大崎善生のレビュー一覧
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恋人の死、双子の妹との分裂、報われない青春、囚われ続ける人たちの決別と新しい一歩を映し出す、優しくてセンチメンタルな短編集。
「八月の傾斜」
この中だとこれが一番好き。
ピアスの穴を開けることによって、大切なものを無くしてしまう。
そういう迷信じみたものを私も信じています。
自分がピアスの穴を開けたときもそういう決定的さがあった。
もう二度と手にすることのできない大久保君との時間。
それをようやく葬ることができた祐子と、彼女をきっと丸ごと抱きしめてあげられるだろう早津のこれからの幸せを願いたい。
「だらだらとこの坂道を下っていこう」
30代も半ばを超えて、自分の人生の山頂にはすでに登りつめ -
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「憂鬱の中から立ち上がったアジアンタムだけが、生き残っていく」
主人公山崎隆二の恋人葉子が癌で亡くなるときに残した言葉だ。この物語で著者が伝えたいことなのだと思う。
ストーリーは恋人を癌で失った喪失感に沈んだ主人公の回想でよくあるものだ。
主人公の一人称視点で淡々と綴られる文章は「ブルー」を表現しているようで、暗澹たる主人公の気分と二人で過ごす最期の地であるニースの青さの対比が切ない。
目の前で起きる自分ではどうにもできない事柄にうちひしがれるときが人生には幾度も訪れるだろうが、その渦中からも得られるものがあると信じさせてくれる物語だった。 -
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恋愛小説なの?なんだが詩的で哲学っぽい.そして読み終えてから気が付いた.コレ,三部作の完結編!!前作,前々作を読まないと話が繋がらないとか・・・ミスった.
以下あらすじ(裏表紙より)
恋人の七海と別れ、山崎隆二は途方に暮れていた。成人雑誌の編集部も辞め、校正者として無為に過ごす毎日。そんななか、七海の友人で行方不明になっていた風俗嬢の可奈を見たという噂を聞き、山崎は鴬谷へ向かう。彼女には会えなかったが、やがて「助けに来て」とすがりつく電話がかかってきた。山崎は囚われの身となっている可奈を救うため、海を渡った…。透明感あふれる文体で感情の揺れを繊細に綴った、至高の恋愛小説。 -
Posted by ブクログ
この中に収録されている「ソウルケージ」という作品に、自然と涙しかけた。
ギリギリまで傷んだ女性が、少しずつ自分の感覚に向き合っていく、その感じがこれ見よがしではなくて、すごく好きだった。
「八月の傾斜」も似た意味で、好きだった男の子を喪失してしまった傷みがぴったりと描かれている。
恐らく今の自分に心境が似ていたのだと思う。
こういうレビューは、本当は当てにならない。
喪失感は、失ったはずなのに、自身の奥深くにまで痛みを与えてしまう。
立ち上がるきっかけなんて、大それたものでなくて良いのだ。ただ、自分と同じくらいのあたたかさを持つ何かがあれば。
大崎善生の静けさに救われる理由に触れられた -
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シベリアを越え舞台はヨーロッパ。死ぬために旅をするエリカをついに捕まえる。エリカと会い同じ部屋を共にしたりするのに、なぜあくまで「後から追う」ような旅をするのか。一緒に行こう、とはなぜならないのかが不自然に感じてしまう。それに行ったことがあればわかるが、エンリケ航海王子のモニュメントから身を投げようとしているけれど、モニュメントの先は海ではなく川だしそれこそ都会の中の観光地。日本でいえば京都の鴨川に身を投げようとする感覚。旅の最終地点としては、最西端のロカ岬か深夜特急のサンビセンテ岬がよかったのではないか。
終わり方ももっと何かあったのではないかと思ってしまう…。 -
Posted by ブクログ
最後まで読むとそこまで悪くはなかったなぁ…みたいな感慨を抱きますけれどもやっぱし前半から中盤まではダルかったです…誰かさんが指摘していますけれども、なんとなく村上春樹のノルウェイの森を彷彿とさせる何かが今作には含まれているのであって、それもちょっと僕的には興ざめでしたかね…
ヽ(・ω・)/ズコー
リアリティがあるようでないような? または、ないようであるような? 物語でしたねぇ…個人的には主人公に対し、女性がああいった取り乱した行動を取るのがどうにも解せないのですけれども…現実にはああいった女性もいるのでせうか!?
ヽ(・ω・)/ズコー
まあ、何はともあれ物語は読みえましたよ、ええ -
Posted by ブクログ
ベックの「哀しみの恋人達」がず~~と流れている。
《本文より》
小説を書いてみませんか、と高井の言葉は小さくて性能のいいマグネットのように僕の心にピッタリと吸いついた。
何をしていても、何を考えていても気がつくとふくらはぎや肩甲骨あたりに、離れずに張り付いているそのマグネットの存在を感じる。
僕はこれは恋に似ているなと思った。そう、この感情の揺れは確かに恋に似ている。
それからこう考えた。
恋に似ている感情なんてあるのだろうか。恋に似た感情をも含めて、それを恋と呼ぶのではないか。
そうだとすれば、薔薇窓からの光の輪の中に立ち、それに手をかざしている久美子に、僕は恋をしているのだ。そう思うと