけでなく、思い出までもごっそりなくなるような気さえするし、嫌な人がいるとその人と関わっていた時間すべてが嫌な思い出になったりする。
「私」にとって大久保君はそれだけ大切だったということだが、「私」はそれを忘れようとする。
大切だから、忘れようとし、でもその方法は大切だった人が言っていたもの。
その複雑さというか、どこかまだ大切だった人に囚われている感じがとても人間らしい。
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ある意味で、最も大崎さんらしい作品かも知れません。
いずれも透明感が有って、綺麗です。そしてキーワードとも言うべき「純粋さ」に溢れた作品です。短編ゆえに、それらがさらに鮮明に打ち出されている気がします。
大崎ワールド全開。でも一方で、それだけなの?という気もしてしまいました。もう少し幅が欲しいかな。それは贅沢な望みなのでしょうかね。
愚痴っぽくなりましたが、良い作品だと思います。特に大崎さんを読んだことの無い人には入門書としては最適かと。
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【本の内容】
今日一日をかけて、私は何を失ってゆくのだろう―。
高校三年の初秋、ピアスの穴を開けようとする私に、恋人がささやいた一言―大切なものを失くしてしまうよ。
あれから九年を経て、私は決まりきった退屈きわまりない毎日を過ごしていた…(「八月の傾斜」)。
憂鬱にとらえられ、かじかんでしまった女性の心を映しだし、灰色の日常に柔らかな光をそそぎこむ奇跡の小説全五篇。
明日への小さな一歩を後押しする珠玉の作品集。
[ 目次 ]
[ POP ]
今日一日をかけて、私は何を失ってゆくのだろう―。
孤独の先にあるものを指し示し、明日への小さな一歩をあと押しする珠玉作品集。
憂鬱にとらえられ、傷つき、かじかんでしまった女性の心を繊細に映しだし、灰色の日常に柔らかな光をそそぎこむ奇跡の小説、全五篇。
豊平川の水面に映る真っ青な空。
堤防を吹き抜けるつめたい風。
高校三年生の九月のある日、ピアスの穴を開けようとする私に向かって、かつての恋人は言ったのだ。
「大事なものを失してしまうよ」と。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
タイトルを見て、もっとさみしい話なのかなとおもっていた。
何とも言えない幸福感を含む切なさ?どの話も、そんな不思議な読後感がしばらく残った。
シンパシーは違うな。この話はよくわからなくて、だからかしばらく反芻していた。
大崎さんの描く澄んだ空気感がすき。
八月の傾斜/だらだらとこの坂道を下っていこう/孤独か、それに等しいもの/シンパシー/ソウルケージ
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短編集だけど、全て肌触りは同じだ。人の死と、喪失感と、救いの話。
登場人物には生々しさがなくて、特に女性はみんな透明感があって、重苦しい諸々の事柄を綺麗に見せている。
リアリティーは薄れるけれど、それは別に悪いことではなくて、それによって救われたり、浸れたりするような気がする。
ちょっとした喪失感や、ちょっとした孤独を抱えているときに読むと、気持ちにぴったりはまるかも。
完全な喪失は、失ったことすら気付けなくて、それはとても恐ろしくて、でも失ったその穴を埋める新しい何かを獲得できるんだ。っていうところが好きです。
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はじめて大崎善生さんの本を読んだ。
いろいろな"孤独"を表現した短編集。"孤独"の程度が結構激しいものが多く、辛い場面もありましたが、なんだか読後は清涼感が残ります。作者のタッチと、少し前向きな終わり方からくるものかな。
個人的には「だらだらとこの坂道を下っていこう」が好きです。ある意味で一番”現実的”でラストがとってもいい感じ。疲れたときにまた読みたいな。
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日常の中の繊細な心の動きを映し出した短編集。
「孤独か、それに等しいもの」というタイトルに惹かれて購入しました。
とても丁寧に主人公の心が描かれていて、繊細に切り出された切り絵のような印象を受けました。
個人的にはソウルケージが好きでした。
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すごく絶望的なココロの一片を、すごく透明に抽出した短編集。
どうしようもない、逃げ場のない、自力で越えて行くしかないヤマを、
無理矢理に越えさせるわけでもなく、かといってアイロニックに書くでもなく、
非常にすっきりと、明るく、凍みるほど鋭利にまとめてある。
その刹那を「分かる!」と共鳴できてしまうことは、
果たして幸せなのか不幸なのか。
表題作よりも、「八月の傾斜」と「シンパシー」が印象大。
開けたピアスの穴はモルヒネのようなものだったのだろう。
卑近な例を挙げて申し訳ないが、鬼束ちひろの世界観と似ている。
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「孤独か、それに等しいもの」大崎善生
「愛」の小説いろいろ集。透き通った青。
最近人気らしい、大崎善生さんの短編集。
軽い読み口、愛のかたち、裏に潜むシリアスさ。
一番印象に残ったのは『シンパシー』でした。主人公の彼の思うところがとても普通で、それなのに飽きなかった。
何故だか分からないけど・・・。
でもこういう作品を読むといつも思うのは、自分は決して綺麗な小説に全身が吸い込まれる ってことはないんだな、ということ。
あくまで本の中にあるストーリーを、テレビでも見ているような気になって読んでしまう。とても残念です。
もちろん嫌いな訳ではないですよ。でもそうなんだなぁと。(4)
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八月の傾斜。
