大崎善生のレビュー一覧

  • 聖の青春
    健康な人が人生を歩む時、自分に残された人生の時間に思いを馳せるのは、どれくらい歳を重ねた頃なんだろうか。
    ただの1日も無駄に出来ない村山聖は、並外れた将棋の才能を、命を使って削り磨き上げながらも、常に死と向かい合っている。
    時には体調を壊すほどに苦悩する将棋は、彼を救ってくれたのか分からないが、将棋...続きを読む
  • 編集者T君の謎
    大崎善生の文章は 妙におもしろいところが
    生み出されている。それは 人を語るのが
    うまいということだろうか。観察力がある。
    棋士に対して、適確なキャッチフレーズをつける名人である。

    村上聖の青春で その筆力が発揮されたように思える。
    このT君の謎は 週刊現代 に連載されたものを
    本にまとめたもので...続きを読む
  • アジアンタムブルー
    愛する人が死を前にした時、いったい何ができるのだろう。
    末期癌に冒された恋人と向かったニースでの日々。
    喪失の悲しさと優しさの限りない力を描き出す、慟哭の恋愛小説。
  • アジアンタムブルー
    前作「パイロットフィッシュ」より前を描いたお話し
    何というか、後出しジャンケン的なものを感じるなぁ
    別に同じ主人公でなくともよかったのではとは思わないでもな
    これ単体だったらもっと評価が高かったかも

    ただ、この話があるからこそパイロットフィッシュにも深みが出るところもあるけどね
    そうか、こんな経験...続きを読む
  • 孤独か、それに等しいもの
    【本の内容】
    今日一日をかけて、私は何を失ってゆくのだろう―。

    高校三年の初秋、ピアスの穴を開けようとする私に、恋人がささやいた一言―大切なものを失くしてしまうよ。

    あれから九年を経て、私は決まりきった退屈きわまりない毎日を過ごしていた…(「八月の傾斜」)。

    憂鬱にとらえられ、かじかんでしまっ...続きを読む
  • アジアンタムブルー
    泣いた・・・ 
    すごくよかった。

    前に「パイロットフィッシュ」を読んだのだけれど登場人物や設定が一緒なので「あれ???」とちょっと戸惑った。

    でもお話は別のよう。

    葉子という女性が最初は名前しか出てこなくて、山崎くんに深い悲しみだけを与えているから ひどい事があったんだろうと思って好感なんて持...続きを読む
  • ユーラシアの双子 上
    大崎さんの作品は色んな知識が得られるので好きです。
    内容云々よりもそんなとこが気に入っています。

    ただ、おっさん二人のやり取りは痛々しいくてイヤです。
    鳥肌立っちゃうので飛ばしました。
  • アジアンタムブルー
    『パイロットフィッシュ』に引き続き・・・山崎と葉子のニースでの最後の日々が切ない。でも、こんなふうに人生の終焉を迎えることができたら・・・。残される方がいつも辛い。それでも人は生きていく。想い出があれば、人は生きていける。まわりの人々の優しさに心打たれる。
  • ユーラシアの双子 上
    通勤時間にゆっくり読んでた作品。
    実際に旅に出る感覚。しかし初めはちょっと乗って見たいと思ったシベリア鉄道、話が進むに連れて絶対乗りたくなくなった(笑)
    でも、バイカル湖は渡ってみたいな。
    澄み渡った湖に沈む25万人。怖いけど。
    ロシアの腐ったピロシキはソチオリンピックでジャンプの葛西選手も食べてや...続きを読む
  • アジアンタムブルー
    恋人の死を受け入れ、前に進もうという過程は、よくある題材かもしれないけれど、水たまりのような透明感に涙が溢れた。
  • 孤独か、それに等しいもの
    タイトルを見て、もっとさみしい話なのかなとおもっていた。
    何とも言えない幸福感を含む切なさ?どの話も、そんな不思議な読後感がしばらく残った。
    シンパシーは違うな。この話はよくわからなくて、だからかしばらく反芻していた。

    大崎さんの描く澄んだ空気感がすき。

    八月の傾斜/だらだらとこの坂道を下ってい...続きを読む
  • スワンソング
    携帯電話がなく、連絡の手段は電話だけ。
    もちろん私の恋愛時代も当然そうだった。
    この時代、電話が鳴ると、心がときめいた。
    ただ、この物語はときめきと恐怖が隣り合わせのベルの音…。
    主人公が昔の彼女と新しい彼女の間に板挟み。そしてはっきり気持ちを伝えないために、彼女たちは心を病んでいく。
    人間の精神な...続きを読む
  • アジアンタムブルー
    水溜りの写真展に飾られた最後の一枚の写真、涙を誘いますね。アジアンタムブルーに象徴される葉子と暮らした日々が、山崎をばらばらにして、前半の憂鬱な日々に繋がってゆく。(あれ?前半の憂鬱な日々の方がアジアンタムブルーなのかな?)最愛の人を亡くしたら、そりゃ誰だって凹みますよ。自分を見失うでしょう。でも生...続きを読む
  • ユーラシアの双子 下
    ユーラシア大陸を横断する話。

    全体的にほの暗いけど
    暗い話は嫌いじゃない。

    シベリア鉄道がそんながっかりとは思わなかったけど
    ドイツやらポルトガルやら良さげな国には行ってみたいな。
  • 編集者T君の謎
    前の2冊が辛すぎるので、この文庫も読んだ。棋士として成功していてもいろいろあるのだ。それはどんな世界でも同じだろうが・・・。
  • スワンソング
     無償の愛とはこの事なのか・・・
    読み終えた瞬間、何かが心に住み着いている。

    薄い愛でも深い愛でも厚い愛でも無い。 愛以上のもの・・・  今の自分では言葉がない。 想いだけである。

    人を想う気持ちと行動をどのようにつなげてゆくのか、言い現しようの無い気持ちである。

    想いが、言えないからこそ小説...続きを読む
  • 孤独か、それに等しいもの
    短編集だけど、全て肌触りは同じだ。人の死と、喪失感と、救いの話。
    登場人物には生々しさがなくて、特に女性はみんな透明感があって、重苦しい諸々の事柄を綺麗に見せている。
    リアリティーは薄れるけれど、それは別に悪いことではなくて、それによって救われたり、浸れたりするような気がする。

    ちょっとした喪失感...続きを読む
  • アジアンタムブルー
    こんなにも泣けちゃうのかっていうくらい
    馬鹿みたいに泣きながら読んだ。

    死んでいく恋人と一緒に過ごす時間のなかの
    主人公の心情が
    痛くて痛くて。
  • 孤独か、それに等しいもの
    切ない。その人との別れは人生に一度しかない。でも、その一度は大きい。明日へ向かってゆっくりと歩きだす、そんな作品。
  • ロックンロール
    大崎善生を読むと小説の醍醐味は中身の内容だけではないことに気づかされる。

    このロックンロールというなんの中身の無い小説が面白く感じるのは、1行1行の文章がとても緻密で、計算されていて、繊細で、優しくて、突き刺さるような言葉の集合体だから。

    この小説の中でも語られていたが、
    「なんでもいいからひと...続きを読む