大崎善生のレビュー一覧
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「孤独か、それに等しいもの」大崎善生
「愛」の小説いろいろ集。透き通った青。
最近人気らしい、大崎善生さんの短編集。
軽い読み口、愛のかたち、裏に潜むシリアスさ。
一番印象に残ったのは『シンパシー』でした。主人公の彼の思うところがとても普通で、それなのに飽きなかった。
何故だか分からないけど・・・。
でもこういう作品を読むといつも思うのは、自分は決して綺麗な小説に全身が吸い込まれる ってことはないんだな、ということ。
あくまで本の中にあるストーリーを、テレビでも見ているような気になって読んでしまう。とても残念です。
もちろん嫌いな訳ではないですよ。でもそうなんだなぁと。(4 -
Posted by ブクログ
出口の見えない長い長いトンネルの中を、小さな希望だけを頼りにして進んでいく。
そんな恋愛小説でした。
普通のハッピーエンドの恋愛ではありません。
たたみかける非情な運命に翻弄されながら、一人の女性を愛するということについて、ただひたすら献身的に尽くす。
僕はここまでできません。ここまで追い込まれた状況になったら投げ出したくなってしまうかもしれません。
ですが、主人公の篠原良は、「愛している」その一心で、彼女のこのマイナスの状況をプラスじゃなくてもいい、どうにかして0の状態にまででも戻してあげたい。
彼女がこれまでの日々を取り戻すことができえるように、なんとか助けてあげたい。
そういった責任 -
Posted by ブクログ
パイロットフィッシュとアジアンタムブルーの主人公が一緒で、スワンソングはヒロインの名前があまりにも似通っていたから、また同じ人の違う人生の話かと空目してしまった。パイロットフィッシュのヒロインは、由希子、スワンソングのヒロインは由布子ね。
そう思うと、そもそも性格が全く反対だ。由希子はしっかりしていて、山崎くんのために就職先まで探してくるような行動派。由布子は、傷から立ち直れなくて不安定になって行く悲劇のヒロイン。
ただ変わらないのは、主人公の男子の優しいけど優柔不断なところ。優柔不断だけど、彼は彼なりに、彼女を必死で支えようとしているところ。
無器用だけど、あったかい。
悲しいけれど、救わ -
Posted by ブクログ
ネタバレまず、鈴木成一さんの装丁がとてもきれいで目がひかれる本。
主人公の山崎はエロ雑誌の編集者。
ある夜中、19年ぶりに大学生の時の恋人・由希子からの電話が鳴る。
「出会い」と「別れ」が人生において、いかに交錯しているかが描かれている。
そして、「出会い」にも「別れ」にも意味があるのだということを教えてくれる。
もっと読み終わったら落ち込んだりするかと想像していたので、妙に心がじんときてしまい、びっくり。
多少、自分の中で「えっ、あのひとはどうなったの、結局」と未消化といえば、未消化なところもあるけれど、それはそれで良しなのかなと・・・。
何か、目頭熱くなった。 -
Posted by ブクログ
最近の作家さんで唯一読み続けているのが大崎善生です。
作品のトーンは毎回似ているんですが、でも、読み出すとしみこむように文章が頭の中に入ってきて、さくさくと読み続けることができます。
この作品の主人公が語った言葉にそのヒントが。
「僕にとっての小説の感動は、ストーリーや感情の起伏というよりも、もっと単純で文章そのものということが多いんだ」
「何でもいいからひとつのことを、正確で美しい、ということはつまり適切な言葉を使って表現する。その枝葉の積み重ねの先にある樹が小説なんだと僕は考えている」
これは主人公の小説家の小説感として描かれていますが、筆者自身の小説感ではないかと思うのです。
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Posted by ブクログ
【再読・2016.4.15】
大崎善生さんの小説は、もののたとえが本当に秀逸だ。
『パイロットフィッシュ』では、まるで命の息吹がしないかのような静かで透明な水槽になぞらえた主人公の暮らし。静かで透明な水槽は、いつまでも動かずにそこにあり続ける記憶を表しているみたいな気がする。
そちらが静なら『アジアンタムブルー』は動で、ちりちりと葉が丸まって枯れるまで精一杯生ききるアジアンタムの生命力と儚さが病気で命を削られていく恋人に重ねられている。主人公の感情の動きが生々しい。
主人公の思春期と現在とを行ったり来たりしながら進み、恋人を失うまでが描かれる。王道のストーリーとも言えるのだけど、恋愛小説の甘さ