だらだらとこの坂道を下っていこう。
孤独か、それに等しいもの。
シンパシー。
ソウルケージ。
の五編。
孤独か、それに等しいもの。が一番よかったかな。
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とても暖かい話の短編集。
どんなに深い傷も、いろいろな人に優しさに触れながら、
癒えて、そして成長していくものですね。
素敵な話ばかりでした。
一つ一つの話はどれも、感慨深く、
出来れば、短編でなく長篇で読みたかった。
Posted by ブクログ
恋人の死、双子の妹との分裂、報われない青春、囚われ続ける人たちの決別と新しい一歩を映し出す、優しくてセンチメンタルな短編集。
「八月の傾斜」
この中だとこれが一番好き。
ピアスの穴を開けることによって、大切なものを無くしてしまう。
そういう迷信じみたものを私も信じています。
自分がピアスの穴を開けたときもそういう決定的さがあった。
もう二度と手にすることのできない大久保君との時間。
それをようやく葬ることができた祐子と、彼女をきっと丸ごと抱きしめてあげられるだろう早津のこれからの幸せを願いたい。
「だらだらとこの坂道を下っていこう」
30代も半ばを超えて、自分の人生の山頂にはすでに登りつめてしまったと感じる主人公。
それはいくらか悲しいことかもしれないけれど、大切な人と山頂からの坂道をだらだらと下っていくのは、なんだかとても素敵じゃないかと思えた。
マルセイユの風に訊いてくれ。
「孤独か、それに等しいもの」
双子の姉妹の話。かつては一心同体、自分自身そのものであったような妹との亀裂。そして死。
藍は妹の茜を亡くしたことで、自分のどこかもごっそりと抜け落ちてしまう感覚と、生まれて初めて知覚した孤独に苛まれ続けている。
ヒロシのキャラクターが絶妙だった。
「シンパシー」
読書サークルの合宿で出会った死にかけの子犬と、ある一晩の夢のような出来事。
すべてを報われる、報われないで分けてしまう考え方は私もしてしまうかも。
この短編だけは明確な再生の兆しがなかった。
あの合宿で、僕は、彼女は、報われたのか。それとも報われなかったのか。
その答えをみつけるためというのも、生きることの一つの目的かもしれない。
「ソウルゲージ」
幼いころに母親が愛人と心中してしまい、ただひとり取り残された少女の記憶と現在が交錯するように描かれる話。
自分だけのソウルゲージに何もかもほうり込み、傷だらけの熊を誰にも見せずに飼いならすというのは、どれほどの重圧なのだろう。
彼女の魂の解放がすがすがしかった。この本に収録される話のすべてを救ってくれるような読後感。
北海道旭川のダイヤモンドダスト、私も見てみたい。
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表題作と、ソウルケージがよかった。
美しくて透明感のある、簡素な文章。
旅に行きたくなるような風景描写。気持ちはあがりもさがりもしないので、静かな気持ちになりたい時にいいのかも。
パイロットフィッシュは読んだんだけど、記憶にないなぁ、、
ほんのまくらの1作です
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5篇の短編集
「八月の傾斜」
「孤独か、それに等しいもの」
心に留まりました
八月~ではピアスのエピソードが好きです
大切なものを失くしてしまうよ
という大久保君の言葉が胸に染みました
耳たぶには大切な神経が通っているかららしいです
迷信かもしれないけれどこの考え方いいなぁと思います
主人公は最後にはピアス穴を開けてしまうけれど
孤独か~は双子のおはなし
最後の
茜を一緒にもらってくれないかな?
という言葉にじーんとしました
双子って普通の兄弟や姉妹より結びつきが深いらしいですね
「ソウルケージ」にはすごく共感する部分がありました
自分の感情や観念を放り込んでおくもの
人間誰しも我慢が必要で
自分だけが我慢してるわけじゃないんだと頭では分かっているけれど
どうしても自分中心にしか考えられない部分もあって
そんなときにはソウルケージに自分の思いを放り込んでしまえばいい
私は美緒ほど苦しんでいるわけじゃないと思うけれど
生きていれば誰しもがソウルケージが必要なのかもしれない
5篇すべてが何かしら死が関係していて
誰かの死は自分から何かを奪っていくものとして認識していたけれど
自分に何かを与えてくれるものでもあるかもしれないと思うようになりました
Posted by ブクログ
『優しい子』に続いて読んだ大崎作品。どの話も、死が絡み、まとわりついていて、悲しくて、つらくなった。だけど、大崎さんの他の本も読んでみたくなったのはなぜ。
Posted by ブクログ
結構ハードでした。全編通して死を取り扱ったお話なのですが、感情的なのに淡々と描かれている風で、何とも言えない読後感です。文体もキレイです。場合によっては痛々しい感情に襲われるほど、作品世界に入り込めました。孤独かどうか分りませんが、ちゃんと生きていくのって難しいですね。
Posted by ブクログ
タイトルに惹かれた。
今の自分をストレートに言い表している気がして。
作品のほとんどに「死」を表現している。
人間は「死」に向かって歩んでいることを嫌でも知らされる。
Posted by ブクログ
「八月の傾斜」「だらだらとこの坂道を下っていこう」
「孤独か、それに等しいもの」「シンパシー」「ソウルケージ」
の五編が収められている。
「だらだらと‥」以外の短編に共通するのは、
主人公の身近な人が事故死や自殺・心中等を遂げること。
喪失と回復。
悲惨な現実の中に注がれる一筋の光、つまり「希望」のようなもの。
大崎さんの視線はいつも温かい。
Posted by ブクログ
最初に読んだこの人の作品は、「聖の青春」だったから、
この人はずっと、聖の死によって感じたことを、手を変え品を変え
表現しているのだと、勝手に思い込んで読み始めました。
こうも「喪失感」みたいなものをテーマに、
書き続けるのは、それだけじゃないのかも。
さらにこれが続くのはちときつい。